佐伯泰英の「鎌倉河岸捕物控読本」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

鎌倉河岸捕物控を楽しむための特別企画本。また、特別篇として短編が収録されている。この短編は「埋みの棘」につながる内容となっている。

佐伯泰英のインタビューが収録されているのも嬉しいところ。聞き手は細谷正充氏。

様々なところで語られているが、佐伯泰英の時代小説最初の作品「密命」や「瑠璃の寺」は連作を意識して書かれたものではない。他のシリーズの多くもそうである。

だが、この「鎌倉河岸捕物控」は最初から連作を意識して書かれていたようだ。

江戸時代の青春グラフィティみたいなものにしたかった。だから、若い十代の三人の若い衆が自分の居場所を見つけて成長していく過程を描けたらという構想が出来たのだそうだ。

そして、狂言回しの舞台が必要だと思い、「江戸名所図絵」で知った豊島屋をそのグランドホテルにしようと考えたそうだ。ただ、まさか豊島屋が現存しているとは考えていなかったようだが…。

なるほど、それで、豊島屋の清蔵が狂言回しの役になり、最近ではすっかり「金座裏の講釈師むじな亭亮吉師匠」が板に付いてきた亮吉も狂言回しの役として重要な役割を担っていることが頷ける。

時代小説についての見解も興味深い。

佐伯泰英は時代小説を書こうとする時、現代から物語を考えるそうだ。

先達は漢文の素養があり、一次資料(史料)を読み、江戸の空気を肌で承知していた。例えば岡本綺堂なんかがそうである。

一方現代の時代小説作家はその空気を知らない。そこで、一次資料が読めない作家が時代小説を書こうとした時に立つ位置はどこかという問題が起きる。

そのため、現代から物語を考えるのだという。

だから、必要最低限の時代考証や時代の知識は入れるにしても、そこにこだわるということはしないのだそうだ。

こうしたところは少なからず他の作家も抱えている問題なのだろうと思う。時代小説を牽引する作者が語るだけに言葉の重みがあるように思う。

さて、鎌倉河岸捕物控の登場人物の中で、亮吉の立場というのが一番難しいと思っているのは、どうやら作者も同じのようだ。

逆に、書いていて一番楽しいのは亮吉だともいっている。

その作者の思いが伝わるのだろうか。私などは三人の中で亮吉が一番好きである。

あと、金座裏の岡っ引き。これは完全な創作だそうだ。くれぐれも、金座裏(現在の日本銀行本店すぐそば)を探さぬようにということなのかしら。

探さぬようにとは逆に、探してくれといっているのが付録の地図。これが非常に便利だ。

金座裏の位置はもちろんのこと、船宿綱定、豊島屋、しほの長屋、むじな長屋、彦四郎の長屋、松坂屋の位置などが記されている。

松坂屋などは、永代通りと中央通りの交わるところのようだ。日本橋のすぐそばということになる。

豊島屋はJR神田駅の近くだが、それよりももう少し神田駅に近いところで、ちょっと南よりの龍閑橋交差点の所に綱定があったのがわかる。現在は龍閑川は埋め立てられてなくなっている。

しほの長屋やむじな長屋はJR神田駅からJR秋葉原駅までの間くらいにあったようだ。

個人的には、数多くある佐伯泰英のシリーズものの中で、この「鎌倉河岸捕物控」が最も長いシリーズになるのではないかと思っている。

というのは、他のシリーズは明確な主人公がおり、この主人公の役割が終了すればシリーズも終わるという面がある。

だが、この「鎌倉河岸捕物控」は”場所”が主人公であるため、代々の”宗五郎”と手先達が活躍する機会が与えられる。その意味では、江戸が終わり明治になるまで物語が続いてもおかしくはないのだ。

内容/あらすじ/ネタバレ

鎌倉河岸捕物控特別篇「寛政元年の水遊び」

寛政元年(一七八九)夏。

鎌倉河岸裏のむじな長屋の九つ半(午後一時)を過ぎた頃合いに、十歳の亮吉、彦四郎、政次の姿があった。

彦四郎が綱定の猪牙に乗せてもらって見つけた場所に行くことになっていたのだ。場所は水戸屋敷のすぐそばの水場だ。

三人が水遊びをしていると、人の気配が近づいてきた。慌てて隠れる三人。現れたのは旅支度の二人である。

二人は半澤という武家を待っているようだ。そして藩主の書付を道中嚢に入れているらしい。

やがて、半澤が現れたが…

登場人物

亮吉
彦四郎
政次
富田新吾
三村五郎次
半澤

本書について

佐伯泰英 著・監修
「鎌倉河岸捕物控」読本
収録:鎌倉河岸捕物控特別篇「寛政元年の水遊び」
ハルキ文庫 約二一五頁
江戸時代

目次

「鎌倉河岸捕物控」江戸関連地図
「鎌倉河岸周辺」地図
「日本橋周辺」地図
鎌倉河岸捕物控特別篇「寛政元年の水遊び」
佐伯泰英インタビュー:鎌倉河岸捕物控を語る
鎌倉河岸捕物控:登場人物紹介
「江戸の水運」地図
「川越舟運」地図
豊島屋を訪ねる
鎌倉河岸捕物控シリーズ:全作品解説 細谷正充
佐伯泰英時代小説:シリーズ別解説 細谷正充
鎌倉河岸捕物控:年表
コラム:
江戸の商売
江戸のイベント・娯楽1
江戸のイベント・娯楽2

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