ノア・ゴードンの「千年医師物語Ⅱ: シャーマンの教え」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

「千年医師物語」という壮大な大河ドラマの第二部。

舞台は、初代ロブ・Jから800年もあとのアメリカ。主人公は親子の二人である。父のロバート・ジャドソン・コール(ロブ・J)と息子のロバート・ジェファソン・コール(シャーマン)。二人とも、コール家の贈り物をそなえている。

物語の時代。西部では少なくなってきているものの、まだインディアンとの衝突がある。そして、インディアンに対する偏見や差別が横行している時代である。

そして、時代を少し過ぎ、シャーマンの青年期には、南北戦争が始まる。

ちょうどアメリカが創生期から脱しつつある混迷期を扱っている。

こうした複雑な時代を象徴するかのように、作者は父のロブ・Jに政治的な信条を反映させているようだ。

そもそも、ロブ・Jがアメリカに逃げるようにして渡ってきたのも、スコットランドでの行き過ぎた政治的な行為があったからである。

ロブ・Jには、医者としての側面とは別に、政治的な強い信条を持つ人間としての側面を持たせているのも興味深い。

こうした人間が、南北戦争のような戦争に、どのようにして関わっていくのかも興味深い点である。

対して、息子のシャーマンはリベラルな人間として書かれている。

それは、シャーマンが耳が聞こえないというハンディを背負っているという点にも意味があるのかもしれない。

だが、シャーマンをリベラルに描くことで、父との人間性の対比が上手くなされている。

本書の記述で一つ興味深いのが、ラクロスを描いている場面である。

もともとネイティブ・アメリカンの遊びをスポーツとしたのがラクロス。その、もともとの様子を描いているシーンが印象的である。

さて、作者は、政治的なマイノリティや複雑な問題を扱うのが好きなようだ。

その割りには、政治臭さがなく、上手く小説にとけ込んでいる。

シリーズは3部作になっている。

  1. 千年医師物語Ⅰ: ペルシアの彼方へ
  2. 千年医師物語Ⅱ: シャーマンの教え 本作
  3. 千年医師物語Ⅲ: 未来への扉
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内容/あらすじ/ネタバレ

ロバート・ジャドソン・コール(ロブ・J)が新世界を目にしたのは1839年のことだった。政治的理由でスコットランドから逃げるようにして渡ってきたのだ。それも、スコットランドで確約されていた医師としての名声や地位を捨ててである。だが、まだ彼は若かった。

ロブ・Jは金を得るために慈善事業の職にありついた。それは、ボストンの貧困層に内科医を派遣するというものだった。これに加えて、医学校での解剖研究室で講師としての仕事も得た。

アメリカでは医者として新たな知識を得ることが出来ないと思っていたロブ・Jは、そのことを考え直さざるを得ない出来事に遭遇する。ヨーロッパで知られていないような事実がアメリカの医師によって発見されつつあるのを目の当たりにしたからだ。

その一方で、慈善事業での内科医の派遣という制度自体が破綻していることを認識させられ、医師としての本来あるべき責務を果たそうと考える。

ロブ・Jには「コール家の贈り物」がそなわっていた。それは、患者の手を握ることによって、生きるか死ぬかを判断できる能力である。この贈り物は必ずしも各世代が受け継ぐものではなく、世代を飛び越える場合がある。この贈り物をもつロブ・Jにとって、貧困地区での診療は地獄のようだった。

…そのロブ・Jが惹きつけられているのが、インディアンの住む場所である。そして、インディアンの住む土地へ移り住むことを決意した。

旅の途中、ユダヤ人の薬剤師と知り合いになり、そして、ホールデンズ・クロッシングという場所に落ち着くことにした。なにせ、このあたりには医者がいなく、そして、インディアンの住む場所とも近かったからだ。

医者が来たという噂はあっというまに広がった。

…ロブ・Jはあるインディアンを偶然治療したことから、マクワ・イクワというソーク族のインディアンの呪医と知り合いになった。彼女は英語で熊の女という意味をもっていた。

同じ頃、ロブ・Jはサラ・ブレッドソーという女性と知り合うことになる。サラは結石のため衰弱していた。その治療をすることによって親密な関係となっていった。

一方、マクワ・イクワはロブ・Jの治療を手助けしてくれるよき協力者となっていた。それは、マクワ・イクワが薬草に関する独特の知識を持っていたからである。双方が協力し合えたのである。

だが、このマクワ・イクワとの協力関係を快く思わない人間が多かった。インディアンに感化された医者として、非難の目を浴びることもあった。だが、ロブ・Jはそれを意に介さなかった。

