佐伯泰英の「夏目影二郎始末旅 第11巻 秋帆狩り」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第十一弾

題名の「秋帆狩り」をみて、えっ?影二郎が高島秋帆を狩るのか?と思ってしまいそうだが、そうではない。この「狩る」は、影二郎が「狩る」のではない。では一体誰が…

最近はずっとあかが登場する。賢く頼もしいあかだが、次のような場面はクスリと笑えてしまう。

『「主従で評判がよくないな」
影二郎が呟くと、あかが上目遣いに見上げた。
「あか、人を上目遣いに見るのはよくないぞ、そなたに小馬鹿にされておる気が致す」』

実際に小馬鹿にされているかどうかはさておき、影仕事を続ける影二郎は何のために剣を振るうのかと自問するようになる。

政治の裏を知り、世界の潮流も見えてきている影二郎にとり、国内での権力争いは些末なことでしかない。それよりも他に目を向けるべきことがあるはずである。

剣を振るううちに芽生えてきた思いであろう。

だが、何の権力も持たない影二郎にとり、出来ることといえば、じじ様やばば様、若菜を守るために剣を学び、振るうことだけである。それ以上のことは御城の連中が考えればよいこと。

こう割り切るしかないのだ。

今回の舞台となる伊豆韮山。

幕府は関八州に十八の直轄領。十八人の代官をもっている。最も有名なのが、伊豆韮山の江川家で、鎌倉時代から続き、伊豆の代官を世襲する家である。

当初の支配地は武蔵、相模、伊豆、駿河にまたがる八万石。これが江川太郎左衛門英龍の代に一万石を加え、さらに甲斐の十八万石を預かることになり、都合二十七万石の代官となる。中位の大名の領地を有することになる。

これに比すると驚くのが幕臣としての禄高。わずか百五十俵という。

さて、本作で新たな登場人物がチラホラ見かけられるようになってきた。あらし山に新たな仲間が加わり、鳥居耀蔵が惚れ込んでいるという三矢お軽が登場する。

また、前作で遠山左衛門尉景元の北町奉行へ異動することになった牧野兵庫は影同心として遠山の直属となるようだ。これで、牧野兵庫も影二郎たちの「始末旅」に参加するようになるのかもしれない。

ちょいとした豆知識だが、現在の多摩川の下流域は六郷川と呼ばれていた。本書でも登場するが、川崎宿のあたりは六郷川である。

この六郷川を渡るには渡しを使わなければならなかったが、それは今の京浜東北線の通るあたりにあったようだ。
ちなみに、六郷橋という橋が架けられていた時期もあったそうである。

物語はいよいよ佳境へさしかかりそうだ。ここから鳥居耀蔵の反撃が始まる。

内容/あらすじ/ネタバレ

江川太郎左衛門英龍が影二郎を訪ねてきた。内密の相談があるようだった。

その相談とは、高島秋帆を守って欲しいというものだった。またぞろ南町奉行の鳥居耀蔵が動きだし、高島秋帆に狙いを付けたという。影二郎はこれをすぐに承諾した。

高島秋帆は鳥居に居場所を悟られないように住まいを転々としている。そして、この度伊豆へ行くことになっている。だが、伊豆行きを秘して、高島秋帆は長崎に戻るということにするそうだ。この道中での守りも影二郎はすることになった。

…湯屋で影二郎は国定忠治に出会った。宿敵玉村の主馬を殺った忠治は、ますます八州廻りに追いつめられることになるのだが、都度都度ねぐらを狙われ、それがあまりにもおかしい。伯父に小斎の勘助というのがいるが、どうもこれが八州廻りに寝返った節がある。影二郎にそれを調べてもらえないかというのだ。

影二郎はその代わりに鳥居耀蔵の弱みを探ってこいという条件を出す。

鳥居の弱みを知る可能性があるのは、一人には前の南町奉行の矢部駿河守定兼である。そして、三矢お軽。

…玉之助が現れて、中村座の勘三郎が鳥居耀蔵の手下に連れて行かれたという。この間の市川団十郎に続いて、中村勘三郎まで失ってしまっては、歌舞伎はお終いである。

この騒動の中で、影二郎はかつて士学館の虎と呼ばれた兄弟子・串木野虎之輔を見かけることになる。

…影二郎は高島秋帆一行とともに急遽伊豆韮山へ行くことになった。この後を鳥居耀蔵の配下が追いかけてきていた…

本書について

佐伯泰英
秋帆狩り
光文社文庫 約三二〇頁
江戸時代

目次

序章
第一話 朝顔売りの姉弟
第二話 士学館の虎
第三話 死者の山
第四話 種子島と大筒
第五話 双子剣客

登場人物

高島秋帆
下曾根金三郎信敦
万代修理之助
万代おかよ
万代五月…修理之助とおかよの母
斎藤弥九郎
園田平八郎…師範
玉之助
三矢お軽
三矢春太郎
三矢秋太郎
串木野虎之輔
幡谷籐八…南町奉行の内与力
高野左中…南町奉行の内与力
小斎の勘助…国定忠治の伯父

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