映画「300(スリーハンドレッド)」(2007年)の観賞備忘録(感想とあらすじと情報を添えて)

歴史映画(西洋など)
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感想/コメント

★★★★★★★★★☆
映像表現に大きな影響を与えそうな映画である。「マトリックス」が与えたのと同じくらいのインパクトがあるかもしれない。

レオニダスが敵を葬り去っていく剣戟シーン。スローモーションから一転クイックモーションに移行する手法などは流行りそうだ。

これって実は、日本の時代劇映画の殺陣でそのまま使える手法である。丁々発止の派手な殺陣をするより、「一撃必殺」を表現するにはこの映画の手法の方がふさわしいと思う。この映画には日本の時代劇映画へのヒント、というより解答が描かれている。

映像表現の凄さも欧米での圧倒的なヒットの大きな要因ではあると思うが、現在の政治に対する極めて単純で強烈な皮肉も一つの要因ではないかと思う。

政治には裏切り者がつきものかもしれない。そして、裏切り者は売国奴であるかもしれない。そして、国民の裏切り者であるかもしれない。

古からの慣習に束縛され、物欲に支配された醜い司祭たち。重用されなかったばかりに、敵に寝返るもの。買収され、挙げ句の果て、姦淫の罪をも人になすりつけるもの。現在の政治をそのまま表現している。

裏切り者は、万死を持ってその罪を償わなければならない。

通常、汚職をした政治家を、その死を持って国民への謝罪を求めることはしない。幕末に流行した天誅などを思う人もいるだろう。そうはいっても、思うだけで、自らが手を下すようなまねは決してしない。

だが、映画では実際に手を下す。まさに天誅だ。政治に対する鬱屈としたものを持っている人は、気が晴れる場面かもしれない。

対照的なのが、レオニダス。映画では、300名の全滅が、その後のスパルタ軍1万を含むギリシア軍の呼び水となる。

一国の危機を救うために、スパルタ王自らが死を決して戦いを挑む。300人での戦いは最初から死が決まっている。

だが、これが無駄死にでなかったのは、その後においてスパルタが国を挙げて軍を送り出すことで報われる。

一国を治める長には、いつでも死ねる覚悟がなければならない。

こうした単純な政治に対する要求というのが、ストレートに描かれているというのも、欧米での圧倒的なヒットの要因のような気がした。

映画全体は古代の空気を表現するためにセピアカラーで統一されている。

劇画調というか、小説の挿絵のような風合いになっている。映画でいえば、「グラディエーター」での最後の場面でみせた色合いと似ているが、これが全編通じて支配している。このおかげで、映画全体に古代の雰囲気を上手くかもし出すことに成功している。

こうした色合いを意味しているのか分からないが、全ての映像は「クラッシュ」と名づけられた画像処理が施されているそうだ。

また、この色合いでないと、首が吹っ飛ぶシーンやその切断面のシーンなどは生々しすぎて気持ち悪かったかもしれない。

セピア色、筋肉隆々の戦士、そして荒々しさ。こうしたものが、スペインの画家ゴヤの「巨人」に見る雰囲気と同じ印象を与えてくれた。

こうした感想を持つ人は少ないだろうが、欧米での圧倒的なヒットには、西洋絵画に見る伝統的な絵画に対する感覚というのもあるような気がした。

途中、苦笑いするしかないようなシーンが何ヶ所かあった。原作がグラフィック・ノベル作家フランク・ミラーの作品。グラフィック・ノベルを原作としているので、いわゆる史実を描いた歴史スペクタクル映画とは趣が異なる。

例えばペルシャ王クセルクセスの格好やその動く台座のような荒唐無稽なシーンに苦笑いしたのではない。

苦笑いしたのは、まるで日本の鎌倉時代の元寇を彷彿とさせるシーンや、中国の秦時代を描いた「HERO」を彷彿させるシーンなど…、他にも犀や象…、であった。

フランク・ミラーは「デアデビル」シリーズ、「バットマン:ダークナイト・リターンズ」、「シン・シティ」シリーズなどで知られる。特徴はハードボイルド、そして、実写化されれば見るに堪えがたいと言われるバイオレンスシーン描写だそうだ。

グラフィック・ノベルの中で盛り上げるために入れ込んだシーンをそのまま実写化したために、思わず苦笑いしたくなる場面も挿入されてしまったのかもしれない。

さて、この映画のモデルとなった「テルモピュライの戦い」。

ヘロドトスの「歴史」に記されている。ペルシア戦争のなかテルモピュライで、スパルタを中心とするギリシア軍とアケメネス朝ペルシアの遠征軍の間で行われた戦闘。

アルテミシオンの海戦(海戦)ではギリシア艦隊がペルシア遠征軍に善戦したが、テルモピュライではペルシアの圧倒的な戦力の前に敗退。スパルタ軍は全滅するまで戦い、ペルシア軍を3日間に渡って食い止めた。

ヘロドトスの「歴史」によると、ギリシアは五千数百(スパルタ重装歩兵300)、対するペルシアは二十一万だそうだ。

映画の宣伝文句は「300人VS1,000,000人、真っ向勝負!」だが、当時の人口を考えるとあり得る話ではなく、また映画の中でもレオニダスが「ペルシア軍は数百万とも言われているが、そこまでのことはないだろう…」と言っている。

