ブラッド・ピットが人間の女性との恋に落ちる死神に扮する、ロマンティック映画です。
筋立ては至って簡単です。アラを探せばいくらでも出てきますが、ファンタジーの要素が強いので、そんなことを気にしてはいけません。
また、思っている以上に時間が長いです。というのは、一つ一つのシーンが長いからです。
そして、その一つ一つのシーンは多くが「静」です。いや、「動」というものがこの映画にはありません。
死神が登場するので、迎える結末は当然「死」です。
途中においても「死」に遭遇します。ですが、この映画で描かれる「死」は基本的に静謐そのものです。穏やかで、温かなものなのです。
そうした雰囲気をかもし出すのに、必要なのが「静」の間合いなのでしょう。この間合いは、人によっては冗長と感じるかもしれません。
ですが、静謐で穏やかな温かい「死」を描くに当たって、「動」の要素は必要ありません。ですから、これくらいでいいのです。
神が人間の女性に恋をするというのは、古来ギリシャ神話の時代からある話であり、珍しくありません。古代の神々はより人間的だったのですから。
これがキリスト教などの一神教により、神は人間的な感情を一切排除した完全なものとして扱われるようになり、神が人間の女性に恋をするということはなくなりました。神は人の世界から遠く離れてしまったのです。
この映画が公開された当時、奇しくも神が人間の女性に恋をするという映画が他にも上映されました。人間的な悩みを抱える古代の神に憧憬を抱いていた時期なのでしょうか。
さて、この映画で、ブラッド・ピットは「静」の演技が出来る俳優であることを証明しました。また、役柄を上手く演じ分ける力もあることを証明しました。
最初に登場する青年と、ジョー・ブラックとでは雰囲気がまるっきり異なります。なかなかの役者ぶりを発揮しています。
「静」のシーンが多い映画で、場をもたせる音楽も重要です。トーマス・ニューマンはその才能を遺憾なく発揮しています。
物語の中で流れる、バイオリンのもの悲しいテーマ曲は映画の雰囲気に良くあっています。だから、というわけではないですが、トーマス・ニューマンは好きです。
選曲も彼がしているのでしょうか?最後のパーティー場面で、バンドが演奏する曲として流れる「ワット・ア・ワンダフル・ワールド」は泣けます。
ルイ・アームストロングの曲で、これまでの人生に悔いのない、最期の時にそうした思い出旅立てるのが最高なのかもしれません。
あらすじ/ストーリー/ネタバレ
65歳の誕生日を間近に控えた大富豪のウィリアム・パリッシュは、幻聴に悩まされていた。「イエス・・・」「イエス・・・」。どこからともなく聞こえる。
ある日の昼。スーザンは引っ越してきたばかりの青年とコーヒーショップで出会った。何気ない会話を交わしていた二人だが、このわずかな時間で互いに引かれあった…。
家族で食事をしていると、「外で待っている」という幻聴が聞こえた。ビルは、その幻聴の声の主を自宅の図書室に招き入れたところ、その声の主は、事故死した青年の姿を借りた死神だということがわかり、自分の死期が近いことを知らされる。
死神ジョー・ブラックは、ビルが死を迎えるまでの間、ビルに人間世界を案内するように指図する。
ジョー・ブラックはそれを自分の短い間を休暇とし、パリッシュの案内で人間界の見学を始めた。
スーザンは彼の姿を一目見るなり驚いた。ジョーは街で出会った青年だったからだ。
だが、その彼は会った時の印象とちがう。その後二人は徐々に愛を深めていく。人間の恋愛を知ったジョーは彼女をあの世に連れて行きたいと葛藤する。
映画情報(題名・監督・俳優など)
ジョー・ブラックをよろしく
(1998年)
監督:マーティン・ブレスト
製作:マーティン・ブレスト
製作総指揮:ロナルド・L・シュワリー
脚本:ロン・オズボーン、ジェフ・レノ、ケヴィン・ウェイド、ボー・ゴールドマン
撮影:エマニュエル・ルベツキ
音楽:トーマス・ニューマン
出演:
ジョー・ブラック/ブラッド・ピット
ウィリアム・パリッシュ/アンソニー・ホプキンス
スーザン・パリッシュ/クレア・フォーラニ
アリソン/マーシャ・ゲイ・ハーデン
クインズ/ジェフリー・タンバー
ドリュー/ジェイク・ウェバー
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