大河ドラマ「篤姫」の感想

歴史学雑記
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宮尾登美子の「天璋院篤姫」をドラマ化。

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第1回から第3回までの疑問点

於一の実家今和泉家は薩摩島津家の分家とはいえ指宿に一万四千石ほどを領地としている。

通常一万石を超えると大名といわれる。

今和泉家のように、分家として万石以上を賜っている家臣というのは他藩にもあり、例えば加賀前田藩では八家と呼ばれ、上は五万石を領し、いずれも万石以上の重臣である。

於一はいわば大名の姫と同じであり、その姫が西郷吉之助や大久保正助といった下士との交流があったというのはかなり不自然な感じがするのだ。

もちろん、原作でもこのような場面というのはない。ドラマオリジナルの設定である。

封建の時代にあり、身分の違いというのが明確な時代だった江戸時代において、同じ武士階級に属する場合、さらに身分の違いというのは明確だったはずである。

さらに、表と奥との役割は明確であり、私は奥が表に出てくるというのは、ほぼあり得なかったと認識している。

だから、いわば大名の姫と同じ於一が供の者もつけずに外出したり、他家の同年代の男子と親しく、しかも二人で語り合うというのは、どうなのだろうかと思ってしまうのだ。

それとも、実際に於一はこのように気軽に屋敷を抜け出して、他家の同年代の男子と親しく、しかも二人で語り合うという逸話があったのだろうか?

ライトノベルならこうした設定もありえるだろうが(ライトノベルでもないのかもしれない)、歴史を題材にしつつも比較的設定の緩い時代小説ですらこのような設定というのはお目にかかることはない。

小説の世界でも設定としてお目にかかりにくいのは、昨今の時代小説作家や歴史小説作家は、近年の歴史学の新しい展開と研究の成果を反映した時代考証を踏まえて書いているからである。

歴史を舞台にした小説は、いかにその時代の社会背景や社会風俗を正確にに取り入れて不自然さを取り除くかというのが最低限の作家のやるべき作業であり、それを踏まえて想像力を働かせる作業を行っている。

脚本家もそうした作業を行っていると思っているのだが、どうなのだろうか。

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島津家発祥の地についてのNHKの間違い?

「篤姫」の放送の中で、鹿児島県出水市が「島津家発祥の地」と紹介されたようだ。ドラマは見ているのだが、そんな放送あったっけ?という感じである。

このことで、宮崎県都城市が、NHKに抗議をしているのだとか。

都城市は1924年の市制施行以来、島津発祥の地をうたってきているという。

同市によると、源頼朝と側室・丹後局の子、惟宗忠久(これむねただひさ)が鎌倉から「島津庄」(現在の都城市)に役人として派遣され、地名にちなんで島津と名乗ったのが始まりなのだとか。

