鳥羽亮の「はぐれ長屋の用心棒 第11巻 雛の仇討」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第十一弾。シリーズ第六弾の「迷い鶴」以来、久しぶりに藩の権力闘争に巻き込まれることになる。

「迷い鶴」では記憶喪失となったお鶴こと房江を長屋の連中が親身に世話をした。今回は志乃という、房江よりさらに幼い少女が長屋の世話になる。

そういえば、二人とも父を殺されているという共通点があり、両方ともが敵討ちの話でもある。ただ、「迷い鶴」に比べると、本作の方が政争の部分が表に出ている。

今回、井森圭一郎という居合の遣い手が登場する。流派は林崎流。

林崎流とは神夢想林崎流のことで、流祖は戦国時代末期の剣豪・林崎甚介重信だ。神夢想林崎流は、東北諸藩に伝承され、居合の源流として今日に至っている。

重信は羽州村山郡楯岡在林崎村(現山形県)に生まれた。つまり、本作の里江藩の近くということである。

重信は三尺二寸(約九十六センチ)の大太刀をふるっていたようだ。この大太刀を抜刀する術は今日「卍抜け」と呼ばれているそうだ。また、抜刀の際の一撃を重視していたようだ。

重信に関しては伝承が少なく、郷里を去ってから、鹿島神宮のある鹿島で晩年の塚原卜伝に入門したといわれている。

田宮流の祖・田宮平兵衛重政は林崎流を学んだ後に田宮流を開いているから、いわば同じ流れの流派となる。

さて、前作で生まれた孫六の孫は富助と名付けられた。

内容/あらすじ/ネタバレ

菅井紋太夫が両国広小路でいつもの大道芸を見せ終え帰ろうとした時、声をかけてきた武士がいる。それがしも投げてみたいというのだ。武士には娘の連れがいた。

この武士は居合を遣うらしい。居合対居合。菅井もどちらが迅いか、試したくなった。

武士は井森圭一郎といい、娘は姪の志乃だという。ゆえあって羽州から江戸に出てきたのだ。居合は林崎流だそうだ。菅井の田宮流とは同じ系列の流派になる。

井森は菅井に大道芸の手伝いをさせてもらえないかという。出府したのはいいが、住む家も口に糊する手だてもなく途方に暮れていたのだとか。

菅井は快諾し、二人をとりあえず長屋に連れて行った。

井森は里江藩の家臣らしい。だが、なぜ出奔したのか理由を話さない。

井森と志乃が剣術の稽古を始めた。志乃の手には小太刀が握られている。稽古は真剣勝負さながらの気魄のこもったものだった。

この後、源九郎は傘屋の丸徳の主・久蔵から、店に武家が二人来て、あれこれきかれたという。二人は出羽の里江藩のものと名乗った。どうやら、井森と志乃のことを訊いて回っているようだ。

里江藩の家臣が斬られた。死体を見て、井森は栗島と呟いた。知っているようだ。だが、これ以上のことは口を閉ざした。

井森が己と志乃のことを話し始めた。二人は敵を討つために江戸に来たのだという。志乃の父親で、井森の兄である井森貞之助が一刀流の道場の門弟三人に襲われたことだけは分かっている。

貞之助は里江藩の郡奉行だった。貞之助が殺されてからしばらくして、磯辺五郎太、茂山連次郎、利根山辰造の三人が姿を消していた。

このうち、磯辺の姿が江戸市中で見かけられたという知らせがきて江戸にやってきたのだ。

そもそも、なぜ志乃の父親は命を狙われたのか。栗島という殺された男との関わりもあるのかもしれない。

孫六が栄造に話を聞きに行くと、栗島は三人組に襲われ、殺される時に、ご家老の指図だな、と叫んだという。そして、三人組の一人はあと三、四人斬ることになると口にしていた。

どうやら、里江藩には家中でのもめ事があるようだ。

井森が二人の武士を連れてきた。二人は里江藩の側用人・寺尾惣左衛門と徒士頭・横内佐三郎だった。

井森が敵を討つために力を貸してくれといい、他の二人も磯辺、茂山、利根山を討つための助力を頼んだ。相応の礼として五十両を出すつもりらしい。

そして、里江藩の中で起きている収賄に絡んだ政争を話し始めた。井森と志乃に課せられた任は、敵を討つのと同時に三人の刺客を始末することにあった。

源九郎らがやることは磯辺たちの居所をつきとめることであった。だが、里江藩のいずれの屋敷にもいる気配がない。一体どこにいるというのか。

その中、まずは茂山連次郎の姿を発見することとなる。つけてゆくと、茂山は田所富之助という里江藩士の居所にいることが分かった。茂山はしばらく泳がし、他の二人との接触があるのを待つことにした。

井森や寺尾らが会合を持つことになった。その席に菅井も呼ばれ同行した。

この会合の帰り、敵十人ほどに襲われてしまう。必死の防戦で、何とか逃げ切ることができたものの、菅井は傷を負う。

そして、志乃が磯辺たちに攫われてしまう。磯辺は帳簿を返さなければ志乃の命はないという。不正をあばく証の帳簿を取り戻したいようだ。

本書について

鳥羽亮
はぐれ長屋の用心棒11
雛の仇討
双葉文庫 約三〇〇頁
江戸時代

目次

第一章 大道芸
第二章 内紛
第三章 密談
第四章 船屋敷
第五章 救出
第六章 奥州街道

登場人物

華町源九郎
菅井紋太夫
茂次…研師
孫六…元岡っ引き
三太郎…砂絵描き
お熊…長屋の住人、助造の女房
栄造…岡っ引き
お勝…栄造の女房
村上彦四郎…南町奉行所定廻り同心
久蔵…傘屋の丸徳の主
井森圭一郎
志乃…井森の姪
寺尾惣左衛門…側用人
横内佐三郎…徒士頭
太田原…江戸留守居役
菊川登右衛門…江戸家老
磯辺五郎太
茂山連次郎
利根山辰造
田所富之助

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