映画「真珠の耳飾りの少女」(2003年)の観賞備忘録(感想とあらすじと情報を添えて)

歴史映画(西洋など)
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感想/コメント

★★★★★★★★☆☆
ベストセラーの同名原作を映画化。

17世紀に活躍した天才画家フェルメールの一枚の絵を巡る歴史ドラマである。

フェルメールはレンブラントと並び17世紀のオランダ美術を代表する画家である。生涯のほとんどを故郷デルフトで過ごした。

一枚の絵とは、題名ともなっている「真珠の耳飾りの少女」である。1665年頃に描かれた作品で、「青いターバンの少女」とも呼ばれる。オランダのハーグのマウリッツハイス美術館にある。

この作品は注文によるものなのか不明であり、この少女が誰なのかも不明である。現在、有力視されているのはフェルメールの娘の一人マリアとする説である。

フェルメールの絵の中で、同じような場所で描かれた作品群がある。その場所を映画ではアトリエと設定してリアルに再現している。

他にも、フェルメールの絵の作成風景が、さもありなん、という風に映し出されており、監督のこだわりが伝わってくる。そのこだわりが、さりげないところがよかったりする。

フェルメールの妻カタリーナの人物像も興味深い。

美や絵に対する審美眼をもっていると自負しつつも、一線を超える程の能力はないものの苦悩が描かれている。

いや、むしろ映画「アマデウス」で描かれたサリエリの立場に近いのかもしれない。それは、天才を理解してしまい、自分は天才を理解する才能しかない凡庸な人間であることを思い知った、という姿である。

この映画の場合、それはサリエリに相当するのがカタリーナであり、モーツアルトに相当するのがグリートである。

フェルメールの真価を完全に理解してしまったグリートと、真価を理解しきれないが、才能があることは理解できるというカタリーナの差異。そこにある溝は、山よりも高く谷よりも深い。そして、それがゆえに悲劇が生まれる。

あらすじ/ストーリー/ネタバレ

公式HPから。

1665年、オランダのデルフト。

タイル職人の父親が失明したため、家計を支える役目を負った17歳のグリートは、画家ヨハネス・フェルメールの家へ奉公に出されることになった。

フェルメール家は、気位の高い妻のカタリーナ、彼女の母で家計を取り仕切っているマーリア、そして6人の子供たちという大家族。

フェルメールが1枚の絵を完成させるのに3カ月以上の期間を要するため、家計はつねに逼迫した状態にあり、そのことをめぐる夫婦間の口論も絶えなかった。

広大な屋敷には、夫を非難するカタリーナのヒステリックな声と、走り回る子供たちの足音が、昼夜を問わず響き渡っている。

しかし、その喧噪を唯一免れている場所があった。フェルメールのアトリエだ。カタリーナから、アトリエの掃除を命じられたグリートは、そこに置かれた完成間近い絵の美しさに強くひきつけられる。

ある日、フェルメール家では、パトロンのファン・ライフェンを招いて盛大な晩餐会が催されることになった。

マーリアとカタリーナは、その場でファン・ライフェンの注文を取ろうと必死だったが、当のフェルメールは、「次に何を描くか決めていない」と言い、妻と義母を大きく失望させる。

しかし、それからほどなくしてフェルメールは新作を描き始める。きっかけを与えたのは、グリートだった。

彼女がアトリエの窓を掃除したことによって生まれた微妙な光。その色の変化が、フェルメールを創作に駆り立てたのだ。

窓を拭くグリートの姿をインスピレーションの元に、カメラ・オブスクラを使ってデッサンを始めるフェルメール。その現場に足を踏み入れたグリートは、「光がイメージを作り出す」というフェルメールの言葉に、深い感銘を受ける。

やがて、グリートが優れた色彩感覚の持ち主であることに気づいたフェルメールは、アトリエのロフトで絵の具を調合する仕事を手伝わせるようになる。

骨灰を磨りつぶす棒に添えられたフェルメールの手の感触に、思わず男性を意識してしまうグリート。

使用人の仕事についてから、彼女は肉屋の息子ピーターと交際を始めていたが、彼に対する気持とは異なる崇拝と畏れが入り交じった感情を、グリートはフェルメールに抱くようになる。

冬がめぐってきたころ、グリートはアトリエのロフトで寝起きをし、家事労働の合間のわずかな自由時間を、絵の具の調合に費やすようになっていた。

彼女の美的な感性はますます研ぎ澄まされていった。表面的には主人と使用人の距離を保っていたものの、もはやふたりの関係は、芸術上のパートナーと呼べるものだった。

そして、その親密さが、フェルメールの家族の間に波紋を引き起こす。

フェルメールの娘コルネーリアは、グリートに泥棒の濡れ衣を着せようとし、かえってフェルメールの怒りを買う。

そんなフェルメールの態度に嫉妬心を露わにし始めたカタリーナは、グリートに「疫病神」という侮蔑の言葉を投げつけた。

ただひとり、フェルメールの創作意欲に対するグリートの影響力を見抜いていたマーリアは、グリートの存在を容認する立場を取っていた。

この調子でフェルメールが絵を描き続けてくれなければ、一家は破産の運命をたどることになってしまうからだ。

そのマーリアが、絵の注文を取るためにファン・ライフェンを屋敷に招いたのは、それからまもなくのことだった。

グリートの存在が家族間に不穏な空気をもたらしていることに気づいたファン・ライフェンは、晩餐の席で、グリートをモデルに加えた集団肖像画を描いてはどうかと、フェルメールを挑発する。

それは、たちまち町の噂になった。というのも、以前、ファン・ライフェンは、フェルメール家に雇われたばかりの使用人をモデルにした絵を発注し、その後で使用人を手込めにしたことがあったからだ。

その話を使用人仲間から聞かされていたグリートは、不安のまっただ中に立たされる。そんな彼女に、フェルメールは言う。「注文された集団肖像画とは別に、君を描く」と。

デッサンは、マーリア以外の家族には秘密で行われた。

フェルメールに頭巾を外せと言われたグリートは、青いターバンを巻き、キャンバスの前でポーズを取る。が、何かが足りないと感じたフェルメールは、カタリーナの真珠の耳飾りをグリートに着けさせようとする。

「それはできません」と拒むグリート。だが、フェルメールから描きかけのデッサンを見せられた彼女は、自分自身の内面までが写し取られたその絵の出来映えに息を呑んだ。

グリートの中の芸術家の心が、そして、画家を愛する女としての心が、彼女にこう告げていた。

絵の中の少女には、真珠の耳飾りが必要だと。

映画情報(題名・監督・俳優など)

Shinjunomimikazari

真珠の耳飾りの少女
(2003年)

監督:ピーター・ウェーバー
原作:トレイシー・シュヴァリエ『真珠の耳飾りの少女』(白水社刊)
脚本:オリヴィア・ヘトリード
音楽:アレクサンドル・デスプラ

出演:
グリート / スカーレット・ヨハンソン
ヨハネス・フェルメール / コリン・ファース
ファン・ライフェン / トム・ウィルキンソン
ピーター / キリアン・マーフィ
カタリーナ / エシー・デイヴィス
マーリア / ジュディ・パーフィット
コーネリア / アラキーナ・マン

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