佐伯泰英の「吉原裏同心 第6巻 遣手」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

★★★★★★★★☆☆

シリーズ第六弾。神守幹次郎にとって吉原にきてから初めての旅となる。

旅先は信州。滅多に旅をしない四郎兵衛や新角楼の主・助左衛門にとって、雨が降っていても楽しい旅だが、幹次郎にとっては逃避行を続ける中で味わった雨の冷たさが身に凍みており、その当時の辛さを思い出すようだ。

身代わりの左吉は、吉原に吉原外の暗黒街の動静を伝えるつなぎ役的な人物として、どうやら定着しそうだ。

これは、吉原以外の遊び場と吉原の抗争というのがこのシリーズの中で増えてくることを意味しているのかもしれない。そして、本作では鳴りを潜めている一橋治済との対決においても絡んでくるのだろう。

さて、四郎兵衛らが旅先早々に遭遇する事件。ことは明和の大火までさかのぼるのだが、この明和の大火とは、明和九年二月に発生した火事で、別名を目黒行人坂の大火事という。江戸三大火の一つ。他の二つは、明暦三年(一六五七)の明暦の大火(振袖火事)と文化三年(一八〇六)の文化の大火(芝車坂の火事)である。

二月二十九日に目黒の大円寺から火災が発生した。翌日午後には鎮火したが、死者一万四千七百人の犠牲者を出したという。

明和九年は災害が相次いで起こり、明和九年に因んで迷惑(明和九)などと揶揄され、同年十一月に改元される。

吉原の仕来りで面白かったもの。

甘露梅というものがある。吉原独特のもので、塩に漬け込んだ青小梅の種を取り、その穴に山椒または粒胡椒などを入れ、再び二つを合わせて紫蘇の葉で包み、砂糖や蜜、さらに酒を加えて壺に入れ、二年ほど寝かせ、正月の年玉に贔屓客へ配った。

不思議な味がしそうだ。決して若い人向きの味とは思えないが…。

最後に。この卷まで来てようやく気がつくのは遅いが、題名はシリーズ一巻目を除いて、吉原にちなんだものがつけられているようだ。

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内容/あらすじ/ネタバレ

いずれ菖蒲か杜若と称される二人の花魁、華栴と白妙を抱える新角楼の遣り手おしまが扱き帯で首を括っているのが発見された。おしまは新角楼の所帯を左右するほどの腕利きだという。小判が好きで、働くのが好きという手合いで、とても首を括る女じゃない。ため込んでいたはずの金子も見あたらない。金子目当ての殺しなのか。

神守幹次郎がこの調べをしていると、おしまには子がいるらしいことが判明した。そして、番方の仙右衛門が注目したのは、華栴の振袖新造の百武と近江屋の若旦那一郎太が居続けする廻し部屋だった。

香取神道流津島傳兵衛道場で汗をかいた帰り、幹次郎は身代わりの左吉に会いたくなって馬喰町に足を向けた。そして、おしまの一件を話した。すると、左吉はまだ一幕二幕の芝居が残っているだろうとご託宣した。

おしまは書付を残していたという。自分が亡くなった後の金子の処分を細かく指示したものであった。宛名は新角楼の主・助左衛門と四郎兵衛会所の四郎兵衛宛になっていた。

この際だからと、助左衛門はおしまの残した金子の内、実弟の谷平に分け与える分を自ら届けたいという。この度に四郎兵衛も同行することになり、用心棒として幹次郎が同行することになった。

だが、この旅の直前に、小さな事件が続発した。姉女郎の使いで金策にいった番頭新造や禿が襲われ、金子を奪われるという騒ぎが起きたのだ。しかも、面番所と会所の張り込みの網をかい潜って仕事をしている。

助左衛門と四郎兵衛がおしまの在所信州まで出立する日が来た。幹次郎の他に、新角楼の男衆・風太と山口巴屋の手代・宗吉がそれぞれの主の荷物持ちとして同行することになった。

旅早々に四郎兵衛を狙った人物が出た。八王子横山宿で一家を構える油屋の五郎蔵と名乗った。だが、この五郎蔵は頼まれた仕事だというし、人柄も決して阿漕な渡世人ではないようだ。

やがて、ことは明和の大火までさかのぼることが分かった。そして、風太が連れ去られた…。

おしまの在所についた一行。助左衛門は風太をともないおしまの実弟・谷平のところに書付を見せに行ったが、強欲にもおしまの残した金子は一番近い親族に相談して裁量するのが筋だと言い張った。

谷平の後ろには松代城下で渡世を構える田毎の吉兵衛がおり、その後ろには兄弟分の寝牛の房五郎が控えていることが分かった。

そして、谷平は博打にのめり込み、田毎の吉兵衛の賭場に借財が三十両あり、田圃と家が押さえられていることが判明した。

四郎兵衛ら一行が江戸に戻ってきたのは天明七年の梅雨が明けた頃だった。

帰るなり、廓の内外で引ったくりが流行っていることが判明した。黒幕がいるようだが判明していないという。ついには死者が出た。

四郎兵衛は吉原か会所に対する嫌がらせではないかという。幹次郎は黒幕を浮かび上がらせるために身代わりの左吉を訪ねた。

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本書について

佐伯泰英
遣手 吉原裏同心6
光文社文庫 約三二五頁
江戸時代

目次

第一章 花菖蒲の辻
第二章 蜘蛛道の光
第三章 梅雨の旅
第四章 田毎の蛍
第五章 夏の夢

登場人物

華栴…新角楼の花魁
白妙…新角楼の花魁
おしま…新角楼の遣り手
助左衛門…新角楼の主
おかる…助左衛門の女房
佐蔵…新角楼の番頭
仲次…おしまの亭主
百武…振袖新造
一郎太…近江屋の若旦那
おひさ…切見世女郎
照梅
修次…新地豆腐の小倅
栄次…貸本屋
三四郎…面番所の小者
河畑庸輔
風太…新角楼の男衆
宗吉…山口巴屋の手代
油屋の五郎蔵
馬之助
谷平…おしまの実弟
おみの…谷平の女房
おけい…谷平の娘
田毎の吉兵衛
寝牛の房五郎
翠善…住職
犬塚慎八
お市
野木五郎坐(秋元乗種)
弥の字
佐藤百輔秀信

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