映画は娯楽だと思います。ですから、単純に面白ければそれで良いのです。この映画はその娯楽性において文句ありません。
もともと企画の段階でジャック・スパロウを主役とした映画だったのでしょうか、ちょいと疑問があります。
製作がディズニーということもあり、「海賊」が主役というのはディズニーらしくないからです。
「海賊」とは船などにより他の船や沿岸を襲撃して、暴力的な方法で金品や食料を強奪する盗賊をさし、決して大手を振って存在すべき輩ではありません。
非合法な存在を主役にするというのは、「よい子」向けの映画を作っているディズニーらしくありません。
ですからこう思うのです。
もともとはウィル・ターナー・ジュニアを主役として、海賊に連れ去られたウィルが恋心を寄せるエリザベスを助けるために、間抜けな海賊ジャック・スパロウの助けを借り、エリザベスを救出するというのがストーリーだったのではないか、と。
最後はウィルとエリザベスが結ばれてハッピーエンド。チャンチャン♪
ですけど、ジャック・スパロウ(いや、この場合、ジョニー・デップといった方が正確でしょう)の、ふざけているのか本気なのかわからないキャラクター、それに「おわかり~」という口癖、半分内股での走りなど、抜群のキャラクター性の前には、考えを変えたのではないでしょうか。
つまり、ストーリーをジャック・スパロウ中心に据え変えてしまった方が面白いという風に判断したのではないでしょうか。
結果として、アメリカでディズニー映画としては初めてPG-13指定となっています。
PG-13とは入場制限はありませんが、13歳未満の子供の観賞については、保護者の厳重な注意が必要とした作品であり、暴力やヌードや卑語などを含んだりする作品ということです。
本作の場合、暴力的な表現でひっかかったのでしょうが、「主役」のジャック・スパロウが派手な盗賊行為をしていないという点で苦慮が見られます。
そもそも、このジャック・スパロウのおかしさは、映画において海賊らしい行為をしていないという点にあります。
しかも、あろうことか、(積極的に出はないにしろ)人助けをしています。
こうした海賊が人助けをするような設定にした場合、通常ありうるのはダーク・ヒーローとしての海賊像か、ピカレスク小説(日本の任侠ものや、股旅もの、もしくは中国の水滸伝を筆頭とする武侠ものなどをイメージして頂ければいいと思います。)よろしくのニヒルでクールな海賊像が相場でしょう。
ですが、ジャック・スパロウはそうではありません。ここにもジャック・スパロウのおかしさがあります。
そして、こうした「おかしさ」こそがジャック・スパロウの最大の魅力なのだと思います。
「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズはDisney+であれば常時見ることができます。
あらすじ/ストーリー/ネタバレ
(公式サイトから抜粋)
17世紀、海賊たちが大海原を荒らしまわっていた遥かなる時代。カリブ海の港町ポートロイヤル。
美しい総督の娘エリザベス(キーラ・ナイトレイ)は、かつて海上で助けた少年ウィルが身につけていた黄金のメダルを手に入れ、今でも大切に身につけていた。
ある日、町はキャプテン・バルボッサ(ジェフリー・ラッシュ)が率いる冷酷な海賊たちに襲われる。精悍な若者に成長した鍛冶屋のウィル(オーランド・ブルーム)は、剣を手に勇敢に敵に立ち向かう。
だが、奇怪なことに海賊たちは心臓を剣で貫かれても甦り、決して死ぬことはなかった。
バルボッサは町の財宝には目もくれず、その目当てはエリザベスの黄金のメダルにあった。
海賊たちはメダルごとエリザベスをさらい、ブラックパール号で逃走する。エリザベスに思いを寄せるウィルは、彼女を救うために一匹狼の海賊ジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)と手を組む。
ジャックはバルボッサの過去を知る数少ない人間のひとりであり、恐るべき真実をウィルに告げる。バルボッサとその手下たちは呪いをかけられ、月の光の下でその忌まわしい姿をさらすというのだ。
永遠に死ぬことを許されない、生きる屍の姿を。そして、その呪いを解く鍵は、エリザベスの黄金のメダルが握っていた。呪いを解くためには黄金のメダルが不可欠なのだ。
バルボッサ、ウィル、エリザベス、そしてジャック・スパロウ──運命のメダルに導かれて、いま4人の男女の人生が、魔の海で交差しようとしていた…!
それは、海賊たちが大海を荒らしまわった遥かなる時代─
一組の若き恋人たちと、孤独を愛する謎の男、そして、呪われし海賊たちを巡るミステリアスな冒険のドラマ―。
映画情報(題名・監督・俳優など)
パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち
(2003)
監督:ゴア・ヴァービンスキー
製作:ジェリー・ブラッカイマー
製作総指揮:ポール・ディーソン、チャド・オマン、マイク・ステンソン
脚本:テッド・エリオット、テリー・ロッシオ、ジェイ・ウォルパート
音楽:クラウス・バデルト、ハンス・ジマー
出演:
ジャック・スパロウ/ジョニー・デップ
ウィル・ターナー・ジュニア/オーランド・ブルーム
エリザベス・スワン/キーラ・ナイトレイ
ヘクター・バルボッサ/ジェフリー・ラッシュ
ウェザビー・スワン/ジョナサン・プライス
リー・アレンバーグ/ピンテル
ジャック・ダベンポート/ジェームズ・ノリントン
ケヴィン・R・マクナリー/ギブス航海士
マッケンジー・クルック/ラゲッティ
ゾーイ・サルダナ/アナマリア
2003年前後の興行収入ランキング
歴代の興行収入ランキング
小ネタ
バルボッサの子分としてジャック・スパロウ達と戦った、ラゲッティとピンテル。
二人はアステカの金貨によって呪われ、満たされる事のない欲望と死ねない身体になりました。
モデルはスター・ウォーズのR2-D2とC-3POだということですが、R2-D2とC-3POのモデルは黒澤明監督の「隠し砦の三悪人」であり、その太平と又七にキャラは似ています。
2003年公開の映画