この後にペルシア軍の人数が語られるシーンもなく、まだしもヘロドトスの数字の方が正しいように思える。

だが、これも、学者の間では様々な推定がなされているようだ。恐らくもっと少ないというのが実情ではないかと思ってしまう。

テルモピュライは、峻険な山と海に挟まれ、最も狭い所で15メートル程度の幅しかない。映画の通り、ペルシア軍は大軍を優位に展開することが出来なかった。

不死部隊というのもいたようで、クセルクセスは2日目に投入した。だが、この不死部隊は映画のように仮面を被った忍者のような集団ではなく、恐らく大麻などの薬物等で恐怖感をなくさせた部隊なのではないかと思う。

こう思ったのには、中近東の中世の伝説であるが、アサシンなどで知られる伝説の暗殺教団では、若者を暗殺者に仕立てるために「楽園」に連れてこさせて大麻などを与え楽しませたという話を聞いたからかもしれない。

結局ペルシア軍は、街道にもうけられた城壁を利用して防衛するギリシア軍を突破できなかった。

映画では獣道のようにいわれているが、クセルクセスは山中を抜けて海岸線を迂回する間道の存在を知る。不死部隊は住民を買収して、夜間にこの山道に入る。そして、翌朝、不死部隊はギリシア軍の背面に展開する。

3日目の未明、このことを知ったレオニダスは会議を開いたが、この場で徹底交戦か撤退かで意見は割れる。そしてスパルタ重装歩兵とテバイ、テスピアイ兵などわずかがテルモピュライに残り、全滅するまでペルシア軍と戦った。

あらすじ/ストーリー/ネタバレ

紀元前480年。

スパルタの男たちは、服従はしない、退却はしない、降伏はしない。それがスパルタの掟で、スパルタの男たちは、そのように生まれ、そのように育てられた。

そのスパルタ王レオニダス(ジェラルド・バトラー)のもとに千もの国々を征服したペルシア帝国からの遣いがやって来た。次なる標的に定めたのは、スパルタをはじめとするギリシアの地だった。

使者は王の伝言を伝える「水と土地を」と。国を滅ぼされたくなければ、ペルシアの大王クセルクセス(ロドリゴ・サントロ)に服従しろということだ。

「服従か、死か」と問われれば、スパルタの答えはひとつ。

彼らに服従はありえない。王レオニダスがペルシアの使者を葬り去った瞬間、スパルタはペルシア帝国の大軍を敵に回した。

神々に開戦の許しを乞うために、レオニダスは司祭のもとを訪れた。スパルタの法では、決議は託宣者の予言によって決められるのだ。

だが、欲にとらわれた司祭たちは、託宣者のお告げであるとして、スパルタ軍の出兵を禁じた。あろうことか司祭たちはペルシャから賄賂を受け取っていた。

託宣者の信託に従えば戦うことは許されない。しかし、戦わなければ滅ぼされる。苦悩する王に、王妃ゴルゴ(レナ・へディー)は「自分の心に従いなさい」と言う。

戦いを決意した王のもとに集まったのは300人。

しかし、それはただの300人ではない。スパルタの精鋭300人だ。

レオニダスには戦略があった。海岸線の狭い山道に敵を誘い込めば、大軍の利点を封じられる。そこを、スパルタの盾で食いとめるのだ。

作戦の地テルモピュライに兵を進めた彼らの前に現われたのは、海岸線を延々と埋め尽くすペルシアの大軍。

スパルタの男たちはひるまなかった。スパルタの男たちに退却の二文字はない。鍛え抜かれた剣のもと縦横無尽に突き進む。緒戦はひとりの死者もなし。一日目はペルシア軍を完膚なきまでに覆し、スパルタ軍の勝利で終えた。

映画情報(題名・監督・俳優など)

300

300(スリーハンドレッド)
(2007年)

監督:ザック・スナイダー
製作:ジャンニ・ヌナリ、マーク・キャントン、バーニー・ゴールドマン、ジェフリー・シルヴァー
製作総指揮:フランク・ミラー、デボラ・スナイダー、クレイグ・J・フローレス、トーマス・タル、ウィリアム・フェイ、スコット・メドニック、ベンジャミン・ウェイスブレン
原作:フランク・ミラー、リン・ヴァーリー
脚本:ザック・スナイダー、マイケル・B・ゴードン、カート・ジョンスタッド
撮影:ラリー・フォン
プロダクションデザイン:ジェームズ・ビゼル
編集:ウィリアム・ホイ
音楽:タイラー・ベイツ

出演:
レオニダス/ジェラルド・バトラー
王妃ゴルゴ/レナ・ヘディ
ディリオス/デヴィッド・ウェンハム
セロン/ドミニク・ウェスト
ステリオス/ミヒャエル・ファスベンダー
隊長/ヴィンセント・リーガン
アスティノス/トム・ウィズダム
ダクソス/アンドリュー・プレヴィン
エフィアルテス/アンドリュー・ティアナン
クセルクセス/ロドリゴ・サントロ

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