この忠久が島津家の初代となった。だから、都城市が島津家発祥の地なのだという。
そういえば、そういった記述をどこかで見たか読んだ気がする。

一方で、島津家発祥の地とNHKに紹介された出水市は、一度も島津家発祥の地としてのPRをしたことがなく、こちらも困惑しているようだ。

ただし、市内には島津家初代から五代目までの墓があり、もしかしてそれをもって、NHKは発祥の地と勘違いしたのかもしれない。

都城市にとっても出水市にとっても今回の件は青天の霹靂であり、すべてはNHKの不十分な勉強が元凶にあるようだ。

早い段階で訂正の放送をすることがNHKの番組に対する信頼性を取り戻すことになると思うが、果たしてすんなりと誤りを認めるか…。

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第4回から第6回までの感想

原作に近い、というより、ドラマを見た感じでは、原作から遠ざかりそうになったのをグイッと軌道修正したかのような印象を受けた。

とにかく、原作で語られる内容に近くなった気がしたのが第4回から第6回である。

その第6回で於一付の女中・菊本が自害した。

菊本の心境が綴られるのは第7回のようであるが、これが篤姫にとっての最初の辛い別れとなる。

さて、次作以降で於一は島津本家の養女となる。そして、いよいよ京から幾島が下ってくることになる。

のちのち、江戸城大奥にも一緒に入る「戦友」とでもいうべき女性である。登場が楽しみであるが、その前に、鶴丸城の奥での話というのがどう語られるのか…。

薩摩の鶴丸城には半年くらいしかいないので、本来ならサクッと描かれる部分のはずだが、どうも数回分は引っ張る感じがする。

いまひとつ理解できないのが、ジョン万次郎の登場である。海防政策の重要人物として描くつもりなのだろうが、これがドラマの中で今後どのような役割を見せるのか?

まさか「この当時、薩摩は海防政策に力を入れていました。」というのを説明するために登場させたのではあるまい。そんなのはナレーションだけで済むことである。

第7回から第10回までの感想

第7回から第10回までの間に、於一は篤子と改名して「篤姫」となる。

住まいも今和泉島津家から、島津本家の鶴丸城へと移り、島津斉彬の一の姫としての教育が始まる。

このタイミングで、江戸城大奥に入ったあとも、一種の戦友のような存在となる「幾島」が篤姫付として京都から下向してくる。

原作では、この前に於一が成人して父・忠剛から成人名として「敬子(すみこ)」を賜ることになっているが、篤姫関連の書物では、近衛忠煕の養女となり、篤君と改称し、敬子(すみこ)の諱を賜る、となっているので、こちらが正しいのであろう。

原作が書かれた当時、篤姫にはおよばず、江戸城大奥に関する学問もほとんどすすんでいなかったというから、仕方のないことであると思う。

さて、こんなことよりも…

第10回目で、徳川宗家(=将軍家)の御台所として篤姫が候補に挙がっていることが知らされる。

ドラマでは、日本の政治を建て直すために、島津斉彬が篤姫を江戸城大奥へ送り込むのだ、ということになっているようだが、はて?と思ってしまう。

なぜ、篤姫を江戸城大奥へ送り込むことで、島津斉彬の意図が達せられるというのか?

一般には、13代将軍徳川家定となる徳川家祥の次の将軍を決めるときの発言力の強化のためといわれる。これには、異説もある。

従来からいわれているような将軍継嗣問題に絡んで早くから篤姫を江戸城大奥へ送り込んだというのは、説得力に欠ける部分がある。

ドラマでは語られていないものの、そもそも、徳川家祥は篤姫を御台所にむかえる前にすでに二人の正夫人と死別している。

三番目の「正夫人」として島津家に声がかかったのは、従来いわれているよりも早かったという。

つまり、これによれば、将軍継嗣問題の発生する前から島津家に将軍世嗣の正夫人を求めていたわけであり、将軍継嗣問題が先にありきではなかったようである。

それよりも、薩摩藩にとっては、篤姫が江戸城大奥に入ることで、いわゆるお助け普請が少なくなる可能性が高くなるメリットの方が大きいだろう。

お助け普請では、苦い思いをしており、同時にうまみも知っている薩摩藩だけに、有効性を確信していたに違いない。

その下地があって、折良く将軍継嗣問題が浮上したことから、色気を出したというのが本当のところだったのではないかと思ってしまう。

島津斉彬が藩主となる直前まで貧乏にあえいでいた薩摩藩である。

政治的な意図が先行するよりも、金の浪費をしないで済む上手い話が舞い込んできたのだから、飛びつくのは当たり前という気がするが、あまりにも俗な考えだろうか?

