佐伯泰英の「古着屋総兵衛影始末 第10巻 交趾!」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第十弾。題名の「交趾」は「こうち」と読む。交阯とも書くことがある。また、「こうし」と読むこともある。前漢から唐にかけて置かれた中国の郡の名称で、現在のベトナム北部ソンコイ川流域地域を指すそうだ。

ベトナム北部というと「安南」という呼び名もあり、「交趾」との違いが今ひとつよくわからない。それが時代による名称の違いなのか、それとも地域の広さによる呼称の違いなのか、はたまた別の理由なのか。機会があったら調べて見ようと思う。

それはともかくとして、なぜベトナムの地域名が題名になっているのかというと、前作からの流れから考えるとわかって頂けると思う。

流され流されて西沙諸島(パラセル諸島とも呼ばれ、南シナ海に浮かぶ多数のサンゴ礁の小島が集まっている。現在では、中国、台湾、ベトナムが領有権争いをしている場所である。)と思われるところまで漂流してしまった大黒丸。

ま、ここまで流されたのなら、沖縄を目指すより一端「交趾」を目指した方が早いのは確かなのだが…、遠くへ流されすぎだ!

あとがきでも書かれているように、弾みでここまで漂流させてしまったらしい。根底には子供の頃に読んだヴェルヌの「十五少年漂流記」があったそうだが、漂流したのはかわいらしさを失った大人三十名弱である。

本作はその漂流の果てに「交趾」までたどり着いた総兵衛ら一行が交易を行って(タダでは転ばないところは商人だねぇ)、江戸へ戻るために出発するまでを描いている。

海洋冒険小説であり、前作から始まり、本作、そして次作まで続く。その合間に江戸の大黒屋の様子などが描かれているという印象である。
さて、次作では江戸に戻る大黒丸だが、柳沢吉保との対決が待ち受けているのだろうか?

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内容/あらすじ/ネタバレ

宝永四年(一七〇七)。江戸の大黒屋では息を潜めるような暮らしが続いた。琉球から悲報が届いて以来だ。美雪は一族の者を集めて今起きていることを告げることにした。そして総兵衛の死が確実なものとわかるまでの当座の取り決めをした。鳶沢村から次郎兵衛らも着いた。

宝永五年(一七〇八)が明けた。主のいない間に柳沢吉保がどのような手を打ってくるかわからない。その動静を探るために笠蔵らは応対人の太田棟太郎を籠絡することにした。太田は外にお春という女を囲い、金に窮しているところにつけ込んで情報を引き出そうと考えたのだ。

北町奉行所の筆頭手付同心村上熊丸がやってきた。北町奉行松野壱岐守助義の名で大黒屋総兵衛に呼び出しかあったからだ。総兵衛が本当にいないのかを確かめるための呼び出しのようだ。この難局は美雪は崇子をともなうことで回避することが出来た。

だが、この後、小僧の丹五郎、大和の二人が刺し殺され、これに続いて大黒屋に縁の深いものが次々と殺されていった。

ここにいたって美雪は一つの決断を下す。それは大黒屋の店を閉めるということである。表看板を当座下ろすだけで、商いをやめるわけではない。明神丸をつかって北の方へ船商いを続けるというのだ。

臨月を迎えた美雪は小梅村の寮に行くことになり、大戸を下ろした大黒屋は当面崇子に見てもらうことにした。美雪が七代目総兵衛となる元気な男の子を産んだ。春太郎と名づけられた。

総兵衛も忠太郎ら一族の者も、大黒丸も生きていた。そして再び大海原へ出航するために修理に励んでいた。

船大工の箕之吉が新たな工夫を加え修理を始め、出航できるようになるまで五ヶ月以上かかった。そして試走を終え、いよいよ再び航海に出る段になり、総兵衛は南を目指すといった。

流されてきた場所から考えると、思っている以上に近いところに交趾があるはずである。そこで異国の商人らを相手に取引をして戻るというのだ。幸い大黒丸の積荷は七割以上が無事であった。

六月以上の漂流生活を切り上げて大黒丸は再び出発した。ツロンに大黒丸は着いた。ここで総兵衛はグェン家から招きを受けた。

グェン家の当主は和名・今坂理右衛門といい、先祖は西国の大名家に仕えていたという。戦国の世に海外へ飛び出した日本人の末裔である。

このグェン家は安南政庁の高官であり、ツロンの有力者でもあり、交易商人でもあった。総兵衛はグェン家との交易の約束を取り付けることができた。これで海外交易の拠点が出来た。

笠蔵らが江戸を離れて半年が過ぎていた。

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本書について

佐伯泰英
交趾!古着屋総兵衛影始末10
徳間文庫 約三八五頁
江戸時代

目次

序章
第一章 陥穽
第二章 撤退
第三章 孤島
第四章 交易
第五章 行商
終章

登場人物

太田棟太郎…柳沢家応対人
お春
村崎市兵衛…柳沢家御用人
佐々木多聞助
村上熊丸…北町奉行所筆頭手付同心
高藤参五郎…北町奉行内与力
今坂理右衛門(グェン・バン・ファン)
グェン・ヴァン・タム…理右衛門の息子
ソヒ
チン・カオ・ティン…華僑
ハン・ヴァン・カン
キャプテン・マック

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