映画「市民ケーン」(1941年)を観た感想と作品のあらすじや情報など

感想/コメント

★★★★★★☆☆☆☆

様々な映画ランキングで上位に顔を出す映画である。映画史への影響度を考えると、観ておくべき1本である。基本書と同じく、基本映画という言い方があるなら、まさにそうした映画である。だが、個人的には面白くなかった。面白いとは思わなかったが、観るべき映画だとは思った。

時代を描いた映画であるので、同時代性を感じなかったことが面白く感じなかった理由である。この「市民ケーン」に大きく影響を受けている2010年の映画「ソーシャル・ネットワーク」はそこそこ面白いと思ったので、同じ時代に見ていたら面白く感じたのではないかと思う。

この映画は実在の新聞王と呼ばれたウィリアム・ランドルフ・ハースト(1863年~1951年)をモデルにしているが、未知の人物であることも興味をひかれなかった理由である。「ソーシャル・ネットワーク」が少しでも面白いと感じたのは、Facebookのマーク・ザッカーバーグという人物を少しでも知っていたからである。仮に現代の人物であったとしても、知らない人物であれば面白いとは感じなかったと思う。

「市民ケーン」と「ソーシャル・ネットワーク」の大きな違いは、モデルとなる人物の年齢だろう。「市民ケーン」ではモデルのハーストが80歳近くになった1941年に公開されているので、ほぼ人生すべてを描いている。一方で「ソーシャル・ネットワーク」ではマーク・ザッカーバーグは当時30歳にもなっていない。ハーストはすでに権力を手にした老人てあり、ザッカーバーグは今後どうなるかが未知数の若者であった。

映画が公開された当時の両者の対応も異なる。ハーストはその持てる権力を使って映画を潰しにかかった。これだけ映画ランキング上位に顔を出しながらも、アカデミー賞の主要部門で受賞ができていない。アカデミー賞は(汚点の一つであるが)権力に屈したのだ。一方でマーク・ザッカーバーグはそのようなことはしていない。

あらすじ/ストーリー

さて、映画はモデルとなったハーストの人生をなぞるように描かれている。

ハーストの父ジョージはゴールドラッシュ時代に銀鉱山を当て富豪となった。チャールズ・フォスター・ケーンの母親は宿泊費のかたにとった金鉱の権利書で大金持ちになった。ハーストはハーバード大学に入学するが学位を取らずに退学している。ケーンはいくつもの大学を渡り歩いている。

ハーストは1887年に父親が入手した「サンフランシスコ・エグザミナー」を譲り受ける。24歳頃のことだ。ケーンが若くして新聞社を買い取り経営を始めるのも同じである。ハーストは同紙を「ザ・モナーク・オブ・ザ・デイリーズ」に改名する。1895年にはニューヨーク・モーニング・ジャーナル紙を買収し、ニューヨーク・ワールド紙と発行競争をする。これも映画に描かれている通り。

ケーンがセンセーショナリズムによって新聞の売上を伸ばすのと同じく、ハーストも、センセーショナリズムで売り上げを伸ばしていく。その果てには1898年の米西戦争を引き起こす。

40歳になる1903年にニューヨークで22歳のミリセント・ヴェロニカ・ウィルソンと結婚する。5人の息子たちをもうけ、後に別居はするが、ハーストの死まで婚姻関係は続く。政治家としては、下院議員、ニューヨーク市長を歴任するが、ニューヨーク州知事選挙でチャールズ・エヴァンス・ヒューズに敗北する。この辺りは映画では異なる描き方となる。

50代になる1920年代に、カリフォルニア州サン・シメオンの大農場に動物園付きの城を建造する。通称、ハースト・キャッスルと呼ばれる。このころに、元女優のマリオン・デイヴィスと知り合い、妻とは別居して、マリオンと暮らし始める。ハーストはひと目でマリオンの容姿と性格を気に入り、直ちに彼女のパトロンになった。マリオンのために、映画制作会社のコスモポリタン社を設立し、映画女優としてデビューさせ、自分の新聞社の記事で大々的に宣伝した。だが、女優としての才能がなく、結局スターにはなれなかった。ハーストの新聞社の経営難により1937年に引退する。映画でケーンがスーザンのために巨大なオペラ劇場を建設し、自分の新聞で大々的に宣伝するのと同じだ。そして、才能がないという点も同じである。この数年後に映画が撮影され始める。

ハーストにしてみれば面白くないだろう。よりによって、映画の世界で人を見る目がないのを馬鹿にされたのだから。しかも、才能のないマリオン・デイヴィスと天才オーソン・ウェルズの圧倒的な差を見せつけられて…。

映画でも、ケーンがスーザンの才能がないのを目の当たりにし、絶望的な気分になりながらも、引くに引けない場面を描いている。この映画の秀逸なシーンで、ケーンは憤怒の表情を浮かべながら、拍手し、他の聴衆にも無言の圧力で拍手を強要する。憤怒は己に恥をかかせたスーザンに対するものと同時に、スーザンの才のなさを見ぬふりしてきた己に対してでもあった。

もしかしたら、ハーストもそうだったのかもしれない。だが、真実を言われると、人は気分を害するものである。だからこそ、ハーストはオーソン・ウェルズを潰したかったのだろう。

映画情報(題名・監督・俳優など)

市民ケーン
(1941年)

監督 / オーソン・ウェルズ
製作 / オーソン・ウェルズ
脚本 / ハーマン・J・マンキウィッツ,オーソン・ウェルズ
撮影 / グレッグ・トーランド
編集 / ロバート・ワイズ
音楽 / バーナード・ハーマン

監督 / デイミアン・チャゼル
製作 / フレッド・バーガー,ジョーダン・ホロウィッツ,ゲイリー・ギルバート,マーク・プラット
製作総指揮 / マイケル・ビューグ
脚本 / デイミアン・チャゼル
撮影 / リヌス・サンドグレン
プロダクションデザイン / デヴィッド・ワスコ
衣装デザイン / メアリー・ゾフレス
編集 / トム・クロス
振付 / マンディ・ムーア
作詞 / ベンジ・パセック,ジャスティン・ポール
作曲 / ジャスティン・ハーウィッツ
音楽 / ジャスティン・ハーウィッツ
音楽監修 / スティーヴン・ギジッキ
エグゼクティブ音楽プロデューサー / マリウス・デヴリーズ

受賞

アカデミー賞
脚本賞

ニューヨーク映画批評家協会賞
作品賞

ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞
作品賞
最優秀演技賞

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