第11回から第12回までの感想

第12回目の「さらば桜島」が原作の始まりの場面に相当する。

篤姫が幾島に付き添われて輿に乗り、今和泉家の前で暫し立ち止まって別れをして江戸へ出発するという場面だ。

この場面のあと、過去にさかのぼって篤姫の幼少時から語られていくのが小説の世界だったなぁ、とドラマを見ながら思った。

第12回目の「さらば桜島」で篤姫と後の島津久光とのやり取りをする場面があった。

篤姫が囲碁を好むので、久光が女性にしては珍しい、と言ったことに始まるやりとりだ。

これと似た場面がドラマの中で再度登場するはずである。

御台所になることが決まった篤姫の人柄を確かめるために、島津斉彬のもとを訪ねる大名たち。それを前に篤姫が似たようなやりとりをして唸らせるという逸話があるからだ。

もっとも、この大名たちとの対面の時は囲碁の話ではなかったようではある。

近いうちに登場するはずのドラマの一場面である。

それと、原作では篤姫との対面は江戸城無血開城後であった西郷隆盛であるが、篤姫が江戸に出立したあと、島津斉彬が江戸へ出府するときに随行員として江戸へ向かうことになる。

この時に島津斉彬と対面を果たしたと言われている。そして、お庭番になり西郷隆盛の活動が始まる。

ドラマでは、島津斉彬が肝付尚五郎(小松帯刀)に、下々のものとは直接付き合いができないからと、肝付尚五郎を介して西郷隆盛や大久保利通を動かすような設定となっているようだ。

こうした設定にしないとドラマでの肝付尚五郎の居場所がなくなるからであるのか?それとも西郷隆盛が島津斉彬からの勅命を受けたことがないという史実があるのだろうか?

島津家発祥の地を間違えて放送したNHKだけに、史実をどの程度までドラマに織り込むのかが疑わしい。

第13回から第17回までの感想

将軍家への輿入れを前にした江戸の篤姫。

西郷隆盛が島津斉彬の命を受け、篤姫の調度品をととのえることになった。原作でもそうなっている。

ただ、篤姫のいる場に同席したというのは…、まぁ、ありえない。

ドラマだからということで…ご愛敬ということなのか?

薩摩藩の奥というのは、将軍家と同じく「大奥」と呼ばれていたようだ。

それがいつの頃からはわからないが、おそらくは竹姫が島津家に降嫁してからではないかと思う。

五代将軍綱吉の養女だった竹姫を迎え入れたおりに、竹姫と一緒にくっついてきた者達が江戸城の「大奥」をそのまま持ち込んできていると思われる。

さて、第17回で安政の大地震が起きた。

篤姫の暮らしていた藩邸はひどい状態になり、渋谷の別邸へと移ることになる。そして、この渋谷から江戸城へ輿入れすることになるのだ。

渋谷からの輿入れの際、その行列は先頭が江戸城についても、まだ渋谷の別邸から出ていない者がいたというほどだったといわれている。

この様子はさすがに描かれないだろう。

それよりも気になるのは、予告を見ていると第18回目で篤姫が将軍家に輿入れしそうな気配があることである。

予想よりも早すぎるのに少々驚いている。

となると、安政の大地震のあった折に、薩摩藩邸で英姫が家族一同を気づかうという、原作にあるシーンがカットされることになる。

このシーンは冷たく見える英姫が実は心温かき人であることを表現しているのだが、これをカットしてしまうと、単なる嫌なババアにしかならなくなるので、残念だ。

それとも、脚本家や演出の意図なのか?

また、渋谷の別邸に移ってからの時間を描いていないと、その時期に起きた事柄を全部無視することになり、いい加減な時間の流れを再現してしまう。

ちょいと、いい加減で雑な作りが目立ってきている気がするが、大丈夫か?

