佐伯泰英の「秘剣・悪松第5巻 秘剣流亡」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第五弾。前作での闘いの後、水戸藩の屋敷を飛び出した一松。安積覚兵衛宛に旅に出ると書き置きを残して、旅に出てしまう。屋敷にいる間は衣食住に困らないものの、退屈をしていた一松。うずうずしていた旅の虫が騒ぎ出してしまったのだろう。

行くあてはないものの、東海道を箱根の方へと足を向けてしまう。弾正ヶ原に師匠の墓を訪ねようかと、心の奥底で思っているものがあるのかもしれない。

そして、たどり着いたのが、小田原城下。

東海道の小田原宿を通過していく大名家は百四十家。同じ規模の城下としては中山道の高崎城下と奥州街道の宇都宮城下がある。が、中山道の高崎城下は三十六家、奥州街道の宇都宮城下は三十三家で、小田原城下が圧倒的に利用されていたことがわかる。

本書で一松は三つの騒動や事件に巻き込まれる。

一つ目はこの小田原。そして、小田原を去り箱根に入って二つ目。最後に、箱根から甲府へ行って三つ目である。

異色なのが二つ目。一松がたどり着くのは北条家の隠れ里。この場合の北条家とは北条早雲から始まる後北条家のことである。

この隠れ里には女しかいない。いや、男もいるのだが、子供であったり、老人であったりで、壮年の男はいない。

ここで一松が対決する相手。六斎清女という隠れ里の主だが、対決方法が異色である。このシリーズとしては初めての対決、というより、佐伯泰英の時代小説としては初めての対決方法だ。

さて、一松が甲府に入って足を向けた道場。逸見武太夫義輝が教えている道場で、溝口派一刀流を掲げている。後年、甲源一刀流として逸見太四郎義年が流派を立てることになる流派だ。逸見氏が甲斐源氏を祖とするところから、甲源一刀流と称したそうだ。

甲源一刀流を描いた作品としては、中里介山の「大菩薩峠」がある。主人公・机竜之助が甲源一刀流の遣い手という設定だ。

内容/あらすじ/ネタバレ

一松は安積覚兵衛にしばらく旅に出ると書き置きを残して水戸屋敷を出ていた。

小田原城下では江戸大相撲大興行がなされていた。押送り船の船頭・千吉が力士を相手に二人勝ち抜いていた。五人勝ち抜けば五両もらえるという寸法だ。が、三人目の力士に骨を折られる負けを喫した。これを見て一松がこの賭け相撲に参加した。

この相撲を見ていた人物がいた。御馬宿の隠居万屋長右衛門だ。長右衛門は一松を誘った。頼みがあったからだ。

頼みとは孫娘のお初に関わることであった。お初の母・お保は婿の栄太郎を迎えた頃に、万屋に泊まった御馬預の鵜塚八兵衛と通じ、身ごもってしまった。

それがお初であった。その鵜塚八兵衛はお初が自分の娘であることを知り、万屋にお初を江戸に連れて行きたいといいだしたのだ。

長右衛門は一松に鵜塚一行が小田原を避けて通れるようにしてもらいたいと頼んだ。

弾正ヶ原を久しぶりに訪ねた一松は師匠の墓参りをすませた。

予定通りなら、鵜塚八兵衛一行が関所に差し掛かるはずである。一松は一行から馬を盗むつもりでいた。将軍綱吉の馬を盗むのだ。

果たして御馬預の一行に大混乱が起きた。

御厨の里まで女二人連れを送ってもらえないかと一松は頼まれた。断ったが女二人はついてくる。やがて撒いたと思ったら、一松は再び同じ箇所に舞い戻り、そこに女は待っていた。仕方なく一松は同行することにした。

女は六斎清女と名乗り、北条家ゆかりの者だという。その清女に連れられ一松は北条一族の隠れ里に着いた。出迎えの者は女ばかりというのが訝しい。

清女がいうには、この隠れ里が小田原藩に見つかったのだとか。山奉行の板鳥吉蔵の一行が里に近づいていた。

宿で一松は甲府に店を持つ吉田屋の隠居・幸右衛門一行、そして甲斐甲府藩の台所方の宇津木六平太と一緒になった。行くあてのない一松は幸右衛門一行に同行することにした。これに宇津木も加わった。

一行は途中で野伏せりに襲われた。狙われたのは幸右衛門一行ではなく、鵜宇津木だった。

宇津木の今回の任務を快く思っていない連中が藩内にいるのは確かであった。それは御勘定頭の兵藤胤厚と藩御用達の高麗屋利左衛門とみて間違いなさそうだ。一松は幸右衛門と宇津木の二人から懇願され、甲府まで送り届けることになった。

甲府についたものの、宇津木はここでも襲われた。幸い一松が事前に察知したことによって襲撃をかわすことが出来たが、敵は執拗に狙ってきそうな気配である。そんな中、一松は逸見武太夫義輝の道場に足を向けた…。

本書について

佐伯泰英
秘剣・悪松5
秘剣流亡
祥伝社文庫 約三二〇頁
江戸時代

目次

第一章 賭け相撲
第二章 墓前勝負
第三章 隠れ里の女
第四章 岩場勝負
第五章 甲府騒動

登場人物

千吉…押送り船の船頭
山王虎五郎…力士
大嶽岩五郎…小結
相模屋狗右衛門
万屋長右衛門
お初…長右衛門の孫
栄太郎…お初の父
お保…お初の母
富造…馬丁
鵜塚八兵衛…御馬預
与野精兵衛…林崎無想流居合
猪狩種五郎…御馬方
六斎清女
おかめ…老女
板鳥吉蔵…山奉行
当麻朝右衛門
幸右衛門…吉田屋隠居
おきわ…幸右衛門の女房
孝吉…手代
宇津木六平太…甲斐甲府藩家臣
山北辰祐…台所頭
逸見武太夫義輝…溝口派一刀流
新見忠信(梅翁)
兵藤胤厚…御勘定頭
高麗屋利左衛門…藩御用達商人
橘参左衛門辰信…柳生新陰流
原町鉄之助

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