映画「エリザベス」(1998年)を観た感想と作品のあらすじや情報など

感想/コメント

★★★★★★★☆☆☆

エリザベス1世を描いた映画。エリザベス1世の女性としての側面に焦点を当てた映画。生涯結婚をしなかったことは知っていたが、恋人がいたことや、血なまぐさい謀略・暗殺の時代であったことは知らなかった。

こうしたあまり知られていない史実以外については、脚本の展開も、映像技術も、目新しい部分のない平凡な映画である。、

さて、エリザベス1世はテューダー朝第5代目で最後の君主。この次はステュアート朝になる。エリザベス1世の通称は、ザ・ヴァージン・クイーン(The Virgin Queen、処女王)、グロリアーナ(Gloriana、栄光ある女人)、グッド・クイーン・ベス(Good Queen Bess、善き女王ベス)などがある。
文化的にも花開いた時代だった。ウィリアム・シェイクスピアが活躍し、クリストファー・マーロウといった劇作家が活躍した時代だった。
とはいえ、エリザベス1世はパトロンにはならなかったようだが・・・。
他には、海の世界のフランシス・ドレークやジョン・ホーキンスなど有名な船長が活躍した時代だった。

25歳でイングランド女王となるが、映画でも描かれているように、メアリー1世死去の証拠として彼女の婚約指輪がエリザベスが当時住んでいたハットフィールドに届けられた。
そして、使者がエリザベスの即位を告げると、旧約聖書詩編118編第23節を引用してラテン語で語ったそうだ。
「A Domino factum est istud, et est mirabile in oculis nostris」
「これは神の御業です、私の眼には奇跡と写ります。」

こうした発言を見ると、エリザベスはプロテスタントなのか、カトリックなのかが分からなくなる。
実際に、エリザベス1世は自分の宗教的信条を明確にすることはなかったようで、プロテスタントの教育を受けているものの、カトリックのように十字架を身に付けることもあった。プロテスタント寄りではあったかもしれないが、急進的なピューリタンは毛嫌いをしていたらしい。

彼女の生きていた時代は、謀略にまみれている。彼女自身、姉にロンドン塔に幽閉される経験をしている。
宗教的信条を明らかにしないのは、生き延びるための、彼女なりの知恵だったのではないかと思う。

この時代が謀略にまみれていたのは、映画の中での重要な役回りを見ても分かる。映画で重要な役回りなのが、恋人のロバート・ダドリーと、重臣のウィリアム・セシル、ノーフォーク公爵。そして、フランシス・ウォルシンガム。
この中で、異質なのがフランシス・ウォルシンガム。

映画の後半は、謀略の世界が描かれている。エリザベス1世は20回以上も暗殺未遂事件があったらしい。それをことごとく防いだのがフランシス・ウォルシンガム。
諜報活動や秘密警察活動など、エリザベス1世の裏の顔を一手に引き受けた人物で、重用はされていたようだが、好かれていなかったらしい。というより、むしろ嫌われていたようだ。

エリザベス1世の母・アン・ブーリンも映画やTVドラマで取り上げられることが多い。
例えば、ブーリン家の姉妹(The Other Boleyn Girl, 2008年、イギリス)などである。アン・ブーリンをナタリー・ポートマン、メアリー・ブーリンをスカーレット・ヨハンソン、ヘンリー8世をエリック・バナが演じている。

小ネタ

女王エリザベスが夢中になったのが「ガイヤルド(Galliard)」と呼ばれる踊り。
映画では「ヴォルタ(ラヴォルタ、la volta)」と言っていたもので、ガイヤルドの中のステップのひとつ。
映画でも描かれているが、女性を高く持ち上げたりする激しい動きが特徴のようだ。

あらすじ/ストーリー

姉メアリー1世

16世紀のイングランド。

エリザベスは自身の城でロバート・ダドリーとヴォルタの練習をしていた。エリザベスとロバート・ダドリーは恋仲だった。

エリザベスはヘンリー8世の娘。母はアン・ブーリン。ヘンリー8世はカトリックを捨て、英国国教会を打ち立てた。エリザベスも父同様にプロテスタントとみなされていた。

今の治世は異母姉のメアリー1世。姉はカトリックだ。メアリー1世には子がいない。夫のスペイン王太子フェリペとは冷えた関係だった。
そのメアリー1世に懐妊の兆しが見えた。ノーフォーク公爵はその情報を入手し、駆けつけるも違った。兆しと見えたのは、実は病だった。

メアリー1世は反逆の罪でエリザベスを捕らえ、ロンドン塔に幽閉した。

ある日、エリザベスはメアリー1世に呼び出しを受けた。エリザベスはメアリー1世に忠誠を誓ったが、メアリー1世は信じなかった。
処刑への同意書も用意されていたが、なぜか、メアリー1世は同意しなかった。そうした中、メアリー1世が病で亡くなった。

