佐伯泰英の「鎌倉河岸捕物控 第11巻 代がわり」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第十一弾。

題名を見て、とうとう宗五郎が隠居して政次が金座裏の親分になるのか、すると、この作品で政次としほが祝言を挙げるのだな、と思ってしまったが、そういうわけではなかった。

が、近いうちにそうした気配になりそうだ。とはいっても、宗五郎が隠居する方のことではなく、政次としほが祝言を挙げる方のことである。

題名の「代がわり」の意味は、後半で川越に行ったときに、それとなく触れられている。

今回は大きな事件が二つの柱となっている。

一つは金貸しの小兵衛殺し。そして、もうひとつは松坂屋の手代卯助が掛取りにいったまま戻ってこないという事件。前のが本作の前半の大きな柱であり、後ろが本作の後半の大きな柱となる。

川越には政次と祝言を挙げるために親戚一同に挨拶へ向かうしほと、松坂屋の手代卯助を探索する政次と亮吉の組が別々に向かっている。

二つの組は川越で再会するのだが、なぜか彦四郎までいる。しほを送り届けに来たのだ。

彦四郎も加わり卯助の探索が続けられるが、ことは川越藩にも関わる事件となり、川越藩の御徒組頭で政次の兄弟子にあたる田崎九郎太や、しほの従姉妹春菜の夫で御目付の静谷理一郎、町奉行の篠崎與兵衛が加わる大規模なものとなる。

こうした物々しい中でも、しほの親戚筋は祝言のことを喜び、一族こぞって金座裏へ押しかけようと楽しみにしている。

なかでも、従姉妹の春菜は身籠もり、幸せいっぱいの中で、是非とも政次としほの祝言には出たいと張り切る。

次作では、川越からの賓客を迎えて、金座裏で盛大な祝言が繰り広げられるのだろう。

内容/あらすじ/ネタバレ

亮吉が油で揚げた菓子芋を一気に大量に食べたために、腹を下してしまい、むじな長屋でウンウン唸っていた。

心配した政次と彦四郎が亮吉を見舞い、その帰りに豊島屋に立ち寄ると、兄妹駕籠の繁三が美扇堂の隠居・好左衛門が吉原の女郎の惚れて居続けをしているという話を聞く。

豊島屋の主・清蔵が縄張り違いだが、富岡八幡宮の船着き場で参詣に来た年寄を餓鬼どもが囲んで巾着を奪って逃げるという事件を見たという。同じ事件が浅草の奥山でもあったようだ。

下っ引きの旦那の源太が腰を痛めて動けない。源太が使っている小僧の弥一が金座裏に現われてそう言った。

この話以外に、弥一は増上寺で参詣に来た年寄を餓鬼どもが囲んで巾着を奪おうとした事件を話し始めた。この事件は結局、餓鬼の一人が匕首のようなもので年寄の胸を抉り、信玄袋を奪い去るという事件になり、年寄は死んだ。

年寄は三橋の小兵衛という金貸しで、ばりばりの現役だ。おかしいのは駆けつけた家族の誰もが悲しんだ様子を見せなかったことである。それどころか、番頭で娘婿の登兵衛は小兵衛が確実に死んだのかを確認したという。

宗五郎と政次は小兵衛から金を借りていた者達をあたっていったが、これといったものは得られなかった。小兵衛には娘のおかる、それに娘婿の登兵衛、そして若い後妻のお銀がいることが分かった。傍目には仲良く見える家族だったという。

この話を聞いて金座裏に戻ると、豊島屋の近くで餓鬼どもが盗みをはたらこうとして、近くにいた彦四郎にとっ捕まえられていた。

病み上がりでフラフラの亮吉が金座裏に出てきた。まだ使いものにはなりそうにない。

餓鬼どもを捕まえたおかげで一連の巾着切り騒ぎが終息したように思えた。だが、餓鬼どもは三橋の小兵衛は襲っていないという。どうやら別口の犯行のようだ。

扇屋美扇堂の主・粂太郎と隠居の女房おふくが宗五郎に相談を持ってきた。好左衛門が居続けをしている蜂須賀萬屋の女郎・ひね文字に、これ以上好左衛門から金子を搾り取るような真似をしないでくれと言って欲しいというものだ。

小兵衛殺しの差配を政次にまかして、宗五郎は亮吉を伴って吉原に出かけた…。

小兵衛の若女房のお銀は近所で娘婿の登五郎といい仲じゃないかという噂が立っている。娘のおかるはおかるで別の男がいるらしい。凄い相関図が繰り広げられていたのだが、どうやらこの身内の誰かが怪しいようだ。

この小兵衛殺しを追いかけている中、政次としほの祝言をいつにするかという相談がなされ、しほの親戚筋に断りを入れるために川越へ行くことになった。

その相談を豊島屋主の清蔵と松坂屋隠居の松六にしたところ、松六が手代の一人卯助が熊谷から川越へと回る掛取りに出たきり戻ってきていないので心配だという。何かの事件に巻き込まれたのか。

小兵衛殺しの一件を早急に片付け、卯助の足跡を追うことになった。

政次と亮吉は熊谷に到着していた。卯助が掛取りに訪れた店を訪ね歩いたが、怪しいところはなかった。

順に卯助の足取りを追っていき、二人は川越についた。しほの故郷である。ここでの卯助の掛取りの相手は味噌油問屋の三丁屋本店である。だが、三丁屋本店は当主の平左衛門の賭け将棋のおかげで潰れたという。

本書について

佐伯泰英
代がわり
鎌倉河岸捕物控11
ハルキ文庫 約三二〇頁
江戸時代

目次

第一話 巾着切り
第二話 腎虚の隠居
第三話 小兵衛殺しの結末
第四話 掛取り探索行
第五話 代がわり

登場人物

園部一馬…医師
三橋の小兵衛…金貸し
おかる…小兵衛の娘
登兵衛…番頭
お銀…小兵衛の後妻
小壺の万蔵
円之助
柳蔵…紙問屋井口屋の番頭
加納助五郎…宮芝居の座長
金春七郎太夫…狂言師
好左衛門…扇屋美扇堂の隠居
粂太郎…美扇堂主
おふく…好左衛門の女房、粂太郎の母
虻八…蜂須賀萬屋の主
ひね文字…蜂須賀萬屋の女郎
橋場の海造
四郎兵衛…吉原会所の頭取
吉次…吉原会所の番方
卯助…松坂屋手代
平左衛門…味噌油問屋三丁屋本店主
おけい
武吉…三丁屋本店手代
落合の寅市…飯能のやくざ
(川越藩)
田崎九郎太…御徒組頭
篠崎與兵衛…町奉行
静谷理一郎…御目付

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