第18回から第24回までの感想

篤姫が大奥へ入って将軍・家定との関係が徐々に良くなっていくのが18回から24回までの見所に一つだろう。

「篤姫」も中盤にさしかかり、そろそろご退場頂く登場人物がいる一方で、これから活躍し始める登場人物達の顔ぶれもそろい始めた。

あとは、後半に入ってから登場する和宮を待つばかりである。

この18回から24回までは役者の演技が面白かった。

特に徳川家定役の堺雅人と本寿院役の高畑淳子の二人はいい。

原作ではドラマほどの権力のない本寿院だし、実際にドラマほどの権力があったとは思えない本寿院なのだが、まぁ、それは置いておき、堺雅人と高畑淳子の示し合わせたようなオーバーな演技が目を引く目を引く。

原作を意識するなら滝山役の稲森いずみに台詞を多く与えなければならないが、高畑淳子に台詞を与えたのが、結果的に面白くなっている気がする。

堺雅人と宮崎あおいの掛け合いというのも面白い。

宮崎あおいは、とても楽しそうに演技しているように見えるのは気のせいか?

初瀬役の宮地雅子もいい味を出している。

篤姫が無理難題を言った時の困った顔は天下一品である。

癖のある俳優達を使うと、喰われてしまう俳優がいる。

大奥に入ってから、急に影の薄くなった感じの幾島、いるのかいないのかわからないお志賀、何のために登場シーンがあるのか理解に苦しむ小松尚五郎…。

癖のある俳優陣の出番はもうすぐで終わりそうなので、影の薄くなった俳優達には朗報なのだろうが…と思っていたら、伏兵が登場しそうな予感。

徳川慶喜役の平岳大。結構癖があると見たが?

それと、おすまし顔で登場してきた徳川慶福役の松田翔太がどんな演技をするか。

もうすぐ始まる後半戦。

主役クラスの俳優達は、脇を固める俳優達に喰われないように頑張って欲しい。

そして、脇を固める俳優達は、主役を喰ってしまうくらい頑張って欲しい。

今年の大河に出る俳優達はまだ幸せなのかもしれない。

来年は座っているだけで場面を持って行ってしまう北村一輝が、準主役で1年間出ずっぱりなのだから。

「篤姫」後半戦に向けて希望する復刊本

関連本の少ない大河ドラマ「篤姫」。後半戦に向けて、復刊を希望する本を二冊ほどあげてみたい。

大奥が主たる舞台となって久しい「篤姫」であるが、この「大奥」というのはよくわからない空間である。

この大奥を解説した本というのはいくつもあり、入門書としての新書もそれなりにある。それぞれに趣向を凝らした内容となっているのだが、どうも「これは」というものがない。

そうした中で、いくつもの本の参考文献としてあがっているのが、畑尚子氏の「江戸奥女中物語」。これは以前も増刷(復刊)しないかなと書いたことがあるが、本当に増刷(復刊)しないかと願っている。

さて、大奥とは別に、いよいよ物語は本格的な幕末へと突き進む。

脚本家はどうやら小松帯刀(尚五郎)を最後まで出したいようなので、なら、幕末の薩摩藩を描いた小説が多く出てくれてもいいような気がする。

折しも、再来年の大河ドラマは坂本龍馬に決まっているので、今の内から幕末ものを出しても問題ないのではないだろうか。

幕末の薩摩といえば、海音寺潮五郎氏を外すわけにはいかないだろう。その代表的な著作群に「西郷隆盛」関連がある。実際、どれくらい西郷隆盛を書いているのかが把握しづらいほど西郷隆盛を書いている。

最近、ソフトカバーで史伝「西郷隆盛」(朝日新聞社)の復刊が終わった(個人的には文庫で復刊しろと言いたい)。この史伝は絶筆となった作品だが、海音寺氏の集大成というべき作品である。

この九巻目の内容がちょうど江戸城の開城となっているようで、この江戸城の開城を抜き出して書かれているのに「江戸開城」という作品がある。

ドラマ「篤姫」の原作・宮尾登美子氏「天璋院篤姫」では、江戸城の無血開城は天璋院が西郷に宛てた嘆願書が功を奏したような印象を受けるが、実際はそうでなかったことは様々な本で述べられているとおりである。

