あらゆる映画賞を総なめにした作品です。
とはいえ、何故あらゆる映画賞を総なめに出来たのかはよく分かりません。悪い映画ではないと思いますが、総なめにするほど、すばらしい映画とは思えなかったからです。
奇をてらった筋立てではないし、期待通りのエンディングなど、昨今の映画としては珍しいオーソドックスな展開なのが、見ていて安心感を与える。それだけのように思えます。
ただ、映画で描かれているのは、厳しいインドの姿です。貧富の差と、急激な経済発展、宗教対立、スラム、ストリート・チルドレン、闇社会・・・。
こうした厳しい現実にもめげない主人公・ジャマール。厳しい現実に流されず、運命の己の手でつかも取ろうとひたむきに生き抜く姿が大いに評価されたのでしょう。
見る者の気持ちを清々しくしてくれる、そうした映画であるのは確かです。
社会性を前面に押し出した、いわゆる重い映画というのは数多くあります。この映画が、こうした重い映画と異なるのは、一筋の希望を観客に与えている点でしょう。
そこが、各国で映画賞を総なめした最大の理由なのかもしれません。
さて、監督は「トレインスポッティング」「28日後…」のダニー・ボイル。原作はヴィカス・スワラップの「ぼくと1ルピーの神様」。
あらすじ/ストーリー
第零問 彼はあと1問でミリオネア。なぜ勝ち進めた?
1 he cheated インチキした
2 he’s lucky ツイていた
3 he’s a genius 天才だった
4 it is written 運命だった
第一問 1973年のヒット映画「鎖」の主演俳優は?
警察に連行されたジャマール・マリク。スラム育ちの彼が何故ミリオネアで最後の1問までたどり着いたのか。すでに1,000万ルピーを獲得している。インチキをしたのではないか。警部は拷問して、聞き出そうとしていた。
ジャマールは警部に答えた。答えを知っていた、と・・・。
そして、1問目から、なぜ知っていたのかを警部に話し始めた。
インドで最も有名な俳優、アミターブ・バッチャンが答え。これは正解して当然だ。ジャマールも幼いころからのアミターブ・バッチャンのファンだった。
スラム育ちのジャマールは兄サリーム・マリクと共にトイレを貸す仕事をしていた。
ある日、アミターブ・バッチャンがスラムにやってきた。サリームにトイレに閉じ込められたジャマールは、トイレから脱出してアミターブ・バッチャンにサインを貰った。
だが、そのサインをサリームは売り払ってしまった。
第二問 インドの国章には3頭の獅子の姿が。その下に書かれた言葉は?
ジャマールには分からない問題だった。
スラム育ちのジャマールはインドで最も有名な言葉を知らなかった。ジャマールはオーディエンスを使って観客に答えを聞いた。
警部は、5歳の娘でも知っているのに、なぜジャマールが間違えたのかを聞いた。
ジャマールは自分の生きている世界と、警部の生きている世界が異なることを具体的な例で示した。
チョウパティのパニプリは幾ら?取り調べ人が10ルピー答えたが、ジャマールは年明けから15ルピーになったといった。木曜日に駅で巡査の自転車を盗んだのは誰?と聞くと、取り調べ人は、知っているのかと聞き返してきたので、誰だって知っている、5歳の子でも、と答えた。
第三問 ラーマ神の描写で彼が右手に持つ物は何でしょう?
ジャマールはイスラム教徒だった。
ある日、母が洗濯をしているところに、ヒンドゥ教徒が襲ってきた。宗教対立の中で、母を亡くした。
ジャマールと、兄サリームが逃げる中、目にしたのがラーマ神の姿だった。それが目に焼き付いていた。
逃げ切った二人が、雨宿りをしながら眠ろうとしていると、外では雨に濡れて立ちつくしている少女がいた。ラティカと名乗った。ラティカも両親を亡くしていた。
ジャマールとサリームとラティカの3人はストリートチルドレンとして生きていくことになった。
第四問 クリシュナ神の歌を書いた有名な詩人は?
ゴミ集積所の近くで物を漁って生活をしていた3人の前に、ママンという男が現れた。
3人は、ママンに連れて行かれ、同じような孤児が暮らしている場所に連れて行かれた。食べ物を与えられ、とても喜ぶ3人。
ママンは孤児たちに物乞いの仕事をさせていた。
ママンは子供たちに「クリシュナ神の歌」を教えた。そして、ママンは歌の上手な子の目を潰して盲目にした。盲目の歌手は2倍稼げるからだ。
ジャマールも盲目にされそうになったが、兄・サリームの機転で脱走逃げた。ラティカも一緒に逃げたが、ジャマールとサリームは何とか列車に飛び乗ったが、ラティカは取り残されてしまった。
ジャマールは戻ろうと主張したが、サリームは拒否した。そして、二人は列車で日銭稼ぎ、タージマハルでのツアーガイドの真似事などで生計を立てた。
第五問 アメリカの100ドル札にはどの政治家の顔が描かれているでしょう?
