佐伯泰英の「夏目影二郎始末旅 第1巻 八州狩り」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

★★★★★★★★☆☆

シリーズ第一弾

浅草弾左衛門から贈られた渋を塗り重ねた一文字笠。内側には梵字で「江戸鳥越住人之許」と書かれている。

無紋の着流しに、身には両裾に二十匁(約七十五グラム)の銀玉を縫い込んだ南蛮外衣を纏う。

腰には南北朝期の鍛冶法城寺佐常によって鍛えられた大薙刀を刃渡り二尺五寸三分(約七十七センチ)のところから棟を磨いて、先反りの豪剣に鍛え直した太刀をたばさんでいる。

これが夏目影二郎である。

本作の副題は「夏目影二郎赦免旅」

この後に続くシリーズは基本的に「夏目影二郎始末旅」(第二弾は危難旅)であり、本書のみが「赦免旅」である。

影二郎は凶状持ちで、本来なら遠島に流される身であった。それが、ある事情により牢を出されて、影仕事をさせられることになる。その代わりに、赦免となるのだ。そのため、副題がこうなっている。

夏目影二郎の人物設定が、上記のように、凶状持ちであり、そして無頼の徒の生活もしたことのあるため、一種のアウトロー的な要素がある。裏の世界の人間たちにも知己が多いというのも、このシリーズの特徴かも知れない。

だが、このシリーズがピカレスク小説かというと、ちょいと微妙な気もする。というのも、影二郎が命を受けるのは、権力側からであり、影二郎が自発的に行動を起こすわけではない。

影二郎の受けた命を遂行するために、様々な人物たちの助けを得、この助ける人々の中に、ピカレスク小説の主人公になるような人物たちが多いということである。

もちろん、影二郎やその仲間が「狩る」のは、悪人ばかりなのだが、その「狩る」対象というのも、一つの特徴がある。それは、幕府体制に寄生して旨い汁を吸おうとしている輩である。

そのため、極めて現代的な一面がテーマになっているともいえる。なぜなら、現在でいえば、影二郎が「狩る」のは腐敗した官僚といった感じになるだろうから。

このシリーズが人気あるのは、こうした現代的な側面があるためなのかも知れない。

さて、第一作目で「狩る」のは通称・八州廻り。

町奉行、火付盗賊改方と並んで、江戸後期において治安を担当した組織だが、担当地域が江戸を除く関八州。だが、早い時期から腐敗があったという組織体制だったようだ。

この腐敗した八州廻りを「狩る」のが今回の影二郎の仕事だが、八州廻りにも、腐敗しきった者ばかりでなく、世の不平等を嘆き、とんでもないことを考える者がいる…。

一体どんなことをやらかそうとしているのか?それが、本書の読みどころでもある。

最後に、同じく八州廻りを扱い、八州廻りを主人公としたシリーズを紹介。読み比べると面白いと思う。佐藤雅美八州廻り桑山十兵衛」シリーズである。

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内容/あらすじ/ネタバレ

天保七年(一八三六)の五月末。

浅草の香具師の元締・聖天の仏七を殺して牢内にいた夏目影二郎が牢から出された。連れて行かれた先には、十数年ぶりに合う父・常磐豊後守秀信がおり、横には若菜という娘がいた。

影二郎は萌のために聖天の仏七を殺すことになるのだが、その萌の妹が若菜である。

久方ぶりにあった父・秀信は、勘定奉行に任命されたという。しかも、公事方で関東取締出役を任されたという。関東取締出役とは通称八州廻りと呼ばれる。

就任して以来、秀信は腐敗しきった八州廻りの行状を調べたという。そして、その中でも悪質な六人の名を影二郎にみせ、助けてくれないかという。

名が出たのは峰岸平九郎、尾坂孔内、火野初蔵、数原由松、足木孫十郎、竹垣権之丞の六人である。

そして、問題はこの六人の中に、国定忠治と結託して何かを起こそうとしている者がいるという。

まず、赤木山中に作られた砦に一人の八州廻りを派遣するので、何が起きるのかを見定めよという。そして、六人の八州廻りの罪が明らかなら、始末せよという。

…利根の河原で、影二郎は息絶えた三匹の兄弟犬に囲まれ、弱々しく泣いている子犬を拾った。名を「あか」と付けた。

影二郎は、途中でみよという娘をたすけ、この娘を送り届けながら、赤木の山を目指した。

…赤木の砦が落ち、国定忠治一家もちりぢりになって逃げた。影二郎は国定忠治の足取りを追いながら、八州廻りの一人一人を確かめ回っていく。

そして、影二郎は、国定忠治を追っている内に、二宮金次郎や藤田東湖といった人物との接点が浮かんでくる。
一体、国定忠治は何をたくらんでいるのか?そして、国定忠治と結託しているという八州廻りは誰なのか?

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本書について

佐伯泰英
八州狩り
光文社文庫 約三五〇頁
江戸時代

目次

第一話 炎上赤木砦
第二話 日光社参
第三話 血風黒塚宿
第四話 八州殺し
第五話 水府潜入
第六話 決闘戸田峠

登場人物

峰岸平九郎…八州廻り
尾坂孔内…八州廻り
火野初蔵…八州廻り
数原由松…八州廻り
足木孫十郎…八州廻り
竹垣権之丞…八州廻り
国定忠治
蝮の幸助
荒熊の千吉
銀煙管の卯吉
傘屋の参次
ちえ
みよ
しず女…鳥追い
勢右衛門…七里の名主
与一
潮五郎
二宮金次郎
阿字ヶ浦の木兵衛
荒天の猪平
藤田東湖
さや

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