塩野七生の「イタリアからの手紙」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

1972年に刊行されたエッセーだが、今読んでも面白く読める。エッセーは同時代性が高すぎるので、時代を過ぎてしまうと読むに耐えないものが多い。

それを考えると希有なエッセーであると思う。塩野七生のエッセーは概して面白い。小説家としてもエッセイストとしても一流であることを証明している。

本作は、当時のイタリアの雰囲気が良く伝わってくる。そして、とてもイタリアが美しく感じられるのだ。塩野七生はイタリアを美しく書いているわけではないのだが、それでも美しく感じられるのだ。

このエッセーを読むと、優しくも木訥とした若しくは牧歌的なイタリアの映画を見たくなってくる。少しでも、イタリアの雰囲気に浸りたくなってくる。

【ピックアップ】

「皇帝いぬまにネズミはびこる」

当時のローマの下水道の状況が垣間見える。最後に下水道の大掃除をしたのは、皇帝がいなくなって以来という事らしい。つまり古代ローマ帝国が崩壊して以来ローマの下水道は大掃除をしていないというのだ。

また、ここではローマっ子のローマの呼び方、そしてヴァティカン公国の車のナンバー・プレートの呼び方が皮肉が効いていて面白い。

「通夜の客」

クリスティーズという当時世界一取引高の多い競売屋のことを、ある人の通夜を舞台に書いたもの。ある意味、真の死の商人なのかも知れない。

「トリエステ・国境の町」

まだ東西冷戦の真っ直中。そして冷戦が始まってから半世紀も経っていない。イタリアとユーゴ・スラヴィアの国境の町トリエステ。トリエステにはユーゴ・スラヴィアに縁のある人びとがいる。東西冷戦の影を感じるエッセー。

「ナポリと女と泥棒」「ナポレターノ」

ナポリの人間をテーマにしたエッセー。ナポリの人間は信用ならないというのを自身の体験を交えておもしろ可笑しく語っている。

「マカロニ」

冒頭に有名な逸話を持ってきている。イギリスのBBC放送のエイプリル・フール恒例の悪戯なのだが、スパゲッティを”スパゲッティのなる木”から収穫している様子を放送したのだ。

その放送の後、”スパゲッティのなる木”はどうやったら入手出来るのかという、嘘のような電話が殺到したという。このエッセーはこの事を主題にしたのではないのだが、現在の日本で、このBBC放送の様な悪戯を放送したら、信じ込む人間が結構いそうな気がする…。

さて、「マカロニ」では、スパゲッティ・ミラネーゼ(ミラノ風スパゲッティ)についても語られている。スパゲッティ・ミラネーゼは存在しないのである。

同じ様な事は他にも数多くある。例えば、ウィンナー・コーヒー(ウィーン風コーヒー)もそうである。ウィーンに行ってもウィンナー・コーヒーは存在しない。観光に行った時に恥ずかしい思いをしないように…。

本書について

塩野七生
イタリアからの手紙
書かれた時期:-
刊行:1972年6月
新潮文庫 約二二五頁

目次

カイロから来た男
骸骨寺
法王庁の抜け穴
皇帝いぬまにネズミはびこる
永遠の都
M伯爵
仕立て屋プッチ
通夜の客
ある軍医候補生の手記
アメリカ・アメリカ
地中海
ヴェネツィア点描
イタリア式運転術
村の診療所から
未完の書
トリエステ・国境の町
ナポリと女と泥棒
ナポレターノ
カプリ島
マカロニ
シチリア
マフィア
友達
シチリアのドン・キホーテ

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