映画「フラガール」を観た感想と作品のあらすじや情報など

感想/コメント

★★★★★★★★★☆
常磐ハワイアンセンター(現:スパリゾートハワイアンズ)の誕生を支えた人々の実話を映画化。

主演は松雪泰子。東京からダンスを教えに来る平山まどか役。SKD(松竹歌劇団)で活躍したこともあり、ハワイでフラダンスを習ったという触れ込みだ。

高飛車な平山まどかが、フラに真摯に向き合う少女たちと接するうちに、厳しくも愛情深い教師へと変貌していく。
主演は松雪泰子だが、それ以上の存在感があるのがフラのリーダーに成長していく谷川紀美子役の蒼井優。何も知らないで映画を見れば、蒼井優が主演だと思うだろう。

この谷川紀美子に平山まどかの若い頃の姿を投影させているような気がする。

ずぶの素人に教えることに幻滅していた平山まどかが、誰もいない練習室で踊るタヒチアンダンス。この凄みのある圧倒的な迫力に谷川紀美子らが飲み込まれてしまうシーンが前半にある。

これと同じダンスを谷川紀美子が常磐ハワイアンセンターのオープニングで踊るのだが、その練習シーンが前半で平山まどかが踊っていたのと同じような迫力を持っている。

まるで、若い頃の平山まどかの姿を谷川紀美子が踏襲しているかのようだ。

映画の中盤にかけて、谷川紀美子の親友で谷川紀美子をフラに誘った木村早苗が諸般の事情により願いかなわずフラのチームをやめざるを得なくなる。

その後、谷川紀美子宛にハイビスカスの飾りを送って寄こすのだが、これを髪に挿して谷川紀美子が踊るシーンは、まるで親友の木村早苗と一緒に踊っているかのようだ。このシーンで、願いのかなわなかった木村早苗の願いが遂げられた気がする。

あえて、常磐ハワイアンセンターのオープニングに木村早苗を登場させなくてもいいわけだ。その代りに彼女の分身が谷川紀美子と一緒に踊っているのだから。

フラ(hula)とは、ハワイの伝統的な踊りと音楽を意味する。「フラダンス」と呼ばれてきたが、正しくは「フラ」である。

そのフラには、仕草一つ一つに意味があるという。

熊野小百合の父親が落盤事故で亡くなった時に、親の死に目にも会えないような親不孝なことをしてと、町の人に責められる。そして東京へ戻ってくれといわれる平山まどか。

その平山まどかが東京へ戻ろうとしている時に、駅のホームで谷川紀美子らがフラで平山まどかに思いを伝えようと一生懸命に踊るシーンには「フラとは、本当に自分の思いを伝えるためにあるのだなぁ」と思い、涙が出てきた。

さて、平山まどかのモデルとなったのは、カレイナニ早川。常磐ハワイアンセンターのオープンを控えて、常磐音楽舞踊学院で素人の娘たちにダンスを教え込んだ。

幼少の頃からバレエを習い、昭和31年(1956年)にハワイに渡ってポリネシア民族舞踊を学んだ。昭和37年にもハワイに渡り、ポリネシア民族舞踊を学んでいる。そして昭和40年に常磐音楽舞踊学院講師となり、常磐ハワイアンセンターのショーの構成・演出・振付を、32年の歳月にわたってこなした。

また、谷川紀美子のモデルとなったのは常磐音楽舞踊学院1期生小野(旧姓豊田)恵美子である。

最後に。この映画はTV局や出版社が主体となって製作された映画ではない。が、知っての通り、各賞を総なめにした。

TV局や出版社主体の映画だけになると、かつて日本映画が没落したように、近いうちにだめになっていくと思っていた。

だが、本作のような映画も登場することによって期待が持てるようになった。その意味でもこの映画の存在意義は大きいと思う。

あらすじ/ストーリー/ネタバレ

昭和40年、福島県いわき市の炭鉱町。

「求む、ハワイアンダンサー」の貼り紙を見せながらここから抜け出す最初で最後のチャンスだと、 早苗(徳永えり)は紀美子(蒼井優)を誘う。

男たちは、数世代前から炭坑夫として、女たちも選炭婦として、働いてきた。

だが時代は石炭から石油へと変わり、閉山が相次ぎ、町は先細りの一途をたどっていた。そこで、起死回生のプロジェクトとして炭鉱会社が構想したのが、豊富な温泉を利用したレジャー施設「常磐ハワイアンセンター」である。

そして、目玉となるフラダンスショーのダンサー募集が地元の少女たちに対して行われた。

紀美子の母・千代(富司純子)も兄・洋二朗(豊川悦司)も炭鉱で働いている。

父は落盤事故で亡くなった。母は「百年も続いたウヂの炭鉱は天皇陛下までご視察にいらしたヤマだぞ」と自慢し、炭鉱を閉じて「ハワイ」を作る話に大反対。

それでも紀美子と早苗はフラダンサーの説明会に出かけるが、ほかの娘たちは、初めて見るセクシーな衣装で踊るフラダンスの映像に、「ケツ振れねえ」「ヘソ丸見えでねえか」と、逃げ出してしまう。

残ったのは、紀美子と早苗、それに会社の庶務係で子持ちの初子(池津祥子)、そして父親に連れてこられた一際大柄な女の子、小百合(山崎静代~南海キャンディーズ・しずちゃん)だけだった。

そんな中、娘たちにフラダンスを仕込むために、ハワイアンセンターの吉本部長(岸部一徳)は東京から平山まどか先生(松雪泰子)を招く。本場ハワイでフラダンスを習い、SKD(松竹歌劇団)で踊っていたダンサーだ。

しかし、とある事情で渋々やって来たまどかは、教える相手がズブの素人と分かり、完全にやる気を失ってしまう…。

最初は田舎町を軽蔑し、ど素人の娘たちに踊りを教える意欲もないまどか先生だったが、紀美子たちの熱心さに次第に真剣になっていく。

実はまどか自身が母親の借金を背負い、半ば自暴自棄になっていたが、ひたむきな娘たちと接するうちに夢を持つ大切さを思い出していた。そんな彼女の教えは、どんなに辛い時でも「スマイル」、笑顔をなくさないこと。

しかし、世間の風当たりは依然強く、さらに予期せぬ出来事が起こり・・・。

映画情報(題名・監督・俳優など)

Fragirl

フラガール
(2006年)

監督:李相日
製作:李鳳宇、河合洋、細野義朗
プロデュース:石原仁美
企画:石原仁美
脚本:李相日、羽原大介
音楽:ジェイク・シマブクロ

出演:
平山まどか/松雪泰子
谷川紀美子/蒼井優
谷川洋二朗/豊川悦司
谷川千代/富司純子
吉本紀夫/岸部一徳
佐々木初子/池津祥子
木村早苗/徳永えり
木村清二/高橋克実
熊野小百合/山崎静代
熊野五郎/志賀勝
石田/寺島進
猪狩光夫/三宅弘城