ボンベイからムンバイに名を変えた街。
ジャマールとサリームは逃げ出したはずの街へ戻ってきていた。
ジャマールはラティカを忘れなかった。彼女を探すために街に戻ってきたのだ。
そして、ジャマールは逃げ出した日、目をつぶされた盲目になった子どもの歌手に出会った。ジャマールはその子に100ドル札を渡した。
子供は、お札に誰の顔が描いてあるのかを聞くので、ジャマールは、おじいさんで、おでこはハゲており、両側は女みたいな長髪だと答えると、それはベンジャミン・フランクリンだと答えた。
そして、その子は100ドルを渡してくれたのがジャマールだと気付いた。ジャマールはラティカの行方を聞くと、知っているというので、その場所を聞いた。
ジャマールは早速その場所へサリームと向かった。
ようやく再会した3人だったが、その場にママンが現れた。サリームがママンをリボルバーで撃ち、3人は逃げた。
第六問 リボルバーを発明したのは?
ママンを撃ち、ママンのお金を奪った3人はホテルに逃げ込んだ。
サリームはママンの一味から身を守るため、ママンと敵対するグループのボス・ジャヴェドの手下になった。
その頃、ホテルでラティカは、私のために戻ったのかと聞いた。ジャマールは、もちろんと答え、ラティカを忘れたことはない、ほんの一瞬でも、と言った。ジャマールは必ず見つかると信じていたのだ。それが、ジャマールとラティカの運命だからだ。
そこにサリームが戻ってきて、ジャマールを部屋から追い出した。サリームはラティカをジャヴェドに渡した。
そして、ジャマールは一人で暮らすことになった。
第七問 ケンブリッジサーカスはUKのどの街にある?
ジャマールはコールセンターでアシスタントのお茶くみの仕事をはじめた。
コールセンターでは皆がミリオネアに夢中だ。コールセンターには看板などがぶら下がっている。
ある日、オペレーターにちょっとだけ交代しろと言われて、ジャマールは席についた。
この時、検索で「ラティカ」と入れてみると、2万6283件ヒットした。数が多すぎる。次に「サリーム・K・マリク」と入力すると15件ヒットした。上から順に電話をかけると、すぐに兄・サリームがでた。その番号をジャマールは覚えた。
サリームと久しぶりに再会したジャマール。ムンバイのかつてスラムだった場所はジャヴェドが牛耳っていた。そのジャヴェドの手下としてサリームは裏の世界でのし上がっていた。
ジャマールはサリームを殴り、一生ゆるさないと言った。サリームは分かっているとつぶやいた。
ジャマールはサリームから名刺を受け取りサリームの家に行った。
ある日、サリームを尾行した。そしてついにラティカに再会した。再会したのは、ジャヴェドの家だった。そこでラティカが「クイズミリオネア」を熱心に見ていることを知った。
ジャヴェドが帰宅した。テレビはミリオネアからクリケットにチャンネルを変られた。クリケットの放送中で、テンドゥルカール、記録は出ず、という実況の声を聴くジャマール。
ジャマールはジャヴェドから家を追い出され、ラティカもジャマールを逃がした。その別れ際、ジャマールは、駅で毎日5時に待っていると告げた。
5時。駅で待つジャマールの前にラティカが現れたが、サリームとジャヴェドの一味がおってきて、ラティカを連れ去ってしまった。
第八問 最多センチュリーを記録したクリケット選手は?
ジャヴェド邸で見たクリケットの放送で、テンドゥルカールが答えでないことは知っていたが、残りの3人のうち誰が正解だか分らなかった。
番組はCMに入り、トイレで頭を抱えていたジャマールに、司会者プレームが私を信じろと言って、トイレを出て行った。鏡にはBと書かれていた。
CMが終わり、ジャマールはライフライン50/50を使い選択肢を2つに絞った。残ったのはBとD。ジャマールが選んだのはDだった。
最後の1問を前に、放送時間が終わり、最終問題は明日の放送へ持越しとなった。テレビ局を出る、ジャマールを警察が連行していった。
警部はこれまでの話を聞いて、奇妙な話だがもっともらしい、君は嘘つきではない、とても正直者だ、取り調べは終わった、とジャマールの潔白を信じた。
最終問題 アレクサンドル・ドュマの著書「三銃士」銃士2人の名はアトスとポルトス。3人目の銃士の名前は?
