塚本靑史の「項羽-騅逝かず」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

項羽を主人公とした小説。劉邦を主人公として描かれることが多いので、珍しいといえる。

項家は代々楚の武官を務めている家柄で、校尉から将軍職を拝命している。元の領地が河南の項県にあり、それにちなんだ名字である。

この小説は、歴史小説に武侠小説の要素も加わった感がある。二重の楽しみが出来るといえる。

だが、個人的にはかなり違和感があった。私にとって、違和感の正体は明確だ。

遊侠が多く登場するので、言葉使いもそれなりにくだけたものになっている。「あっし」「~ですぜ」などの類である。

それはいいのだが、この言葉遣いは、日本の江戸自体における股旅もの等とオーバーラップしてしまう。古代を舞台にした小説ではあまりお目にかからない言葉遣いである。

次に、項羽などの武将が頻繁に使っている「みども」もかなり違和感がある。

「みども」は近世の武士階級で、同輩か同輩以下に対して使われた一人称。近世は江戸時代を指すことが多く、安土・桃山時代も含むという見解もあるようだ。

だから、上記の「あっし」などとはそれほど時代区分がまちがっているわけではないのだが、多くの小説では「拙者」を用いているので、こうした違和感が生まれるのかもしれない。

この「みども」と「あっし」の間に横たわる感覚のズレがついに埋められぬままに最後までいくことになる。

さらに、遊女の登場する場面などでは、これまた日本の江戸時代の遊郭街を彷彿とさせ、中国を舞台としているようには感じられなかった。

読んでいって背中がむずむずするような何ともいえない奇妙な感覚がつきまとってしまった小説である。

最後に。中国の古代ものなら、宮城谷昌光の方が個人的に好みである。また、項羽を読むのなら、司馬遼太郎の「項羽と劉邦」を読んだ方がよいと思う。

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内容/あらすじ/ネタバレ

楚が秦に降伏することになった。それを潔しとしない項家では項梁と項伯がそれぞれ分かれて移り住むことになった。項羽は項梁が引き取ることにした。項梁は甥の項羽や息子の荘らをつれてきたのは長江の南の呉である。

楚が滅び、最後に残った斉も滅び、秦が天下統一をする。ここに秦王・政は始皇帝と名乗る。

…項羽は十三才になった。少年とはいえ、大人顔負けの力がある。武芸にしか興味のない少年だったが、項家にやってきていた娘にやりこめられて、成績は良くなかったものの、勉学に勤しむようになった。

…項梁につれられて、項伯を訪ねることになった。項伯は遊侠の仲間になって、運送を生業としているらしい。そして、韓の宰相職を奉じた家柄の張良とも知り合いになっていた。

…この頃、始皇帝は国を巡幸に出かけて、刺客に襲われるという事件が起きていた。この事件に関連して、項羽の知り合いである季布の鍛冶場が目をつけられていた。こうした不穏な情勢の中、罪を逃れるために逃亡する輩が増えていた。劉邦や黥布などである。

最近、江南へ斉の訛りのある娘が売られてきている。それにともなって仙人島という怪しげな島のことが漏れ聞こえてきていた。

…始皇帝が死んだ。第五回目の巡幸のときのことだ。真相はよく分からないが、事実のようである。そして、二世皇帝が即位した。だが、宦官の趙高のために不穏な情報は一切この新皇帝の耳には入らなかった

そして、陳勝と呉広の蜂起によって歴史の幕が開く。

…項梁は呉で人望が高まっていた。項梁は挙兵することを決めていた。そして、すぐに会稽を制圧した。この報をうけた項伯も駆けつけた。

各地で同様の挙兵がおきている。秦の実力は極端に落ちているようだ。にわかにたった武将にも歯が立たない。

項梁の元には次々と武将が集まってきた。その中には劉邦や黥布もいた。項梁は楚王の子孫を王として、打倒秦の軍を展開し始める。だが、定陶で楚軍が大敗し、項梁はこの戦の中で戦死する。

かわって、楚軍を把握しようとしたのが、楚王・懐王の腹心・宋義である。宋義が上将軍となり、項羽が次将となった。そして、懐王は関中一番乗りした者を関中王に奉じると宣言する。各武将がどよめいた。

この関中争奪戦は劉邦が有利な展開である。項羽はこの争奪戦からはずされる形となっている。どうも懐王周辺からの圧力があるようだ。

こうして項羽は宋義に従って出陣したが、宋義の動きは重い。この重さが宋義自身のための都合であることが分かると、項羽は迷いもなく宋義を討ち、楚軍を把握する。

そして項羽が楚軍を把握すると破竹の勢いで勝ち進んでいく。そして劉邦との対決が避けられなくなっていく…

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本書について

塚本靑史
項羽 騅逝かず
集英社文庫 約六七〇頁
秦末期 紀元前3世紀

目次

第一章 前(二二八~二二三)年
第二章 前(二二二~二一九)年
第三章 前(二一九~二一二)年
第四章 前(二一一~二〇九)年
第五章 前(二〇九~二〇八)年
第六章 前(二〇八~二〇六)年
第七章 前(二〇六~二〇四)年
第八章 前(二〇四~二〇二)年
第九章 前(二〇二)年
後記
項羽関連年譜

登場人物

項羽
項燕…祖父
項梁…叔父
項荘…項梁の長男
項伯…伯父
虞姫
薄姫
薄昭…薄姫の弟
季布
范増
鍾離?
呂馬童
懐王(義帝)
宋義
劉邦
張良
陳平
韓信(淮陰侯)
韓信(韓王信)
樊かい
彭越
黥布
章邯

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