肉食動物と草食動物が共に暮らす大都会「ズートピア」を舞台にした3Dアニメです。
「ズートピア=Zootopia」は「Zoo(動物園)」と「Utopia(理想郷)」の合成語で
す。
多種多様な動物たちで構成される「ズートピア」は、多民族国家であるアメリカ合衆
国の比喩になっています。
ズートピアの多様性は、気候や暮らす動物のために12のエリアに分けられているとい
う設定にも現れています。
映画では、12のエリアのうち、サハラ・スクエア、ツンドラ・タウン、レインフォレ
スト地区、リトル・ローデンシア、サバンナ・セントラルの5つエリアが登場しまし
た。
本作品はDisney+であれば常時見ることができます。
主人公
主人公はウサギの警官のジュディ・ホップス、助演がキツネのニック・ワイルドです
が、当初は逆だったそうです。
ですが、この主人公の交代により、アメリカの社会問題である偏見や人種差別などに
対する批判精神を盛り込むことができ、多様性を表現することができました。
メッセージ性
アニメのかわいらしさとは裏腹に、ズートピアの放つメッセージ性はとても強いもの
があります。
この映画が秀逸なのは、途中で弱者が加害者側になる所からでしょう。
ジュディが、何にでもなれる夢の街と思っていたズートピアは、実際には差別や偏見
が存在する場所でした。
アメリカは人種のるつぼといわれてきましたが、実際は人種ごとのコミュニティが形
成され分断されていることがあります。
映画では、気候や暮らす動物のために12のエリアに分かれているとなっていますが、
これはコミュニティが12あるということになります。
こうした設定にもアメリカ社会の縮図が表現されています。
映画の前半で、ウサギの警官であるジュディが受ける偏見や差別がクローズアップさ
れます。
ジュディは優秀な警官ですが、か弱いウサギの女の子ということで、厳しい仕事には
向かないだろうと判断されてしまいます。
見た目で判断しないで能力を評価してほしいジュディですが、男社会の警察のなかで
は、可愛いウサギの女の子であるように圧力をかけられます。
しかし、ジュディはめげずに社会の圧力や偏見と戦う努力をし続けます。
物語が動き始めるのは、ジュディが警官人生をかけて謎の行方不明事件の捜査を始め
たところからです。
ジュディはこの捜査にキツネのニック・ワイルドを巻き込んでいきます。
ジュディとニックは典型的な凸凹コンビですが、何とか事件を解決します。
起承「転」結
事件がひと段落してハッピーエンドに向かうのかと思いきや、ここからがこの映画の
メッセージ性の真骨頂となります。
起承転結でいえば、「転」にあたる部分です。
「転」のオーソドックすなパターンは、新たなトラブルが巻き起こって、そのトラブ
ルに巻き込まれるというものですが、この映画では違います。
ジュディ自身の中にある差別的な先入観が表に出てきたことによって「転」となるの
です。
これによって、映画の様相がガラッと変わります。
ジュディはか弱いウサギの女の子という立場で、常に同情や応援を受ける側でした。
その応援される側のジュディが、偏見や差別を助長する側に回ってしまうのです。
そのことに真っ先に気が付くのがキツネのニックでした。
肉食動物であるキツネのニックは、一見すると強者側ですが、同時にキツネ=狡猾で
ずる賢く信用できないという類型的な偏見や差別を受ける弱者でもあったのです。
強者と弱者のいずれの立場もわかるニックだからこそ、偏見や差別の匂いをすぐさま
に感じ取ることができたのです。
この転回により、観客は自身の内面にも同じような先入観がないか、差別感情はない
か、完全にフラットな価値観を有しているといえるか、というメッセージを突きつけ
られます。
2023年にACジャパンから、マンガのセリフが流れ、実際の声が聞こえないCMが流れま
した。
「想像したのは男性の姿ですか?女性の姿ですか?無意識の偏見に気づくことから、
はじめませんか。」
無意識な性差や思い込みを想起させることを意図したCMです。
ハッとさせられた方も多かったのではないかと思います。
ズートピアの表現はCMよりもマイルドですが、同じことを問うています。
類型化
映画では類型化された思い込みを突いた人物設定がされています。
トガリネズミのミスター・ビッグ(Mr. Big)とヒツジのドーン・ベルウェザー副市
長です。
ミスター・ビッグは「ゴッドファーザー」のヴィト・コルレオーネをモチーフにして
いるそうです。
映画情報(題名・監督・俳優など)
ズートピア
2016
ZOOTOPIA
監督 / バイロン・ハワード,リッチ・ムーア
共同監督 / ジャレド・ブッシュ
製作 / クラーク・スペンサー
製作総指揮 / ジョン・ラセター
原案 / バイロン・ハワード,リッチ・ムーア,ジャレド・ブッシュ,ジム・リアドン,
ジョシー・トリニダード,フィル・ジョンストン,ジェニファー・リー
脚本 / ジャレド・ブッシュ,フィル・ジョンストン
編集 / ファビエンヌ・ロウリー,ジェレミー・ミルトン
音楽 / マイケル・ジアッキノ
音楽監修 / トム・マクドゥーガル
主題歌 / シャキーラ「Try Everything」
エグゼクティブ音楽プロデューサー / クリス・モンタン
声の出演
ジュディ・ホップス / ジニファー・グッドウィン,(日本語吹替)上戸彩
ニック・ワイルド / ジェイソン・ベイトマン,(日本語吹替)森川智之
チーフ・ボゴ / イドリス・エルバ,(日本語吹替)三宅健太
ベルウェザー副市長 / ジェニー・スレイト,(日本語吹替)竹内順子
クロウハウザ / ネイト・トレンス,(日本語吹替)高橋茂雄
ボニー・ホップス / ボニー・ハント
スチュー・ホップス / ドン・レイク
ヤックス / トミー・チョン
ライオンハート市長 / J・K・シモンズ,(日本語吹替)玄田哲章
オッタートン夫人 / オクタヴィア・スペンサー
デューク・ウィーゼルトン / アラン・テュディック
ガゼル / シャキーラ,(日本語吹替)Dream Ami
フラッシュ / レイモンド・S・パーシ
フィニック / タイニー・リスター
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