研究書などは読んでいても退屈なのが多いので、ぜひ海音寺潮五郎氏の「江戸開城」を一読することをおすすめしたい。

おすすめしたいところだが、絶版なので復刊をしてもらいたい次第である。

第25回から第30回までの感想

25回から30回までの間に起きたことといえば、大好評だった堺雅人演じる徳川家定が亡くなり、家定の母・本寿院の出番も減り、髪を下ろして「天璋院」となった御台所付の奥女中たちも去っていき、さらには幾島まで去ろうとしている…といったところ。

いわば、前半のキャストが総退場し、後半のキャストがこれから続々と登場して来るまでの「場つなぎ」的な回であったともいえる。

一方で、当時の社会情勢を映し出しているのが、最近の回では出演回数の多い中村梅雀演じる井伊直弼その人であろう。

ちょうど安政の大獄が始まり、いよいよ幕末の動乱が始まろうとしている。この井伊直弼は桜田門外で暗殺される。これは第32回に予定されているようだ。

桜田門外の変は現代的にいえば明らかに「テロ」である。当時の政府要人、実質的には首相ともいえる人物を暗殺したとなれば、現在ではどのような評価を下すことになるのだろうか。

ちなみにこの桜田門外の変で井伊直弼を暗殺したことを「是」とする歴史小説作家は(明確に書いていないにしても)意外と多い。

ドラマでは政情の不安定さはますます混迷を深めていくが、城中では篤姫が大奥を完全に支配下に置くことになる。

その一つの逸話として、一橋慶喜が徳川宗家を継いだ頃というから、ドラマでは大分先の話になるが、
『この頃の女中たちの言葉に、
「天璋院さまのご威令には庭の蝉さえなびく」
というのがあり、それは夏の日盛りのいっせいの蝉時雨さえも、篤姫の、
「控えよ」
の一言でぴたりと静まるというのであった。』
という。

ドラマの中で奥女中の口を借りる形でもいいから紹介して欲しいと思ってしまうくらい、おもしろ逸話である。

さて、後半のキャストで最も重要なのは和宮である。

第33回くらいで登場するようだが、堺雅人が演じた徳川家定の穴を埋めることができるか…。

第31回から第35回までの感想

第31回で幾島が去り、第32回で井伊直弼が殺され、第33回から本格的に皇女和宮が登場し、いよいよ本格的に「篤姫」の後半戦がスタートした。

後半戦の登場人物もほぼ出そろった感じがあり、皇女和宮の周囲にどのような人物を配置するのかが興味があった。

出色は庭田嗣子役の中村メイコ。はまり役である。和宮の母・観行院役の若村麻由美がお着きの人の見えてしまうくらい異彩を放っている。

和宮役の堀北真希は台詞が少なすぎて、何ともいえない。

さて、第35回でチラリと登場した坂本龍馬。このドラマに無理に登場させる必要もないだろうし、玉木宏を使う必要もないのだが、2010年の大河ドラマが「龍馬伝」に決まっているので、その伏線なのか。

今回の龍馬役がそれほどひどい評価でなければ、「龍馬伝」の主役は玉木宏でいいんじゃないかと思っているのは、私だけだろうか?

