(映画)キングダム・オブ・ヘブン(2005年)の考察と感想とあらすじは?

この記事は約5分で読めます。
記事内に広告が含まれています

面白くなかったかというと、そういうわけではないのですが、ストーリーの構成に苦しさを感じました。

おそらく、リドリー・スコットが言いたかったのは、最後のテロップに書かれている、「…1000年たっても状況は変わっていない…」といった内容だったのでしょう。

そのために、2時間以上の時間を費やしたような気がします。

ですから、ストーリー云々というよりも、別のメッセージが映画に込められていたのではないかと思うのです。

リドリー・スコットはインタビューで、この十字軍の時代において、つかの間の奇跡的な平和があった時期を選んで映画化したと言っています。

たしかに、現在のエルサレムの状況はおせじにも平和の状態にあるとは思いません。そのことに対する思いをリドリー・スコットは映画化したかったのでしょう。

リドリー・スコットが映画化する時代を十字軍に選んだのも理解できる気がします。

現在を舞台に選んでしまうとあまりに血なまぐさくなってしまうからです。

それに対して過去を舞台にすると、いくらかは客観的に物事が見られるようになりますので、そうしたことも考慮しているのでしょう。

リドリー・スコットの意図がそこにないというのでしたら、見るのはちと厳しいかなぁ、という印象です。全体的に中途半端な印象になってしまうからです。

感想/コメント

印象的なシーンは、バリアンが「エルサレムには価値があるのか」と言った時の、サラディンが言うセリフです。

「無。(だが、)全てである。」

このセリフには色々な意味が汲み取れる感じがします。

それと、今回最もかっこよかったのが、バリアン(オーランド・ブルーム)でもサラディン(ハッサン・マスード)でもなく、騎士ティベリアス(ジェレミー・アイアンズ)でした。

彼が言うセリフも印象的です。

「人生の全てをエルサレムに捧げた。神の為に戦ってきたつもりだったが、結局は富と土地の為だった」

十字軍の一面を的確に述べている一言です。

騎士が本来こんなことを口にしてはいけないのでしょうが、こうした言葉が口から出てしまうほどにティベリアスの十字軍への失望が大きかったのでしょう。

彼はバリアンと行動を分かつことになりますが、だからこそ、彼の前途に希望があらんことをと願いました。

宗教というものが苦手な(というより理解できない)日本人という国民性を考えると、エルサレムというユダヤ、キリスト、イスラムの聖地の攻防を描いた本作は、感覚的な部分で難しく感じるかもしれません。