屋敷を引き払ったジャヴェドと一緒にラティカとサリームはクイズミリオネアを見ていた。二人はジャマールが番組に出ていることを知った。
ラティカは別の部屋でジャマールが出演するミリオネアを見ていた。サリームはラティカの元へいき、あいつのもとに行け、二度とチャンスはない、と言って、車のカギをラティカに渡した。そして、携帯も。
別れ際、サリームは俺がしたことをどうか許してくれ、幸せになれ、と言ってラティカを送り出した。
幼少期。ジャマールは学校で三銃士のことをすこし学んで、アトスとポルトスの名前は知っていたが、三番目の名前は知らなかった。ジャマールは最後のライフラインであるテレフォンを使った。
番号を知っているのはサリームの番号。ラティカが電話に出た。だが、ラティカも最終問題の答えは分からなかった。
万事休すだったが、ジャマールは確信をもって答えた。
その頃、ラティカがいなくなったことを知ったジャヴェドはサリームを探した。そして、手下とともに現れたジャヴェドを拳銃で撃ち、サリームは手下に撃ち殺された。最後にサリームは、神は偉大なり、とつぶやいた。
番組が終わり、ジャマールは駅でラティカを待っていた。そして、ラティカが現れた…。
映画情報(題名・監督・俳優など)
スラムドッグ$ミリオネア
(2008年)
監督:ダニー・ボイル
共同監督:ラヴリーン・タンダン
原作:ヴィカス・スワラップ『ぼくと1ルピーの神様』(ランダムハウス講談社刊)
脚本:サイモン・ボーフォイ
音楽:A・R・ラフマーン
出演:
ジャマール・マリク/デヴ・パテル
サリーム・マリク/マドゥル・ミッタル
ラティカ/フリーダ・ピント
プレーム・クマール/アニル・カプール
警部/イルファン・カーン
ジャマール(幼少期)/アーユッシュ・マヘーシュ・ケーデカール
サリーム(幼少期)/アズルディン・モハメド・イスマイル
ラティカ(幼少期)/ルビーナ・アリ
映画賞など
- アカデミー賞 作品賞、監督賞、歌曲賞、作曲賞、編集賞、録音賞、撮影賞、脚色賞
- ゴールデングローブ賞 作品賞 (ドラマ部門)、監督賞、脚本賞、作曲賞
- 英国アカデミー賞 作品賞、監督賞、脚色賞、音楽賞、撮影賞、音響賞、編集賞
- トロント国際映画祭 観客賞
- オースティン映画祭 観客賞
- ボストン映画批評家協会賞 作品賞、編集賞
- 英国インディペンデント映画賞 英国作品賞、監督賞、新人俳優賞
- ダラス・フォートワース映画批評家協会賞 作品賞、監督賞
- デトロイト映画批評家協会賞 作品賞、監督賞
- フロリダ映画批評家協会賞 作品賞、監督賞、脚本賞
- ヒューストン映画批評家協会賞 監督賞、脚本賞
- ロサンゼルス映画批評家協会賞 監督賞、作曲賞
- ナショナル・ボード・オブ・レビュー 監督賞、ブレイクスルー俳優演技賞、脚本賞
- 全米映画批評家協会賞 撮影賞
- ニューヨーク映画批評家協会賞 撮影賞
- ニューヨーク映画批評家オンライン賞 作品賞、監督賞、脚本賞、撮影賞、作曲賞
- オクラホマ映画批評家協会賞 作品賞、監督賞、脚本賞
- フェニックス映画批評家協会賞 作品賞、監督賞、編集賞、脚本賞、作曲賞、新人俳優賞
- サンディエゴ映画批評家協会賞 作品賞、脚色賞、撮影賞、編集賞、作曲賞
- サテライト賞 作品賞(ドラマ部門)、監督賞、作曲賞
- サウスイースタン映画批評家協会賞 監督賞、脚色賞
- セントルイス映画批評家協会賞 監督賞、外国語映画賞
- ワシントンD.C.映画批評家協会賞 作品賞、監督賞、ブレイクスルー演技賞、脚本賞
- 放送映画批評家協会賞 作品賞、監督賞、脚本賞、若手俳優賞(21歳以下の部)、作曲賞
- シカゴ映画批評家協会賞 監督賞、脚色賞、新人俳優賞
- 全米製作者組合賞 映画部門賞
- 全米映画俳優組合賞 アンサンブル演技賞
- 全米監督協会賞 映画部門賞
- 全米脚本家組合賞 脚色賞
- 全米録音監督組合賞 録音賞
- 全米撮影監督組合賞 撮影賞
- アメリカ映画編集者協会賞 編集賞(ドラマ部門)
- 全米美術監督組合賞 美術賞(現代映画部門)
- 全米衣装デザイナー組合賞 衣装デザイン賞(現代映画部門)
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