佐伯泰英の「密命 第11巻 残夢-密命・熊野秘法剣」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第十一巻。

今回の敵は、熊野の修験者達。火付けをして、その現場を見た者は必ず殺すという残忍な集団である。そして、紀伊藩下屋敷を火付けする。

紀伊藩といえば、吉宗の出身藩。吉宗に対する怨みがあるというのか?そもそも熊野は紀伊藩と深いつながりがあるはずだ、それなのになぜ?

今回の陰の主役は”力丸”だろう。これほどにクローズアップされ、金杉一家に頼りにされたのは初めてである。

いつもは主の帰宅をワンと吠えて知らせたり、主に甘えたりする姿しか書かれていないが、今回の力丸はなかなか頼りがいがあり、賢い犬である。

佐伯泰英は犬好きなのではないだろうか。力丸を愛情をもって書いているように思われる。

さて、棟方新左衛門にも新生活が始まる。婿入りすることになるが、その婿入り先の主家・細川家は飛び地で領地を持つ一万六千三百石の小名である。

小名ならではの内証の苦しさは、惣三郎が身にしみてわかっている。そこに新参者の棟方新左衛門が加増を受けて仕官することになる。軋轢が生まれない方がおかしい。さて、新左衛門の新生活は順風満帆に始まるのだろうか…。

内容/あらすじ/ネタバレ

享保八年(一七二三)陰暦四月。

手妻の侘助事件の背後でひっそりと別の火付けが進行していた。この火付けは集団で行われているようだ。しかも、幕府騒乱を狙った火付けだという噂が城中で流れているという。

そうした中、荒神屋での火事始末ででた焼け板から火薬の臭いがした。

棟方新左衛門と久村りくとの結納が決まった。そして、新左衛門は久村家に婿入りすることになる。相手のりくは下野国茂木藩一万六千三百石・細川家の江戸屋敷元締格久村護一郎の娘だ。いよいよ仕官となる。

惣三郎はこの時期を逃しては江戸を離れることが出来なくなると思い、鹿島へ行くことに決めた。

その前に、鍾馗の昇平が心配事があるといってきた。それはお杏のことである。というよりも、若頭の登五郎のことである。登五郎が女を作ったんじゃないかとお杏が心配しているらしい…。

惣三郎は棟方新左衛門と鹿島に向かった。鹿島へは冠阿弥の回船長膳丸で行くことになった。千石船だ。

棟方新左衛門の仕えようとしている細川家は下野国の茂木、常陸国の谷田部と離れた土地を領地とする小名である。この小名への仕官に際し、先の大試合での活躍から百石を加増することが決まりそうであった。

鹿島の道場にはこの谷田部から稽古に来ている山田哲平がいた。この加増の話を聞いて顔色を変えたそうだ。

何やら起きそうな気配がある。惣三郎は近隣の所在に詳しい後藤鼓堂を訪ね、茂木領家臣と谷田部領家臣に反目があるかとたずねた。どうやら反目があるようだ…。

惣三郎と棟方新左衛門が江戸に戻ると大変なことが待ち受けていた。

紀伊藩の下屋敷に火付けをした輩がいるという。先の一連の付け火の連中らしい。女中衆が皆殺しという凄惨な現場らしい。

そのことで南町奉行所を訪ねると、大岡忠相は惣三郎を待ちわびていた。そして、紀伊藩下屋敷用人北岡仲助に会えという。探索は時蔵が手伝うことになった。

北岡仲助はただ一人娘が助かったという。だが、あまりの出来事に口がきけなくなってしまっているという。

惣三郎一家が長屋から消えた。飼い犬の力丸も一緒にいなくなった。

一家は飛鳥山の菊屋敷にいた。唯一助かった娘・鶴女の快復をはかってのことである。だが、金杉家の人間に鶴女は心を開かない。その鶴女が心を開いているように見えるのが、飼い犬の力丸だけのように見える。

火付けの一味は火盗黒野分一味と命名された。

惣三郎はむごいようだが、鶴女をおとりにして火盗黒野分一味を誘い出した。そして、現れた一味に、尾張のはなった刺客ではないかとの疑問を投げかけた。だが、尾張の名に反応を示さない。尾張ではないのか?では誰が?

逃げた一味の後を時蔵が追うと、少々厄介なことに熊野の修験者の一団だという。この一団が回向院の境内で熊野の出開帳を行っているようだ。開帳の目玉は、生き神の石突不動だという。これを応援しているのは、寺社奉行の牧野印旛守英成である。

この牧野は一体どういう関係があるのか?

本書について

佐伯泰英
残夢 密命・熊野秘法剣
祥伝社文庫 約三三五頁
江戸時代

目次

序章
第一章 火賊横行
第二章 鹿島出稽古
第三章 隠棲菊屋敷
第四章 力丸の魔力
第五章 熊野の滝勝負
終章

登場人物

久村りく
おすみ
お染
お富…伊勢屋女将
高砂の福次郎…主船頭
山田哲平
後藤鼓堂…元牛久藩の儒者
北岡仲助…紀伊藩下屋敷用人
生駒左ヱ門丞…紀伊藩鑓奉行
鶴女
力丸…金杉家の飼い犬
石突不動
十文字解燵
牛王聖
牧野印旛守英成…寺社奉行
伊勢屋孝右衛門…札差

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