佐伯泰英の「鎌倉河岸捕物控 第1巻 橘花の仇」を読んだ感想とあらすじ

この記事は約5分で読めます。

覚書/感想/コメント

シリーズ第一弾

鎌倉河岸は竜閑橋と神田橋の間の鎌倉町、現在の内神田二丁目あたりのようだ。内神田二丁目はJR神田駅から西側へちょっと行ったあたり。今となっては昔の面影は全くない。

ここを舞台に、しほ、政次、亮吉、彦四郎の若い四人の青春群像が繰り広げられる。

そして、金座裏の宗五郎親分らが活躍するのがこのシリーズ。

最初ということもあり、人物の紹介も兼ねて物語が進んでいく。

今回のメインの主人公となるのは、しほだろう。母の残した紙片。しほの知らない両親の本当の顔。浪人の娘として育ってきたしほは、自分がどこから来たのかを知りたいと思うようになる。

やがて、その事がくすぶっていた昔の事件へ、しほを巻き込んでいくことになる。

このしほだが、絵が好きだった母の影響もあり、絵を始める。その絵が、人相書きという思わぬ形で金座裏の宗五郎らを助けることになる。

ちなみに、しほの奉公する「豊島屋」だが、現在もあるお店である。

その宗五郎。古町町人の金座裏の宗五郎は御城に一番近い岡っ引き。

古町町人とは芝口から折違見附の間の町屋に幕府かが開かれた時から住む町人のこと。

中でも、角屋敷に住む者は御目見屋敷と称して、年賀、将軍宣下、将軍家の婚礼などのときに将軍家との拝謁を許された者をいう。金座裏もそうした御目見屋敷の一人。

さらに、金座裏の宗五郎は金座の元締・後藤家と深いつながりがある。寛永十年(一六三三)、二代目宗五郎の時に、金座が夜盗の群れに押し込まれた。

そのとき、夜盗の大半をお縄にしたのだ。これでさらに結びつきが強いものになった。後藤家からは感謝のしるしに玉鋼に金を混ぜた一尺六寸の十手を贈られている。

この金座裏は多くの手先を抱えている、亮吉もその一人だ。

だが、金座裏にも足りないものがある。子供である。宗五郎は養子をとって、跡目を継がせなければならない。

物語のはじめ、しほは十六歳。亮吉、政次、彦四郎は十九歳。

亮吉はおっちょこちょいで尻軽。手先には重要なこと。

政次は頭もよく、敏捷な上に、肝が据わっている。

彦四郎は体が大きく、力があり、水練から魚釣りまで川のことなら滅法くわしい。船頭になるために生まれてきたようなものだ。

三人三様、気性も得手なことも違う。だからうまが合う。

この青春まっただ中の四人が今後どのように成長していくのか?

そして、物語の最後で、宗五郎と松坂屋の隠居・松六、松坂屋十代目の由左衛門の三人の胸の内にしまわれたことが今後どうなっていくのか?

今後が楽しみなシリーズの幕開けである。

内容/あらすじ/ネタバレ

安永八年(一七七九)、武州川越藩の御納戸役村上田之助は許嫁の久保田早希を待っていた。早希からの手紙があったからだ。

だが、早希は結納を目前にしていた。相手は城代家老の根島伝兵衛の嫡子・秀太郎である。根島伝兵衛が横槍を入れ、無理矢理にそうしたのだ。

そうした状況の中で早希は田之助を呼び出していた。だが、待ち合わせの場所で、二人は意外なものを見てしまう。

それから十八年…

いつものように、豊島屋に亮吉と彦四郎が集まってきた。しほは二人に名物の田楽と酒を持ってきた。あと、松坂屋の手代の政次が来れば、幼馴染の三人が集まることになる。この三人はしほをめぐって張り合っている。

すると突然、しほの父親が殺されたという知らせが舞い込んできた。

現場には金座裏の宗五郎親分と北町奉行所定廻り同心の寺坂毅一郎が待っていた。父親は御家人と橘の鉢のことでもめ、殺されたようだ。御家人は市川金之丞といった。

市川の家は断絶と決まったが、それでお構いなしということになった。そしてあろうことか、鎌倉河岸に橘の鉢とか盆栽を商う店を構える気でいるという。このとき、しほの胸に小さな黒い憎しみの影が差した。

この市川がしほに近づいてきた。何やら魂胆があるらしい…。

寛政九年(一七九七)、四月。

しほは母の残した紙片を見つけた。紙には武州川越藩納戸役七十石村上田之助、同藩御小姓番頭三百六十石久保田修理太夫と記されていた。母・房野の字である。これを発見したあと、しほは男女の逢引きの現場を見てしまった。

このころ男女二人連れの強盗が出没していた。そして、とうとう死人が出てしまう…。

しほは母の残した紙片のことを政次、亮吉、彦四郎に相談した。

七月。しほは豊島屋でてんてこ舞いに働いていた。

この夏、しほと同じ年格好の娘が数日から十日あまり姿を消して、ふらりと家に戻ってくる事件が頻発していた。この話を亮吉と話している矢先、さよが消えたと母親のしげがいう。友だちのおかると出かけ、そのまま戻ってこないというのだ。

おかるに話を聞くと、はぐれた時さよが男の人と話しているのを見かけたのが最後で、いくら捜しても見つからなかったという。そして、さよは死体で見つかった…。

政次が番頭の供で川越を回ることになったので、しほの一件をどうするかと聞いてきた。しほは政次に調べてもらうのを頼んだ。この一件は亮吉を通して金座裏の宗五郎の耳にも入っている。宗五郎はなぜかこの話を聞いた時に胸騒ぎを覚えていた。

しほが銭湯に行った時のこと。銭湯で物盗りが起きた。板の間荒らしで、これまでに四件ばかり繰り返しているようだ。

この事件が起きた頃、政次は川越でことのあらましを聞くことになる。

一方で寺坂毅一郎は宗五郎とともに田崎九郎太を訪ねた。田崎は川越藩の藩士である。ここで宗五郎は田崎にしほに関することをすべて告げた。

そうしたなか、しほの住む家に何も者かが忍び込み、あまつさえしほを連れ去ろうとする事件が起きた。
一体この者たちは何者で?一体何を捜していたというのか?

本書について

佐伯泰英
橘花の仇
鎌倉河岸捕物控1
ハルキ文庫 約三七〇頁
江戸時代

目次

序章
第一話 仇討ち
第二話 逢引き
第三話 神隠し
第四話 板の間荒らし
第五話 密会船強盗
第六話 火付泥棒

登場人物

市川金之丞…小普請
乾三…香具師
梶壮之助
お慧
野村梅次郎
さよ
しげ…さよの母親
おかる
駿河屋佐兵衛
亥吉
おたつ
うね
はる
小松原新之匠…寺社奉行の寺社役
梓繧尼
卵屋おけい…巾着切り
松前末女
繁乃
静谷…川越藩御目付
田崎九郎太…川越藩の江戸屋敷詰め
園村辰一郎…しほの従兄弟
園村幾…しほの伯母
久次郎
ひで
伊勢屋重左衛門
つわ
市村歌之丈
市村昇次郎
菊三
絵津
能登屋壮右衛門
荒木厚胤…湯島天神の禰宜
小池主計…野州浪人
相模屋仁左衛門
光村金太郎
来島正右衛門…川越藩江戸留守居役
尾藤竹山…奏者番
根島伝兵衛
根島秀太郎
檜本屋甚左衛門
村上田之助
久保田早希

タイトルとURLをコピーしました