佐伯泰英の「夏目影二郎始末旅 第6巻 下忍狩り」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第六弾

前作では結果的に水野忠邦のふぐりを握った影二郎だが、これがこのシリーズにおいてどう影響するのか…

それはさておき、唐津から戻ってきて、休む暇もなく、今度は東北へ。それも下北半島の恐山に行くことになる。今回一体誰を「狩る」?

前作でも外国の影がちらつく内容だったが、今回もそうである。舞台となる時代が江戸末期ということもあり、沿岸では外国船がチラホラ見られるようになっている。

その内、影二郎たちも海外に行くことになるのかも知れない。

本作で、父・秀信が出世し、大目付となる。

大目付は大名の監察が本務である。万石以上のものを監察するため、待遇は万石以上の扱いを受けることになる。

本作以降、大名家内部の奥に踏み込んだ物語が展開されているのかもしれない。

手始めとなるのは、南部盛岡藩二十万石と奥州弘前藩十万石の確執から始まる本作。

両藩は昔から仲が悪い。それは、弘前藩の藩祖・津軽為信にある。津軽は大浦姓を名乗っていた。元々は南部家の執事職のようなものであったが、それが反旗を翻して、津軽一国の建国に走った。

その後、豊臣秀吉に上手く取り入り、領土を安堵された津軽為信は、江戸時代になってもそのまま領土を安堵されることになる。

南部家からしてみれば裏切り者の家である。

こうした背景があって、さらに口からの禍が元になって騒動に発展する。

こうして、影二郎が登場するのだが、本書は伝奇物語の要素が強い。前作が海洋冒険小説的な側面があったとすると、今回は恐山やイタコ、忍びなどが多く登場し、幻術と対峙する場面などもあり、本格的な伝奇小説である。

ふと思ったのだが、このシリーズの夏目影二郎は、例えば「密命」シリーズの金杉親子、「居眠り磐音江戸双紙」の坂崎磐音の様な超人的な強さというのは持っていないように思う。

もちろん強いのだが、度々危険な状況に陥るし、その危機を脱出するのは自分の力によるものではなく、例えば菱沼喜十郎の弓などのように外的な要因で切り抜けているシーンが多い。

その分ハラハラさせられるのが、このシリーズの特色なのかも知れない。

さて最後に。本作には国定忠治一家も登場する。とてもおいしい役どころである。

内容/あらすじ/ネタバレ

天保十一年(一八四〇)の晩春。

勘定奉行の遠山金四郎が北町奉行に出世し、名を遠山左衛門尉景元と改名しようとしていた。そして、程なくして父・秀信も大目付および道中奉行の兼帯となり、出世した。

そうした喜ばしい出来事がある中、影二郎は秀信を送っている最中に事件に巻き込まれる。それは、一人の巫女を大人数で襲っているのだ。どうやら、襲っているのは津軽弘前藩に関係があるようだ。

この争いの中で、影二郎は巫女からあるものを渡されていた。

…影二郎は浅草弾左衛門を訪ね、オシラサマにまつわる話を聞く。そして、影二郎が弾左衛門に示したのは、黒オシラというもので、相手を呪い殺すためのものだという。そうしたイタコがおり、黒イタコと呼ばれているという。

…影二郎はおこまとあかを従え、奥州路を下ることになった。

そして、途中、南部藩の南部利済が何者かに呪われ、病に倒れていることを聞きつける。途中で藩主が頓死して困るのは、家臣と藩民である。影二郎は、呪っている輩をあぶりだして、利済の命を助けた。

こうした不穏な輩が蠢く旅の中、国定忠治一家と出会い、妖怪鳥居も動いていることを知る。妖怪鳥居が触手を伸ばすような金のなる木があるというのか。それが南部になければならぬ。一体何なのか?

今回の旅は、まだ老中・水野忠邦の胸の内が決まらない中から始まっている。おっつけ菱沼喜十郎が追いついてきて、その意思が伝えられるはずである。

その喜十郎が追いつき、今回の事件の発端が知れた。今回の暗闘は口の禍から始まったことであった。そして、水野忠邦からの命は非情なものであった。

…どうやら、南部はあらたに金を手に入れたようだ。だが、影二郎が途中で出会った山師からは、南部に新しい金脈が見つかったという話はないという。なら、一体どういうことなのか?

それは、影二郎の手元には一枚の金貨に手がかりがあるのかも知れない。異国の金貨である。

本書について

佐伯泰英
下忍狩り
光文社文庫 約三八五頁
江戸時代

目次

第一話 大川巫女殺し
第二話 奥州呪われ旅
第三話 中尊寺憤怒行
第四話 中津川幻夢舞
第五話 恐山花降ろし
第六話 現世火焔地獄

登場人物

小才次
三吉
権藤晋一郎…盛岡藩道中方先乗り差配
毛馬内式部大夫
鬼柳丑松…金山奉行支配下
南部利済
鬼柳梅次郎
志波忠満…次席家老
孜々邨譚山入道
根雪
地嵐
吹雪
時雨
宝坂連角
萬祭奥院
岩木山凸八
岩木山凹助
法源新五郎
燵村左五平
幕内権太左衛門

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