映画とはまったく関係ありませんが、エルサレム王ボードワン4世の勇敢な行動やその人物像に戦国武将の大谷刑部少輔吉継に対する印象と同じ様なものを感じました。

そういう意味においてエルサレム王ボードワン4世も名君だと感じます。

オーランド・ブルーム初主演だとか、リドリー・スコット監督の映画だとか、歴史スペクタクル映画だとかという単純な図式でしか見られないと、面白くない映画だと思います。

少し古いですが、サミュエル・ハンチントンの「文明の衝突」やエドワード・サイードの「オリエンタリズム」はこの映画を見る際の助けになると思います。

十字軍の時代が舞台になっている映画。

この時代のイギリスを舞台にして、十字軍から帰還して義賊となったのがロビン・フッドです。

13世紀末スコットランドの独立と開放を目指して戦ったウィリアム・ウォレスの生涯を描いたのがブレイブハート(1995年)…メル・ギブソン主演

この年に公開された映画やドラマを下に方に載せておりますので、ご参考になさってください。

あらすじ/ストーリー/ネタバレ

十二世紀。十字軍の熱に取り憑かれているヨーロッパはフランス。

鍛冶屋のバリアン(オーランド・ブルーム)は、妻が自殺して失意のどん底にあった。カトリックでは自殺した人間は地獄へ行くことになる。

そのバリアンのもとに、実の父である騎士ゴッドフリー(リーアム・ニーソン)が訪れる。エルサレムへの同行を求められるが、バリアンにはその気はない。

だが、やむを得ない事情ができ、エルサレムへ向かう。自分の犯した罪と、妻の贖罪を胸に秘めながら…

バリアンは父より騎士としての訓戒を受け、正式に騎士となり、苦難の末エルサレムへたどり着く。

エルサレムでは、待っていた父の部下とともにエルサレム王ボードワン4世(エドワード・ノートン)への忠信を誓う。

エルサレムはボードワン4世とサラディンによる協定でつかの間の平和の状態にあったが、これを打ち破る出来事が起き始めていた。

サラディンの軍勢は20万。まともに戦っては勝てない。バリアンは父に王を守り、そして民を守ることを誓っていた。

一方、バリアンはボードワン4世の妹シビラ(エヴァ・グリーン)と恋に落ちたが…

映画情報(題名・監督・俳優など)

Kingdom of Heaven
キングダム・オブ・ヘブン
(2005年)

監督:リドリー・スコット
製作総指揮:リサ・エルジー、ブランコ・ラスティグ 、テリー・ニーダム
脚本:ウィリアム・モナハン
音楽:ハリー・グレッグソン=ウィリアムズ

配役/出演:
バリアン/オーランド・ブルーム
シビラ/エヴァ・グリーン
ゴッドフリー/リーアム・ニーソン
ティベリアス/ジェレミー・アイアンズ
ボードワン4世/エドワード・ノートン

2005年前後の興行収入ランキング

歴代の興行収入ランキング

  1. 日本歴代興行収入ランキング(Top100)
  2. 世界歴代興行収入ランキング(Top200)

2005年公開の映画

(映画)Mr.&Mrs. スミス(2005年)の考察と感想とあらすじは?

ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーが初共演。壮大な夫婦喧嘩を映画化したという代物。娯楽性はそれなりに確保されている

(映画)容疑者 室井慎次(2005年)の考察と感想とあらすじは?

「踊る大捜査線」の番外編としてのOdoru Legendの第2弾。警視正・室井慎次が主人公の映画です。踊る大捜査線同様のキャラクターを配置することで、踊る大捜査線ワールドが再現されているのを感じる作品です。

(映画)スター・ウォーズ3 シスの復讐(2005年)の考察と感想とあらすじは?

今作品は後に続く、というよりも、遥か昔に(まさに、A long time ago in a galaxy far, far away....だが)公開されているEpisode4~6につながる作品となった。

(映画)コンスタンティン(2005年)の考察と感想とあらすじは?

エンディングロールが終わってから短いエピローグがあるからなのです。うーん。私が見た回も結構帰ってしまっている人が多かったのですが、帰ってしまった人はもったいないことをしたものです。

(映画)オリバー・ツイスト(2005年)の考察と感想とあらすじは?

オリバー・ツイストは決して悪の道に入り込むことはありませんでした。感動的なのは、最後の場面でフェイギンのために、一緒に神に祈りを捧げるところです。あそこまで人を信頼し感謝できるオリバー・ツイストという少年は天使のようです。

(映画)ブラザーズ・グリム(2005年)の考察と感想とあらすじは?

グリム童話で知られるグリム兄弟の足跡を描いた映画...ではない。そう思ってみてしまうと、面食らってしまうのは間違いない。ダーク・ファンタジー・コメディである。

(映画)Vフォー・ヴェンデッタ(2005年)の感想とあらすじは?

「革命」を題材にした映画。過去にあった革命ではない。近未来を舞台にして、革命を起こすという映画である。舞台は近未来のイギリス。このイギリスで1605年11月5日に起きた事件「火薬陰謀事件」を常に引き合いに出して物語は進んでいく。

(映画)サハラ 死の砂漠を脱出せよ(2005年)の考察と感想とあらすじは?

冒険ものということで期待していました。しかも、原作は売れまくりのシリーズ。きっと面白いに違いない!!!...と期待に胸を膨らませていたのですが...

(映画)ローレライ(2005年)の考察と感想とあらすじは?