第36回から第42回までの感想

いよいよ佳境に入ったNHK大河ドラマ「篤姫」。

第42回で第十四代将軍徳川家茂が亡くなった。これにともない、和宮は静寛院宮と名乗ることになる。

将軍職は一橋慶喜が継ぐことになり、第十五代将軍徳川慶喜となる。

だが、大奥には将軍の正室である御台所は置かれることなく大政奉還を迎えることになる。

御台所のいない大奥を実質的に仕切ることになるのが、天璋院である。

嘘か真か…。夏に、天璋院がけたたましく鳴く蝉に向かって「控えよ!」といった所、ぴたりと鳴き止んだという。

それくらい大奥を天璋院が仕切っていたという逸話である。

是非ともドラマで…やらねぇよなぁ。

第36回から第42回までの中で新たに重要な登場人物としてクローズアップされるのが勝海舟(勝麟太郎)と坂本龍馬である。

この期間については、ドラマでは描かれていないが、勝海舟と坂本龍馬は神戸海軍操練所の設置やらで忙しく働いている。

この神戸海軍操練所に関して勝海舟は幕府重臣達に睨まれて閑職へと追いこまれている。

ドラマでは天璋院や家茂の側に近い人物のような印象を与えているが、実際には幕閣の中心にいたわけではない。幕閣を仕切っていたのは、当然ながら老中達である。

この時期の勝海舟がドラマのようには天璋院や家茂に直接拝謁していないと思った方が自然である。まぁ、ドラマだから…。

勝海舟をクローズアップし、坂本龍馬を登場させることで、再来年の「龍馬伝」の布石としているのだろう。

ドラマには登場してこないが、幕府の旗本にも優秀な連中はおり、勝海舟以外にも大久保一翁や小栗忠順、川路聖謨らといった人物がいた。

仮に、大久保一翁や小栗忠順、川路聖謨といった人物がNHK大河ドラマの主役となれば、こちらをクローズアップしたはずである。

さて、徳川家が江戸城を明け渡した後に、勝海舟と天璋院の交流があったというのは有名な話しである。家も近くにあった時期があったようだ。

旧主に対する礼儀として勝海舟が無聊を慰めたというのは自然であろう。だから、勝海舟と天璋院の交流というのは主従のそれであったに違いない。

第43回から第44回までの感想

2010年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」の主人公・坂本龍馬は玉木宏でいいんじゃない?

それはさておき。

大政奉還がなり、坂本龍馬が死に、ドラマは終盤のラストスパートへ。

最後の見せ場は「江戸城の無血開城」であろう。

恐らくドラマでは天璋院の嘆願や静寛院宮の嘆願が功を奏して江戸攻撃が未然に防げたという風になるのであろうが、一般的にはそう考えられていない。

様々な要因があって、結果的には攻撃直前で回避できたのであるが、天璋院や静寛院宮の嘆願はごくわずかな影響しか与えなかったと見るのが一般的である。

第45回から第47回までの感想

第47回「大奥の使者」で、西郷吉之助(西郷隆盛)が天璋院からの手紙を読んで涙を流すシーンは正に名場面だった。

西郷吉之助の脳裏には、徳川家に嫁入前の於一時代の篤姫との思い出が蘇り、懐かしく、そして、私情を捨ててでも突き進まなければならない皮肉な現実とを比べ、涙を流さずにはいられない。

西郷吉之助を早い段階からドラマに登場させた脚本家の意図は、この場面のためにあったと思うくらいイイ出来だった。

さて、ドラマとしては、名場面となったが、実際にはかなり異なる。

そもそも、ドラマとは異なり、初めて篤姫(天璋院)と西郷吉之助が会うのは江戸開城後である。

さらに、この第47回に続いて、第48回では江戸開城となるわけだが、西郷吉之助が江戸攻撃を思いとどまったのは、天璋院からの嘆願書ではないし、ましてや静寛院からの嘆願書でもなかった。

この二人からの嘆願書は完全に無視されていたというのが実情のようである。

では、なぜ江戸総攻撃を止めたのか?

この当時、幕府軍側にいたのがフランス軍で、薩長軍側(官軍)にいたのがイギリス軍だった。フランスとイギリスの代理戦争の様相を呈していたというのが、この当時の状況である。

幕府軍につくフランス軍としては薩長軍との戦端を開きたく、ひたすらに朝廷への恭順の意を示す幕府の翻意を促したが、将軍自ら謹慎してしまい、なすすべもない。

薩長軍としては、戦端を開くと死傷者が出ることになるので、事前にイギリス公使のパークスに軍医の要請などを行ったが、パークスが恭順(つまりは降伏)しているのを攻撃するのは国際的にも許される行為ではないと断った。

