佐伯泰英の「吉原裏同心 第5巻 初花」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第五弾。短編集というか、連作短編集というか。

面白い人物が登場する。身代わりの左吉という。人の身代わりになることを商売としている男である。この身代わりの左吉が本書の中で度々登場する。

この左吉は今後もこのシリーズの中に登場するだろうと思う。というのは、佐伯泰英は一度スポットを大きく当てた人物は滅多に消さないからである。

同じくもう一人、雛菊という振袖新造が登場する。この雛菊は本書では事件によく巻き込まれる。そのシリーズが進む中できっといいことがあるだろう。

さて、陰暦三月朔日。大勢の職人の手により仲之町に桜が植え込まれる。吉原では季節をあらわすために大がかりな仕掛けをする。桜の植え込みなどがそうだ。これも、桜の季節が終わると根こそぎ取り払われるのだそうだ。

吉原の仕来りで面白かったもの。

「心中立て」というのがある。客の心をつなぎ止めるための、客と遊女が行う遊びのようなもの。放爪、誓詞、入墨、切指、断髪、貫肉の六つがある。よく使われるのが誓詞、入墨、切指だという。

誓詞は起請文のことで、年季明けに夫婦になることを誓うもの。この起請文は吉原では七十五枚まで神仏が許してくれると考えられていたそうだ。つまり七十五人とは夫婦の誓いが出来るということだ。

入墨は二の腕や指の間に客の名を彫り込んで最後に命という言葉を加える。

切指は文字通り小指を切ることだが、本当に切ってしまうと商いにならないので、飴細工の指を渡していた。

放爪、断髪、貫肉については本書で語られていないが、断髪は文字通りであろう。遊女が髪を切ってしまうと商売にならない。それだけに髪を切るというのは、その客にぞっこんだということを表現するのによかったのかもしれない。

放爪、貫肉も文字通りだと思う。が、痛そうだ。爪をはがしたり、おそらくは腕や腿を刺すのだろう。

妓楼の主を亡八と呼ぶ。孝、悌、忠、信、礼、義、廉、耻の八つの人の道を忘れるほどに面白い職ということらしい。だが、陰では女郎の泣き叫ぶ声も平然と無視する冷酷非道と利に敏い人間でもあったようだ。

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内容/あらすじ/ネタバレ

天明七年(一七八七)。神守幹次郎は身代わりの左吉という男と知り合う。奇妙な商売からとった異名だそうだ。

その身代わりの左吉と別れ、四郎兵衛会所に顔を出すと、総籬松葉屋の逢染が汀女の塾に顔を出していないという。逆に松葉屋では汀女の塾に行ったというから、大騒動となった。やがて、逢染が首を括った姿で見つかった。

主に聞くと、逢染は客と寝ている間に粗相をしたという。客は笹目英之輔という。そして、これが笹目に��x88る騙りだと主は気がついたが、相手が相手だけに穏便に済まそうとしたらしい。

同じような事件が別の妓楼で起きていたようだ。それを太夫の薄墨が幹次郎に知らせてくれた。

豊後岡藩の中間・足田甚吉が姿を見せたが、元気がない。奉公を解かれたというのだ。豊後岡藩の財政はそこまで追いつめられていた。幹次郎は甚吉の身の振り方を考えるために四郎兵衛会所に向かった。

その後、汀女と供に信一郎とおみねの墓参りに出かけた。そこで一度だけ汀女の塾に顔を出し、身請けされた音葉と出会った。

この音葉と同じ時に吉原に来た青葉が三月ほど前に自死したという。二人は姉妹のように仲がよかった。青葉は太物問屋伊勢辰の番頭忠太郎と入墨を交わす仲だったという。この忠太郎が死体で見つかった。

甚吉が朝早くから幹次郎宅を訪ねてきた。そしてそのまま、久平次が差配する長屋へ引っ越した。

その後、吉原へ幹次郎が出かけると、同心の村崎や御用聞きが意地悪い顔ににやにや笑いを浮かべている。すると、総籬鶴亀楼の振袖新造雛菊がいきなり面番所にしょっ引かれたのだという。

殺しの嫌疑がかかっているのだとか。だが、吉原から一歩も出られない遊女が一体どうやって殺しなどをするのだ?

その頃、文使いの正五郎が帰ってこないと見番頭取の小吉が心配していた。もしやと思っていると、はたして正五郎は雛菊からの文を預かっていたようだ。この文の出し先に蝋燭問屋形屋の清右衛門がいた。

天女池のほとりにある一本の老桜に死装束を着た男女が紐で首を括っていた。女郎は恵比寿楼の小春。相手は蔵前の札差・柿文の手代功吉で、夕べ初めて上がった客だという。何やら裏がありそうだ。

甚吉は新しい生活を順調に始めていた。あとは仕事を見つけることである。

雛菊の事件に絡んで死んだ文使いの正五郎が大金を残していることが分かった。そして、正五郎には娘がいるのだという。だが、この娘には…。

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本書について

佐伯泰英
初花 吉原裏同心5
光文社文庫 約三二〇頁
江戸時代

目次

第一章 いばり組
第二章 初桜
第三章 天紅の文
第四章 桜心中
第五章 葉桜千住宿

登場人物

身代わりの左吉
逢染
笹目英之輔
頭山由太郎
久平次…長屋の差配
音葉(お光)
寛九郎
青葉
忠三郎…太物問屋伊勢辰の番頭
泥亀の竹造…御用聞き
雛菊…振袖新造
正五郎…文使い
清右衛門…蝋燭問屋形屋主
茂蔵…番頭、清右衛門の異母兄
諒庵…医者
鞆世…太夫
熊木山勝五郎
小春…恵比寿楼の女郎
功吉…札差柿文の手代
義左衛門…札差柿文の番頭
市十郎…札差柿文の当主
地蔵の延之助…女衒
おしん
おふね

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