平安時代に活躍した陰陽師・安倍晴明の若き日を描いた作品です。
安倍晴明は、陰陽師になる前の陰陽寮学生です。
原作は夢枕獏さんの「陰陽師」シリーズですが、原作というよりは原案に近いのではないかと思います。
夢枕獏さんの「陰陽師」シリーズはこれまでにも映画化やドラマ化されています。
感想/コメント
夢枕獏さんの「陰陽師」シリーズでは、源博雅が安倍晴明のバディとして登場します。本作では、その出会いが描かれます。
これまでの安倍晴明と源博雅の組み合わせですが、
- 2001年に公開された映画では安倍晴明役に野村萬斎さん、源博雅役に伊藤英明さん
- 2001年にNHKでドラマ化されたときの安倍晴明役は稲垣吾郎さん、源博雅役は杉本哲太さん
- 2020年にテレビ朝日系でドラマ化されたときの安倍晴明役は佐々木蔵之介さん、源博雅役は市原隼人さん
個人的には、安倍晴明役は野村萬斎さん、源博雅役は杉本哲太さんの組み合わせが実現すると嬉しいです。
若き日の安倍晴明
本作は安倍晴明が陰陽師になる前ですので、タイトルが「0」になっています。
印を結び呪文を唱えて式神を操ったり、結界を張って敵の攻撃を防いだり、というような派手なバトルのオンパレードを期待していると、イメージと違うかもしれません。
映画は、サスペンスや推理系の要素が強く、安倍晴明は不可思議な現象を理屈で解き明かしていきますので、科学者のような姿です。
終盤までその姿が描かれ、イメージしているような、超常現象を生み出す姿は描かれません。
ですが、終盤の最後の最後で、陰陽頭・藤原義輔が「お前は・・・本物だったのか・・・」というセリフをつぶやきます。
このセリフの持つ意味は大きく、陰陽師のほとんどは本物ではないけれども、まれに本物がいるということを示しており、また、本物がどういう者かも規定されていることが分かります。
この映画では「暗示」「催眠術」「思い込み」を利用して、人々の心が操られていく様子が描かれます。それが「呪」とされます。
「本物」の陰陽師が使う「呪」はこうしたものではないのを陰陽頭・藤原義輔は知っており、安倍晴明が本物の呪を使えることを知って驚愕するのです。
潜在意識でつながる世界
映画の中で大きく取り上げられるのが潜在意識の中での出来事です。
潜在意識の深いところで人々はつながっており、共有できるという設定になっています。
カール・グスタフ・ユングが提唱した分析心理学における集合的無意識を想起させる設定です。
集合的無意識は、人間の無意識の深層に存在しており、個人の経験を越え、集団や民族や人類の心に普遍的に存在するものとされます。
この考えは、科学とはどういうものかを説明するときに、疑似科学の代表として扱われることがあります。
集合的無意識は、現代的な科学的手法では説明・証明ができないので、科学ではないとされるからです。
精神医学の世界は、心理分析の世界から、脳神経内科学などの現代的な科学手法の世界へ移っており、ユングやフロイトの提唱した心理学は過去のものになっています。
とはいえ、ユングやフロイトの系統の心理学は現在でも人気があり、様々な思想に大きな影響を与えました。
レヴィ=ストロースの構造主義などもそうです。現在でも構造主義は人気があります。
構造主義の影響を受けている識者の様々な言説の中にも、間接的にユングやフロイトの影響が見え隠れすることがあります。
そして、神話学にもユングやフロイトは大きな影響を与えました。ジョーセフ・キャンベルの「千の顔をもつ英雄」です。
ジョーセフ・キャンベルの「千の顔をもつ英雄」は、映画界に大きな影響を与えました。「千の顔をもつ英雄」が有名になったのは、「スター・ウォーズ」で知られるジョージ・ルーカスが影響を受けたからです。
ジョーセフ・キャンベルの「千の顔をもつ英雄」は様々な映画に影響を与え、現在でも影響を与えています。
科学の世界では顧みられなくなってきているユングやフロイトの心理学ですが、現在でも人気のある思想などを通じて日常に息づいています。
ユングやフロイトの心理学の考えは、ファンタジーやオカルトと極めて相性が良いため、今後も様々な映画の中で使われていくのだろうと思います。
そう思いながら、本作を見ていたのですが、ユングやフロイトの心理学の考え方も賞味期限切れだなと思いました。設定やアイデアの古さが否めないと思ったからです。
思想や哲学は時代の要請で生まれますので、新しい思想や哲学を学ばねば、と感じることになった映画でした。
あらすじ
都を突如襲う凶悪な呪いと龍――その先には強大な陰謀が待ち受けていた。
呪いや祟りから都を守る陰陽師の学校であり省庁――《陰陽寮》。
https://wwws.warnerbros.co.jp/onmyoji0/introstory/
学生の安倍晴明は、呪術の天才ながらも陰陽師に興味を示さず、友人も持たず、周囲から距離を置かれる存在だった。
ある日晴明は、貴族の源博雅から皇族の徽子女王を襲う怪奇現象の解決を頼まれる。
衝突しながらも真相を追う晴明と博雅だったが、ある学生の変死をきっかけに、平安京をも巻き込む凶悪な陰謀と呪いが動き出す。
若き晴明は平安の闇を祓えるのか?そして呪いに隠された真実とは――?
映画情報(題名・監督・俳優など)
監督 / 佐藤嗣麻子
アクション監督 / 園村健介
製作 / 山田邦雄,木下直哉,飯窪成幸,長瀬俊二郎
企画 / 濱名一哉
エグゼクティブプロデューサー / 関口大輔
プロデューサー / 守屋圭一郎
ラインプロデューサー / 森太郎
原作 / 夢枕獏
脚本 / 佐藤嗣麻子
撮影 / 佐光朗
美術 / 林田裕至,愛甲悦子
カラーディレクター / 石山将弘
衣装デザイン / 伊藤佐智子
編集 / 穗垣順之助
キャスティング / 梅本竜矢
音楽 / 佐藤直紀
主題歌 / BUMP OF CHICKEN 『邂逅』
照明 / 加瀬弘行
録音 / 猪股正幸
かつら / 濱中尋吉
装飾 / 松下利秀
VFXプロデューサー / 井上浩正
VFXスーパーバイザー / 吉田裕行
サウンドデザイン / 柴崎憲治
整音 / 阿部茂
助監督 / サノキング
監督補 / 山本透
呪術監修 / 加門七海
ヘアメイクプランナー / 新井健生
出演
安倍晴明 / 山﨑賢人
源博雅 / 染谷将太
徽子女王 / 奈緒
平郡貞文 / 安藤政信
橘泰家 / 村上虹郎
帝 / 板垣李光人
賀茂忠行 / 國村隼
惟宗是邦 / 北村一輝
藤原義輔 / 小林薫
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