これを聞いて西郷吉之助は江戸総攻撃を取りやめたという。

折しも、同じタイミングで勝海舟との会談があり、折り合いがついたというのも大きな要因だったようである。

こうした所を描いている小説としては海音寺潮五郎氏の「江戸開城」がある。

また、幕府側・薩長側双方の立役者となった人物を描いた作品としては、<子母澤寛氏の「勝海舟」、司馬遼太郎氏の「翔ぶが如く」や海音寺潮五郎氏の「西郷隆盛」などがある。

どれもがボリュームがあるが、いずれもが「幕末物ならこの作品」という作品なので、読まれることをオススメする。

第48回から第49回までの感想

いよいよ最終回を残すのみとなった。

江戸城を明け渡し、大奥を去ることになる篤姫。

ドラマでは粛々と明け渡し及び立ち退きが描かれているが、実際は半分篤姫ら大奥の人間を騙して江戸城を去らせた。

この部分はドラマでも滝山の口を借りて「三日間だけ」江戸城を留守にして欲しいいわれたと語っている。脚本家としては「一応史実をふまえて脚色してますよ」というジェスチャーだろうが、いかんせん苦しい。

このドラマでは当初から説明に苦しむ場面が見受けられたが、これは簡単な理由で、実際に出会っていなかった人達を早い段階から出会わせたためである。

さて、この一年間、民放のドラマを含め他の番組を含めた所で「篤姫」の独走状態で終わりそうだ。

ある意味驚くべきことであるが、一年間を通じて視聴率のトップの座を明け渡した周が何週間あったであろうかというくらいの独走状態である。

だが、この独走状態もドラマ「篤姫」が凄いドラマであったからというより他の番組がひどかったからというべきであろう。

また、大河ドラマが一年間独走できたというのは、テレビ離れが顕著になってきたことを証明しているのかもしれない。

最終回と一年間を振り返って

一年間を振り返って、俳優陣と音楽が頑張ったドラマだったと思う。

脚本と演出はたいしたことが無く、もし俳優陣が別の俳優陣であり、また音楽も別の音楽であったならば、ここまでのドラマにはならなかったと思う。

俳優陣も主役の宮崎あおいと準主役クラスの一部を除いた脇役達がとてもよかった。

ドラマ前半では篤姫(於一)の父母役だった長塚京三、樋口可南子や菊本役だった佐々木すみ江がよかった。

大奥に入ってからは徳川家定役の堺雅人、滝山役の稲森いずみ、本寿院役の高畑淳子がはまり役だったし存在が際だった。また後半になってからは庭田嗣子役の中村メイコの存在が光った。

全体を通じて登場した西郷隆盛役の小澤征悦、大久保利通役の原田泰造も頑張っていた。特に小澤征悦は主・島津斉彬が亡くなった後、虚脱した西郷隆盛の姿を、虚ろで力のない目で上手く演じきった。

音楽はシーンごとにマッチした曲を上手く作曲しきったと思う。

軽妙な音楽が流れると、誰かが何かをしでかしそう(その多くが篤姫本人であったりした)であり、しんみりした音楽だと何か悲しい出来事などが起きたのではないかとすぐに感じ取れた。

ドラマにおける音楽の果たす役割を十二分に証明したものとなった。これはとてもすばらしいことである。

惜しむらくは、原作が原作というよりも参考文献的なものでしかなかった点であろうか。

とにもかくにも、一年間楽しませてくれた俳優陣と作曲家に感謝である。

ありがとう!!!

