佐藤雅美の「八州廻り桑山十兵衛 第5巻 花輪茂十郎の特技」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

★★★★★★★☆☆☆

今回も色々な騒動が巻き起こり大変な桑山十兵衛であるが、もっともこたえるのは、新婚早々の登勢が実家に戻ってしまったことである。一体なぜ?

最近では「桑山に過ぎたるもの二つあり、大業物に上総の女房」と言われるようになった。大業物は白川街道勢至堂宿で手に入れた「勢至堂」と名付けた無名の業物。上総の女房とは登勢のことで、半分嫉妬が入った言葉である。

今回登勢が実家に戻ってしまったのは、この嫉妬というのが多分に働いている。

さて、この「桑山に過ぎたるもの二つあり、云々」というのは、ご存じ徳川家康が言われた言葉をもじっているのはすぐわかること。

すぐにでも登勢を連れ戻しにいきたい十兵衛だが、そういうときにこそ厄介な話しが持ち上がり、さらには逆方向へと送り出されてしまう。

それが続くとさすがの十兵衛も堪忍袋の緒が切れそうになって…。

「博打打ち三之助の祟り」の「六経正義註疏」に絡んで登場した井上河内守正之の孫・井上河内守正甫。

この井上河内守正甫は「密夫大名」として知られ、そのことを佐藤雅美氏は「槍持ち佐五平の首」に収録されている「色でしくじりゃ井上様よ」で取り上げられている。

短編なので一読しておくと、この箇所の話がより面白く読めると思う。

足尾銅山に足を向けた桑山十兵衛。ちょうどこの時期の足尾銅山は休山であり、復活するのは明治を待たなければならない。

銅一トンを精製するのに木材にして五、六トンの薪炭を必要とするという。つまり大量の木が必要となることがわかる。

これがもとで朝鮮半島の多くの山が禿げ山になったといわれている。日本でも古来から精製は行われてきたが、日本の気候が多雨ということもあり、森林の回復力が強かったのが幸いした。

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内容/あらすじ/ネタバレ

互いに新婚ではない。桑山十兵衛は登勢と熱海へ旅行することにし、廻村の仕事を加賀美徳蔵がやってもいいということになって、十兵衛は加賀美の代役として評定所に詰めることになった。加賀美は粂蔵と五兵衛を十兵衛から借りることにした。

だが、旅から旅への生活が無性に懐かしくなっていた。半年の約束が一年と延び師走になってしまった。

龍宝寺ノ三之助という博打場を仕切る親分が捕まった。博打は大名屋敷の中間部屋などで行われることが多く、容易には踏み込めない。話を聞いてみるとこうだ。

火盗改に松浦忠右衛門というのがいた。火盗改というのはたいていが火の車。この屋敷で三之助は博打場を開いていた。この後に奥山主税助が火盗改になり、これにも三之助は取り入った。

これを知った老中が加役の矢部彦五郎に捕縛を命じた。そして半分騙し討ちのようにして捕まえたのだ。

組頭の真田九右衛門が十兵衛を呼び出した。矢部彦五郎が手当たり次第に捕まえたので猫の手も借りたい状況になっている。一方で手のかかる一件があるという。

小山田乾堂という医学をかじった学者がいる。ここに相模の本牧の向こうに金沢文庫という書庫がある。ここから散逸した書に「六経正義註疏」全三〇巻がある。

内十卷はこの度揚屋に預けられた南の定廻り鈴木丈左衛門が所持しており、残りをさる大名が所持していることがわかった。

小山田は早速小伝馬町に出かけ、鈴木丈左衛門に御上に譲れと言ってみたが、売ってしまったという。

そして八州の誰かにタダで取り戻せと言う話が回ってきた。

桑山十兵衛は常州笠間の八万石牧野越中守の城下町に向かった。「六経正義註疏」十巻を購入したのが岩井屋茂左衛門という造り酒屋の主である。

この主が十兵衛には会おうとしなかった。廻村をしてこれほどの無礼を受けたことはない。が、この岩井屋の意向が十兵衛に伝えられてきた。

残りの二〇巻を持っている大名家が茂左衛門に無償で引き渡され、公儀から茂左衛門が三〇巻を献上した旨の書付をもらえるなら考えないでもないという。

十兵衛は江戸に戻った。そして四ヶ月が経つころに、さる大名が二〇巻を岩井茂左衛門に引き渡すのを承知したという。

加賀美が江戸詰めに戻り、十兵衛はようやく廻村に出かけることになった。足は野州足尾の銅山に向かっている。銅山は鉱脈を掘り尽くした老山になり、文化十四年(一八一七)に休山に追いこまれた。

代官山本大膳の手代岡本三右衛門が十兵衛を待っていた。岡本は能吏で、何故足尾にいるのかがいぶかしい。聞いてみると、山本大膳の元締の一人、塩谷三郎兵衛からの指示だという。

