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(映画)山桜(2008年)の感想とあらすじは?

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感想/コメント

藤沢周平の同名短編を映画化です。

原作のイメージぴったりというわけではないですが、かなり忠実に映画化されています。

原作はかなり短い短編なので、一読してから見てもいいと思います。

この短編を読めばわかりますが、ラストシーンがとても重要です。というより、このラストシーンのために全てがある作品です。

ラストシーンを見て観客が涙するようでしたら、それは原作を完全に映画化したということになりますが、残念なことにほとんどの人がラストシーンでは涙していませんでした。

演出がよくなかったのかもしれません。最初から嗚咽するのではなく、ツゥーッと一筋の涙を流して、それからうつむいて涙するのが良かったように思います。

それに、ちょくちょく獄中の手塚弥一郎が映し出されるのもマイナスだったように思いました。映し出す回数が多すぎるのです。

エンディングの前に主題歌が流れます。イメージを損なうような曲ではないですが、全くといっていいほど涙を誘わないのは少々困りました。

総じて平凡な映画ですが、原作がいいので脚本に破綻をきたしませんでした。原作に救われています。

ポンポンとテンポ良く進む映画ではありません。風景のシーンは綺麗です。

静謐な印象を与える映画ですが、その中に誇りや忠義、怒りというのが綿々と流れています。

富める者はますます富み、貧しき者は追いつめられる。

こうした政治に対する百姓の怒りや、志ある武士達の怒りというのは、そのまま現在にも当てはまるのではないでしょうか。

権力者や利権に群がり私腹を肥やす者達。この映画に映し出される姿は、まさに官僚の汚職そのものです。

監督は「はつ恋」の篠原哲雄。東山紀之と田中麗奈の主演。

原作の紹介は「時代小説県歴史小説村」で。藤沢周平「山桜」(新潮文庫「時雨みち」収録)。

藤沢周平「時雨みち」の感想とあらすじは?
「帰還せず」と「滴る汗」は藤沢周平には珍しい公儀隠密もの。印象に残る作品は「山桜」と「亭主の仲間」。「山桜」が2008年に映画化された。

映画化された藤沢周平作品

公開年順

  1. たそがれ清兵衛(2002年)
  2. 隠し剣鬼の爪(2004年)
  3. 蝉しぐれ(2005年)
  4. 武士の一分(2006年)
  5. 山桜(2008年)(本作)
  6. 花のあと(2010年)
  7. 必死剣鳥刺し(2010年)
  8. 小川の辺(2011年)
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あらすじ/ストーリー/ネタバレ

江戸も後期。北の小国・海坂藩。

叔母の墓参の帰り、山道に花をいっぱいにつけた一本の山桜に出会った。

野江はその美しさに思わず手を伸ばすが、花には届かない。

背中に突然、「手折ってしんぜよう」という男の声が響いた。

折った枝を差し出してくれた武士は、手塚弥一郎と名乗った。手塚は野江が今の婚家・磯村に嫁ぐ前、縁談を申し込まれた相手だった。

弥一郎が「今は、お幸せでござろうな」と聞いてきた。

戸惑った野江は今の境遇を押し隠し、「…はい」と答えた。

「さようか。案じておったが、それは何より」と微笑み、弥一郎は去っていった。

どこかで自分のことをずっと気遣ってくれている人がいる。

そう思えるだけで、野江の胸の中にぬくもりが広がった。

実家の浦井家で野江は母に手塚弥一郎のことをそれとなく聞いてみた。母一人子一人の家ということもあるのだろうか。未だに嫁を迎えていないという。

野江の最初の夫は病で先立ち、二度目の嫁ぎ先・磯村家は、武士でありながら蓄財に執着する夫と舅、それと「出戻りの嫁」と蔑む姑。

野江が手塚弥一郎との縁談を断ったわけを弟の新之助が聞いてきた。野江は武芸自慢の男の嫁はつとまらないと思って断ったと打ち明けた。新之助は手塚はそんな人ではないという。それに、という。手塚は密かに野江を見初めていたのだとか。

藩は不作が続いており疲弊していた。

その中、重臣の諏訪平右衛門が新たに開墾して石高を上げようと施策を練る。だが、すでに潰れ百姓がでており、これ以上に百姓に負担をかけては、ますます田を放す百姓が出てくる。挙句の果て、諏訪平右衛門は年貢を上げるという。

この施策が開始されると、諏訪平右衛門は豪農達から多額の賄賂を受け取り、別邸を設ける始末。

富める者はますます富み、貧しき者は追いつめられることになっていく。

藩の中では百姓はおろか、武士の間にも怨嗟の声が高まりつつあった。

そうした中だった。手塚弥一郎が城中で諏訪平右衛門を斬った。弥一郎はわが身を犠牲にして刃を振るったのだ。

野江は帰宅した夫からそれを聞き、愕然とする。夫は弥一郎の所業を侮蔑し笑い飛ばす。野江は思わず手にした夫の羽織を打ち捨てたことで、磯村家から離縁を言い渡され、浦井の家に戻った。

弥一郎には即刻切腹の沙汰が下ると思われたが、擁護する声も強く、藩主が江戸から帰国する春まで裁断を待つこととなった。

長く厳しい冬の間、野江は獄中の弥一郎の身を案じ、ひたすら祈り続けた。

再び穏やかな春が訪れる。

藩主の帰国まであとひと月となった日、野江は一年ぶりにあの山桜の下にいき、枝を手にして手塚の家を訪ねた。

出迎えたのは、息子を待ち続ける弥一郎の母だった。

映画情報(題名・監督・俳優など)

山桜
(2008年)

監督 / 篠原哲雄
原作 / 藤沢周平「山桜」
脚本 / 飯田健三郎,長谷川康夫
撮影 / 喜久村徳章
視覚効果 / 松本肇
美術 / 金田克美
編集 / 奥原好幸
照明 / 長田達也
装飾 / 大坂和美
録音 / 武進
助監督 / 山田敏久
音楽 / 四家卯大
主題歌 / 一青窈「栞」

出演:
磯村野江/田中麗奈
手塚弥一郎/東山紀之
浦井七左衛門/篠田三郎
浦井瑞江/檀ふみ
浦井新之助/北条隆博
浦井勢津/南沢奈央
手塚志津/富司純子
磯村左次衛門/高橋長英
磯村富代/永島暎子
諏訪平右衛門/村井国夫

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