別記

総集編も終わり、これで本当に「篤姫」が終わった。

前回の感想で書き忘れたことがあったので、追記しておく。

書き忘れたのはオープニングの映像のことである。

デジタルでご覧の方ならよくご存じだと思うが、今回のオープニング映像はめちゃくちゃ綺麗だった。

グスタフ・クリムトを意識した映像は、今年の放映された映画やドラマのオープニングのなかで屈指なものになったのみならず、この数年の中でも屈指の綺麗さであったろうと思う。

このオープニングの出来栄えの良さも「篤姫」を大きく引き立てたのは間違いない。

さて、来年の大河ドラマ「天地人」がいよいよ目前に迫ってきた。

今年と同じように好評を博すのか、今から楽しみである。

篤姫をめぐる人物関係

この項はNHK大河ドラマ「篤姫」登場人物を参考に作成しています。
太字は小説「天璋院篤姫」(著:宮尾登美子)における主要人物です。

天璋院篤姫(於一(おかつ)、敬子(すみこ))
幾島…篤姫付き老女。
唐橋…御台所(篤姫)付き女中の総帥。
滝山…大奥御年寄り。大奥総取締役。家定、家茂、慶喜の三代に仕える。
重野…後に中臈。
-三芳
-さと姫…天璋院の愛猫
徳川家定(家祥)…篤姫の夫。十三代将軍。
-本寿院…徳川家定の生母。
-梅野井…将軍付き上臈年寄
-お志賀(原作では「おしが」)…徳川家定の側室。
徳川家茂(慶福)…十四代将軍
-実成院…家茂生母
-小倉…家茂付き年寄
-碓井…中臈
和宮…徳川家茂に嫁ぐ。孝明天皇の妹。篤姫の義嫁。
-観行院…和宮の実母。
庭田嗣子…宰相典侍。和宮付きの女官。
土御門藤子…和宮の上臈頭
徳川慶喜…徳川第十五代将軍。
-徳川斉昭…水戸徳川家の前藩主で、徳川慶喜の父。
徳川家達(田安亀之助)…徳川宗家十六代目。
(薩摩藩)
島津斉彬…薩摩藩藩主、島津家二十八代。
英姫…斉彬の正室。
-向井新兵衛…御側御用人
-堅山武兵衛…用人
-広川…薩摩鶴丸城の老女。
-小の島…三田藩邸御年寄。
-藤野…三田藩邸老女
-関勇助…儒学者
-西郷吉之助(吉兵衛、隆盛)…明治維新最大の功労者の一人。
島津忠剛…篤姫の実父。島津御一門四家の一つ、今和泉島津家の当主。
お幸…篤姫の生母。
-島津忠敬…篤姫の三兄。二人の兄が若くして病死したため、のちに今和泉島津家十二代当主。
於才…妹。(ドラマには登場せずか?)
菊本…篤姫の、今和泉家時代の養育係。
-しの
-小松帯刀(肝付尚五郎)…若くして薩摩藩家老となる。(原作には登場せず)
-お近…小松帯刀の妻。小松清猷の妹。(原作には登場せず)
-肝付兼善…小松帯刀(肝付尚五郎)の実父。薩摩藩の名門・肝付家の当主。(原作には登場せず)
-小松清猷…小松帯刀(肝付尚五郎)の義兄(原作には登場せず)
-大久保正助(利通)…明治維新最大の功労者の一人。(原作には登場せず)
-大久保フク…大久保利通の母。(原作には登場せず)
-有馬新七…寺田屋騒動で死亡。(原作には登場せず)
-島津斉興…薩摩藩藩主、島津家二十七代。
-お由羅…斉興の側室
-調所広郷…島津家の家老。
-島津久光(忠教)…島津斉興の五男。
(京都)
-孝明天皇…和宮の兄。
-近衛忠熙…五摂家筆頭、近衛家当主。
-村岡…右大臣近衛忠熙に仕える老女。
(幕府関係)
-阿部正弘…老中首座。
堀田正睦…老中
-井伊直弼…大老。
勝海舟…幕臣。
(その他の登場人物)
-坂本竜馬…幕末の志士。(原作には登場せず)
-お龍…坂本龍馬の妻。(原作には登場せず)
-ジョン万次郎…元土佐の漁師。(原作には登場せず)

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