宇江佐真理の「余寒の雪」を読んだ感想とあらすじ

この記事は約4分で読めます。

覚書/感想/コメント

第七回中山義秀文学賞受賞

「あさきゆめみし」は、現在で言うところの”おっかけ”が主人公の物語である。それも、女のおっかけではない。男のおっかけである。この設定が意外性があり面白い。

「梅匂う」も似た感じではあるが、こちらはおっかけというよりは、どちらかといえばタニマチを描いている感じである。

「出奔」は御庭番、かつての忍者集団の中での起きた事件を題材にしている。といっても、華々しい忍者の物語ではない。

「余寒の雪」は女剣士・知佐を描いている。女剣士といえば、池波正太郎の「剣客商売」に登場する佐々木(秋山)三冬が思い浮かばれる。

他にも池波正太郎は「まんぞくまんぞく」で女剣士を描いているが、宇江佐真理の描く女剣士とはだいぶ違う。読み比べるのも面白いだろう。

内容/あらすじ/ネタバレ

紫陽花

大伝馬町の太物屋・近江屋は江戸屈指の大店である。お直はそこの内儀だが、元は吉原の遊女屋で振袖新造を勤めていた女である。

そのお直を昔の源氏名・春園で呼ぶ男がいる。房吉である。房吉は吉原の妓夫である。

房吉が訪ねてきたのは梅ヶ枝が死んだ事を知らせるためであった。お直は梅ヶ枝の最期を見送ると約束をしたが、大伝馬町から吉原まではかなりの距離がある。夫の半兵衛に事情を話すと、野辺の送りにつきあうという。

あさきゆめみし

つばめ屋の長男・正太郎は女浄瑠璃の竹本京駒を熱烈に贔屓にしていた。

正太郎の家は家族がそろいもそろって陰気で引っ込み思案である。食事をしていても弔いのようである。また、子供の頃からの付き合いの友人は直助、仙吉、重蔵だが、直助には良い感情を持っていなかった。そうした中で、正太郎が夢中になれたのが京駒なのである。

ある時、直助が正太郎に京駒の出る女浄瑠璃に連れて行けという。渋々だが正太郎は直助ら三人を連れて出かけることにする。

後日、正太郎は姉のお藤に直助との縁談が持ちあがっているのを知るが、一方で直助の実家が火の車であることも知る。

藤尾の局

お梅と娘のお利緒は店蔵に逃げ込んだ。お梅は後添えとして入った備前屋の先妻の息子達との仲が芳しくない。長男の清吉と次男の清次郎は酔っては暴れ、お梅はその被害に遭っていた。

だが、お梅は怒りもせずに、二人の息子を宥めるばかりである。その態度に娘のお利緒は、なぜ怒らないのかと憤慨する。

お梅は備前屋に迎えられるまでは江戸城の大奥に勤めており、老女藤尾を名乗っていた。お梅はお利緒と店蔵に隠れている間に、その当時のことを話してあげた。

梅匂う

助松は小間物屋千手屋を営んでいる。仕事が終わったある日、助松はかすかな匂いにつられて細い通路に踏み入れた。そこは見世物小屋の楽屋につながっていた。そして、女力持ちで評判の大滝太夫が化粧台に向かっていた。

その顔を見て、助松は大滝太夫に一目惚れしてしまった。そして、見世物小屋に通い詰めるようになる。ある日、太夫がいつも来てくれるお礼に会いたいと言ってきた。助松はすっかりと舞い上がってしまうが…。

出奔

将軍家斉の息女が輿入れする日。御休息御庭之番支配、川村修富はある感慨があった。甥の勝蔵と将軍家斉は一つしか違わない。だが、一方は娘の輿入れで、一方は嫁取りも出来ていない。

その甥の勝蔵が行方不明になっていた。昨日出奔の届けを出したが、川村家の危機である。一体全体どういう理由で行方不明になったのかが分からない。

勝蔵の行方は北川彦太郎が追っていた。そして、彦太郎が川村修富に伝えた内容は…

蝦夷松前藩異聞

栄吉こと、蝦夷松前藩の家老・蠣崎将監広伴は藩主・松前昌広の最近の行状を憂いていた。藩主を引継いだばかりの昌広は英名の藩主だった。だが、ある時から昌広の身体に変調が見られ始めた。

栄吉を山田三川と小林次郎左衛門が訪ねてきた。訪問の内容は察しがついていたが、その会談の中で昌広に隠居してもらい、その代わりに弟の崇広に次期藩主になってもらおうという案が出てきた…。

余寒の雪

知佐は叔父・飾磨鉄三郎とその妻・さなに付き添われて江戸に出てきたのは仙台に初雪が降った頃のことである。

知佐は武芸に秀で、別式女という御殿女中に武芸を指南する女剣士になることを夢見ていた。そのために、婚期を逃していた。頭を痛めていたのが父親の文七郎である。

この江戸行は、知佐を騙して鶴見俵四郎との祝言を挙げさせるためのものだった。それを知った知佐は激怒するが、叔父達は何とか宥め、知佐を数日間だけの約束で鶴見家に居候させてしまう。

本書について

宇江佐真理
「余寒の雪」
文春文庫 約三〇五頁
短編集 江戸時代

目次

紫陽花
あさきゆめみし
藤尾の局
梅匂う
出奔
蝦夷松前藩異聞
余寒の雪

登場人物

紫陽花
 お直
 近江屋半兵衛
 房吉
 梅ヶ枝

あさきゆめみし
 正太郎
 お藤…姉
 安助
 直助
 仙吉
 重蔵
 竹本京駒

藤尾の局
 お梅
 お利緒…娘
 清吉
 清次郎
 青柳

梅匂う
 助松
 伊助…手代
 大滝太夫
 金蔵

出奔
 川村修富
 川村新六
 川村勝蔵
 北川彦太郎
 おまち

蝦夷松前藩異聞
 蠣崎将監広伴(栄吉)
 山田三川
 小林次郎左衛門
 松前昌広…松前藩主
 ニシパ

余寒の雪
 知佐
 飾磨鉄三郎…叔父
 さな
 鶴見俵四郎
 松之丞

タイトルとURLをコピーしました