今回は「ローレライ」(原作:福井晴敏「終戦のローレライ」)を見ました。ローレライはLoreleyと書き、ドイツのライン河流域のザンクト・ゴアルスハウゼン近くにある、岩山のことをいうそうです。

(映画)ナルニア国物語/第1章ライオンと魔女(2005年)の考察と感想とあらすじは?

末娘のルーシィ。彼女の、無鉄砲さと、すきっ歯がチャーミングでした。まぁ、これらは置いておき、CGは全体的に素晴らしかったです。特に主役クラスのアスラン。これは必見です。音楽も、映画にマッチする音楽だったと思います。

(映画)戦国自衛隊1549(2005年)の考察と感想とあらすじは?

1979年の映画「戦国自衛隊」(主演:千葉真一)のリメイク版。こちらでは、長尾景虎(後の上杉謙信)が重要な登場人物となります。なんとも...

(映画)レジェンド・オブ・ゾロ(2005年)の感想とあらすじは?

「マスク・オブ・ゾロ」の続編。今回は、アントニオ・バンデラスのゾロだけでなく、妻エレナのキャサリン・ゼタ=ジョーンズと息子ホアキンのアドリアン・アロンソが大活躍する。

(映画)ALWAYS 三丁目の夕日(2005年)の考察と感想とあらすじは?

昭和33年。私にとっては知らない時代の話。だが、なんとなく懐かしく思えてしまうのはなぜだろう。まだ出来上がっていない東京タワー。建設途中の映像が様々な場面で登場する。

(映画)ハリー・ポッター4/ハリー・ポッターと炎のゴブレット(2005年)の考察と感想とあらすじは?
かなり原作に忠実であろうとしている姿勢が見られました。その努力は称賛に値しますが、それでも、原作を読んでいないと、今ひとつ分かりづらいシーンや、人間関係があったと思います。
(映画)セブンソード(2005年)の考察と感想とあらすじは?

映画が始まったばかりの、風火連城からやって来た、白塗り賞金稼ぎ軍団の登場は度肝を抜き、期待感を持たせてくれた。特に、インパクトの強い、十二門将・瓜哥洛はよかった。

(映画)SHINOBI(2005年)の感想とあらすじは?
原作は山田風太郎の「甲賀忍法帖」。とても面白い作品なのですが、映画はこれを原作に忠実に描いているわけではありません。プロットを踏まえながら、オリジナルなものに仕上がっていますよう
(映画)イーオン・フラックス(2005年)の考察と感想とあらすじは?

それなりに期待させてくれるし、途中までは楽しいSFである。意外な設定もあり、それこそ手足が両方とも「手」という改造人間などの登場も今までありそうでなかっただけに良かった。

(映画)阿修羅城の瞳(2005年)の考察と感想とあらすじは?

本作は元々、劇団☆新感線の「いのうえ歌舞伎」と呼ばれるシリーズの演目名で、サブタイトルまで含めた正式な名称は「阿修羅城の瞳 BLOOD GETS IN YOUR EYES」。

(映画)蝉しぐれ(2005年)の考察と感想とあらすじは?
原作の「蝉しぐれ」は、藤沢周平作品のなかで確実に上位5位以内に入る名作です。これは藤沢周平ファンや藤沢周平作品をある程度読んだことがある人なら、一致した意見だろう、と勝手に思っています。
(映画)プロミス-無極-(2005年)の考察と感想とあらすじは?

「さらば、わが愛/覇王別姫」でカンヌ映画祭のパルムドールを受賞し、オスカーにもノミネートされたチェン・カイコー監督による作品。無歓を演じるニコラス・ツェー。耽美的な、自己陶酔系の北の侯爵…。

(映画)ニュー・ワールド(2005年)の考察と感想とあらすじは?

伝説化されてしまったネイティブ・アメリカンのポカホンタスの波乱に満ちた生涯を描いている映画。波乱に満ちた人生のはずなのに、なぜか全体的に静謐な印象を受ける。

タイトルとURLをコピーしました