映画「メメント」(2000年)を観た感想と作品のあらすじや情報など

感想/コメント

★★★★★★★★★★

傑作

ミステリー・サスペンス映画の傑作だと思う。初めて見たときは、まさに衝撃的だった。

公開当時はミニシアターブームで、渋谷のシネクイントで見た。渋谷のパルコ前からスペイン坂にかけて行列ができていたように思う。ミニシアター・ブームの中で記憶に残るのが「アメリ」で、シネクイント向かいのシネマライズ(Cinema Rise)で上映された。ちょうど商業化されすぎた映画に皆が飽きていた時期だったように思う。

この映画が突き付けるのは人の記憶の不確かさであり、同時に生きるということの意義である。映画タイトルのメメントはラテン語の「思い出せ」から由来し、記憶、記念品、形見という意味がある。また、原作のタイトルは「メメント・モリ」で、自分がいつか死ぬことを忘れるなというラテン語の警句であり、そこから、死を記憶せよ、死を想えという意味になる。記憶と死が密接に絡み合うタイトルで、映画もその通りの内容になっている。

逆回転しながら進む映画

時間軸が逆回転しながら進み、途中で正回転の時間軸とが交差していくという手法は斬新すぎた。真逆の時間軸が交錯するため、ストーリーを理解できない、ストーリーを追えない、ストーリーを組み立てられない、という人が多かったようだ。だが、これはまさに監督の意図するところだったのだろうと思う。

主人公レナード・シェルビーは短期記憶を保持できない病気にかかっている。時間軸を交錯させることによって、観る側にも疑似体験させようということだろう。時間軸を交錯させることによって、観客は頭の中で時間軸の整理を始めるが、整理している間にも話が進んでいき、やがて観ている側は映画の最初の方の出来事を忘れてしまう。

難しいという人も多いようだが、難しいのはストーリーそのものよりも、時間軸の整理である。時間軸の整理がつけば、ストーリー自体は複雑ではない。この映画の発端となる事件のあらましをテディが解き明かしてくれる。

だが、本当の真実は何だったのか、という疑問が湧いてくることになる。レナードの前向健忘性になる前の記憶が正しいのか、それとも、テディの言うことが正しいのかである。

記憶は真実か?

レナード・シェルビーは平凡な保険会社の調査員だった。有能な調査員だったが、自宅に侵入してきた謎の男によって、妻が強姦されたうえに殺されてしまった。その場でレナードは犯人を射殺したが、もう一人いて、その男に頭を殴られ、短期記憶を失う前向性健忘という記憶障害になる。レナードは自分を殴った犯人への復讐を誓い、犯人捜しをしているが、記憶障害のため、メモをとり、きわめて重要な情報は体に入れ墨を入れるようにしていた。分かっている犯人の名前は「ジョン・G」だった。だが、レナードの記憶している妻の死の真実が、実は真実でなかったとしたら?

レナードは、自分のように前向健忘性だった男を知っていた。サミーと言った。サミーの妻は、本当に彼が前向健忘性なのかを試した。妻は糖尿病だったので、定期的なインシュリン注射が必要で、それを夫のサミーにお願いしていた。だが、注射をしすぎると死に至る。サミーは前向健忘性だったので、妻からお願いされると、ついさっき注射をしたことも忘れて注射をした。そして、ついには過剰投与で妻が死んでしまう。

実は、このサミーというのはレナード本人で、レナードが妻をインシュリンの過剰投与で死に至らしめてしまったのだ。サミーという男は確かにいたが、詐欺師で、レナードがそのことを暴いたのだった。

レナードの中で記憶のすり替えが行われたのだろうか?そうだとすると新たな疑問が湧きあがる。これは記憶のすり替えなのか、それとも真実なのか…。

もし、妻をインスリンの過剰投与で亡くしたのだとすると、それは前向健忘性になってからだ。短期の記憶しか保持できないレナードに、この出来事の記憶のすり替えができるはずがない。

しかし、前向健忘性が心因性だということであれば、記憶のすり替えということもあり得るかもしれない、ということなのかもしれない。そうだとするなら、レナードは妻にインスリンを過剰投与したという記憶を持っていることになる。記憶がなければ、記憶のすり替えはできないのだから。

つまり、ここで生じる謎は、レナードの妻はなぜ死んだのか?である。レナードの記憶通り、強盗に入られて殺されたのか。それとも、レナードによるインシュリンの過剰投与によるものだったのか。レナードの前向健忘性になる前の記憶が正しいのか。それとも、テディの言うことが正しいのか。

テディとレナードの関係

テディとレナードの関係も謎である。テディが称する警察官という身分は、この場合大事ではない。謎には関係がないからだ。

謎なのは、レナードの妻の身に降りかかった災難から知っている様子なのに、レナードがテディに関する情報を残していない点である。重要なことは体に入れ墨で残すのに、それをしていない。サミーについては残しているというのに…。

では、テディが言っていることすべてが嘘なのかというと、そうでない可能性が高い。なぜなら、レナードが前向健忘性であることを知っており、自分が話したことはすぐに忘れることを知っているからだ。真実すらすぐに忘れてしまうのだから、嘘をついても仕方がない。

テディの言うことが正しければ、事件が起きてからの付き合いになる。2~3年程度経っていることになるのだが、レナードは体に刻み込んでいない。

テディは本当にレナードの妻の身に降りかかった事件からレナードと関わってきたのだろうか。テディが知っていることが、仮に他人から聞いた内容だけだとしても、かなり踏み込んだことまでも知っているので、最近はレナードに近いところにいたのは間違いなさそうである。とはいえ、当初から知っていたかとなると、疑問である。この疑問は永遠に解かれることはない。なぜなら、映画の冒頭の通り、テディは殺されてしまうからだ。

映画情報(題名・監督・俳優など)


メメント
(2000年)

監督 / クリストファー・ノーラン
製作 / ジェニファー・トッド,スザンヌ・トッド
製作総指揮 / クリス・J・ボール,アーロン・ライダー,ウィリアム・タイラー
原案 / ジョナサン・ノーラン
脚本 / クリストファー・ノーラン
撮影 / ウォーリー・フィスター
編集 / ドディ・ドーン
音楽 / デヴィッド・ジュリアン

出演
レナード / ガイ・ピアース
ナタリー / キャリー=アン・モス
テディ / ジョー・パントリアーノ
バート / マーク・ブーン・Jr
サミー / スティーヴン・トボロウスキー
レナードの妻 / ジョージャ・フォックス
サミーの妻 / ハリエット・サンソム・ハリス
トッド / カラム・キース・レニー
ジミー / ラリー・ホールデン

受賞

  1. 英エンパイア 史上最高の映画100本 2017年版
  2. 英BBC 21世紀最高の映画100本 2016年版
  3. Newsweek 映画ザ・ベスト100 2009年5・6/13