イングランド女王即位

メアリー1世の死を受け、ノーフォーク公爵が指輪を抜き取り、エリザベスへ送り届けた。王位の継承のあかしだ。
エリザベスは25歳でイングランド女王に即位した。

エリザベスは即位前と同じく恋人のロバート・ダドリーと過ごしていたが、しばらくして、スコットランドへ出兵するかどうかの決断を迫られた。
エリザベスは決断できなかったが、押し切られる格好で派兵を決め、大敗してしまう。

この時期のイングランドは財政難も重なっていた。エリザベスは窮地に陥る。
重臣たちは、この難局を乗り切るためには、大国との政略結婚が必要と考えていた。ウィリアム・セシルは、アンジュー公やスペイン王との結婚で、国の難局をのりきることを進言する。だが、この政略結婚もエリザベスは乗り気になれなかった。

フランシス・ウォルシンガム

エリザベスは、大陸より帰還したフランシス・ウォルシンガムを重用した。
ウォルシンガムはエリザベスの影となり、彼女を支えた。

外患だけでなく内憂もある。
それはカトリックとプロテスタントを巡る問題だった。カトリックの勢力はローマからの強い支持を受けて動いている。
そうした中、エリザベスは英国国教会を中心におくことを宣言した。これにより、ローマとの関係がより一層緊迫することになる。

依然としてエリザベスを取り巻く環境は安定していなかった。
エリザベスはスコットランド女王のメアリ・オブ・ギーズの甥アンジュー公との結婚を考えるようになった。

アンジュー公

フランスからアンジュー公がやってきた。
その歓迎の中、エリザベスが何者かに狙われた。ウォルシンガムはすぐに犯人を調べ始めた。

夕食の最中、エリザベスは決意し、アンジュー公の部屋に向かった。
結婚を決意したのだったが、部屋に行くと、アンジュー公は女装していた。それを見たエリザベスは結婚できないと拒否した。

だが、ロバート・ダドリーとは結婚することはできない。ウィリアム・セシルはエリザベスに告げた。彼は既婚者だ。
この日以来、エリザベスはロバート・ダドリーと距離を開けるようになった。

ウォルシンガムがスコットランド女王のメアリ・オブ・ギーズと会談していた。
その後、すぐにメアリ・オブ・ギーズが変死を遂げた。

ローマ

エリザベスを狙いローマから刺客が放たれた。
刺客はイングランドに入り込み、反エリザベスを促す文書を届けようとしていた。ウォルシンガムはいち早く刺客を捕らえ、拷問にかけて、文書を奪い取った。

ローマが出した文書の相手はノーフォーク公爵をはじめとする、イングランドの有力貴族だったが、あろうことかロバート・ダドリーも入っていた。
エリザベスは文書をあえて、本人たちに届けさせ、著名させることで、反逆罪を確たるものにした。
そこにウォルシンガムが乗り込み、一味を反逆罪でとらえ処刑した。

愛する者にも裏切られたエリザベスは、髪を切り、白粉を塗り、国家と結婚した・・・。

映画情報(題名・監督・俳優など)

elizabeth
エリザベス
(1998年)

監督:シェカール・カプール
脚本:マイケル・ハースト
音楽:デヴィッド・ハーシュフェルダー

出演:
エリザベス1世/ケイト・ブランシェット
ロバート・ダドリー/ジョセフ・ファインズ
フランシス・ウォルシンガム/ジェフリー・ラッシュ
ウィリアム・セシル/リチャード・アッテンボロー
ノーフォーク公/クリストファー・エクルストン
アランデル伯/エドワード・ハードウィック
メアリ・オブ・ギーズ/ファニー・アルダン
アンジュー公/ヴァンサン・カッセル
ローマ教皇/ジョン・ギールグッド
ジョン・バラード/ダニエル・クレイグ
侍女カット・アシュレー/エミリー・モーティマー
イザベル・ノリス/ケリー・マクドナルド
メアリー1世/キャシー・バーク
フランス大使ド・フォア/エリック・カントナ
スペイン大使アルヴァロ/ジェームズ・フレイン
ガーディナー司教/テレンス・リグビー
サセックス伯/ジェイミー・フォアマン
チェンバレン/ピーター・ストックブリッジ
サー・トーマス・エリオット/ケニー・ドーティー
ワッド財務大臣/アンガス・ディートン
レティス・ハワード/アマンダ・ライアン

受賞

アカデミー賞
メイクアップ賞
ゴールデングローブ賞
主演女優賞(ドラマ部門)(ケイト・ブランシェット)

英国アカデミー賞
主演女優賞(ケイト・ブランシェット)
助演男優賞(ジェフリー・ラッシュ)
作曲賞(デヴィッド・ハーシュフェルダー)
撮影賞(レミ・アデファラシン)
メイクアップ&ヘアー賞

放送映画批評家協会賞
主演女優賞(ケイト・ブランシェット)
ブレイクスルー賞(ジョセフ・ファインズ) ※『恋におちたシェイクスピア』に対しても