この度新たな鉱脈が見つかった。だが採算がとれるかどうか怪しい。そこで塩谷は足尾でそのまま銭に鋳たらどうかと考え、やらせてみることにした。

だが、この塩谷から突然待ったの話が来た。すでに足尾では鋳はじめている。塩谷は岡本に責任をなすりつけようとしているらしい。

十兵衛が家に戻ってみると、登勢が里へ帰ったという。旅に出ている間に下総佐原のとくが訪ねてきたことがあったらしい。十兵衛も覚えがないわけではない。

足尾の手代・岡本三右衛門が出府してきた。どうやら揉めているらしい。

その岡本が桑山十兵衛の名を出したために、十兵衛は山本大膳の屋敷に行くことになった。

登勢を迎えに上総の白旗村へ向かおうと考えた十兵衛だが、加賀美から使いが来た。伊香保で悪党ものが拐かしをしたという。まるで方向が違う。

拐かしたのは弥三郎。弥三郎は伊香保の町に目をつけていたのだという。伊香保を仕切っているのは権蔵である。

伊香保の地面はすべて大屋十四家が所有している。その下に門屋というのがおるが、門屋は大屋と主従関係にないと反発している。弥三郎の家も門屋だったという。

こうしたことが背景にあるのではないかと新藤甲子七は十兵衛に語った。

元締の津村作右衛門は破免願いを出した竜舞村御料の検見をしに向かった。不作と言うほどのことはなく、なぜ破免願いを出したのかが不思議である。

桑山十兵衛は伊香保から戻ってきて御奉行の曾我豊後守のところで津村作右衛門からの話を聞くことになった。
ことは博打の話しで、これが元で破免願いの騒動になっていた。

佐原の向こうの津宮という河岸に仙蔵という破落戸がいる。これが桑山十兵衛の名を出してあくどいとことをしている。さらに「とく」の名が出てきたから十兵衛はたまらない。これを同僚の松崎安兵衛が聞きつけている。

十兵衛は佐原に向かって、とくと決着をつけなければならなくなった。

ところが、佐原に着いてみて聞き回ると、十兵衛を訪ねてきたのは偽者のとくではないかという気がしてきた。とすると、一体誰が、何のために?もしかして敵は自分をおびき寄せるためにとくの名を騙ったのか。

登勢に絡んで十兵衛を快く思っていないのは、実父の白旗源吾左衛門、旗本の堀主水、元御用御側の戸田信濃守だ。

案の定、十兵衛を襲ってきたものがいた。四人の内一人を捕まえることができた。男は花輪茂十郎と名乗った。十兵衛は花輪茂十郎に襲った連中のことを調べさせ、知らせることを条件に放った。

十兵衛は登勢の実家を訪ねた。実父の源吾左衛門が現われ、登勢は離縁されたつもりでいると言いはなった。

姿を見せず、騙されたと感じていた花輪茂十郎が姿を現し、その意外な特技を披露した。そして、ようやく今回の一連の騒動の背後にある関係が見えてきたのだった。

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本書について

佐藤雅美
八州廻り桑山十兵衛5
花輪茂十郎の特技
文春文庫 約三三五頁
江戸時代

目次

博打打ち三之助の祟り
足尾銅山異聞・足の字四文銭
末恐ろしい悪党
憎まれ口が命取り
津宮河岸で迎えた初雪
見えぬ手がかり
勢至堂宿三人の生き残り
花輪茂十郎の特技

登場人物

桑山十兵衛…関東取締役出役(八州廻り)
登勢…十兵衛の女房
粂蔵…十兵衛の小者
五兵衛…雇足軽
小兵衛
真田九右衛門…組頭
川端三五郎…留役
加賀美徳蔵…関東取締役出役(八州廻り)
曾我豊後守…御奉行
龍宝寺ノ三之助…博打場を仕切る親分
松浦忠右衛門…火盗改
奥山主税助…火盗改
矢部彦五郎…火盗改の加役
小山田乾堂…学者
鈴木丈左衛門…南の定廻り
岩井屋茂左衛門…造り酒屋
露木為右衛門…横目付
井上河内守
岡本三右衛門…手代
山本大膳…代官
塩谷三郎兵衛…元締
村垣淡路守
遠山左衛門尉
とく…下総佐原
弥三郎
権蔵
小暮八右衛門
さち
新藤甲子七
津村作右衛門…元締
黒鉄金之輔…手代
静助
市右衛門
仙蔵…破落戸
庄右衛門…大惣代
勘太郎
花輪茂十郎
白旗源吾左衛門…登勢の実父
松崎安兵衛…八州廻り
堀主水…旗本
戸田信濃守…元御用御側

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