…ロブ・Jはサラと結婚することになった。やがてすぐにサラは妊娠し、男の子を産んだ。名をロバート・ジェファソン・コールと命名した。

ほぼ同じ時期に、以前知り合ったユダヤ人の薬剤師・ガイガー一家が引っ越してきた。

ロバート・ジェファソン・コールをシャーマンと呼び始めたのは、マクワ・イクワだった。もし、彼が北ブリテンに生まれていたら、生まれた瞬間からロブ・Jと呼ばれていただろう。だが、アメリカで生まれた彼はシャーマンと呼ばれることになった。

…シャーマンに不幸が襲ったのは五歳になった時だった。麻疹にかかり、耳が聞こえなくなってしまったのだ。家族の皆はシャーマンをどう扱っていいか途方に暮れてしまった。

やがて、ロブ・Jはシャーマンに人の口を読み取らせる訓練を始める。それは想像を絶する困難なことだった。

こうした中、マクワ・イクワが何者かに殺された。

…シャーマンは成長し、学校に通うことになった。最初の先生はシャーマンにとってよい先生ではなかった。だが、この先生が去り、代わりの先生が来ると、シャーマンはその本来持つ明晰な頭脳を現わし始めた。

そして、シャーマンはある決意をしていた。それは父・ロブ・Jと同じく医者になることだ。だが、耳の聞こえないシャーマンにとって、医者の道は険しいものである。

このシャーマンにもロブ・Jと同じく「コール家の贈り物」がそなわっていることが分かった。

…アメリカでは奴隷問題を発端にして、南北戦争が始まった。兄のアレックスが南部の軍へ家出同然で入隊し家族を心配させていた。

そして、シャーマンは医学校に入学して本格的な医師への道を歩み始めていた。

ロブ・Jは戦争という行為に反対的な立場を取っていたが、負傷者の発生する戦争では医者の助けが必要であると考え、その政治信条とは別に、北部の軍の契約軍医となった。

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本書について

ノア・ゴードン
シャーマンの教え
千年医師物語Ⅱ
角川文庫 計約890頁
19世紀 アメリカ

目次

第一部 帰郷
 第一章 ほんにお疲れさん
 第二章 遺産相続
第二部 真っ白なキャンパス、新たな絵
 第三章 移民
 第四章 解剖授業
 第五章 神に呪われし地区
 第六章 夢
 第七章 絵の色調
 第八章 音楽
 第九章 二つの土地
 第十章 建築
 第十一章 世捨て人
 第十二章 大きなインディアン
 第十三章 寒い時を経て
 第十四章 棒球
 第十五章 ストーンドッグからの贈り物
 第十六章 女あさり
 第十七章 ミデウィウィンの娘
 第十八章 石
 第十九章 移り変わり
 第二十章 サラの求婚者達
 第二十一章 大いなる目覚め
第三部 ホールデンズ・クロッシング
 第二十二章 呪いと祝福
 第二十三章 変質
 第二十四章 春の調べ
 第二十五章 静かな子供
 第二十六章 拘束
 第二十七章 政治力学
 第二十八章 逮捕
 第二十九章 イリノイ最後のインディアンたち
第四部 耳の聞こえない少年
 第三十章 授業
 第三十一章 学校時代
 第三十二章 夜間診療
 第三十三章 予感
 第三十四章 帰還
 第三十五章 秘密の部屋
 第三十六章 最初のユダヤ人
 第三十七章 水の足跡
 第三十八章 音楽が聞こえる
 第三十九章 教師たち
 第四十章 大人になること
 第四十一章 勝者と敗者
 第四十二章 カレッジの学生
 第四十三章 出願者
 第四十四章 おき手紙
第五部 家族のいさかい
 第四十五章 総合臨床医学校にて
 第四十六章 心臓の音
 第四十七章 シンシナティでの日々
 第四十八章 船に乗って
 第四十九章 契約軍医
 第五十章 息子の手紙
 第五十一章 ホルン奏者
 第五十二章 軍隊の移動
 第五十三章 灰色の長い戦列
 第五十四章 小戦闘
 第五十五章 「エルウッド・R・パターソンにはどこで会った?」
 第五十六章 ラッパハノック川を渡って
 第五十七章 ふりだしにもどる
第六部 田舎医者
 第五十八章 助言者たち
 第五十九章 秘密の父親
 第六十章 偽膜性喉頭炎の子供
 第六十一章 率直な話しあい
 第六十二章 釣り
 第六十三章 日記の終わり
 第六十四章 シカゴ
 第六十五章 電報
 第六十六章 エルマイラ収容所
 第六十七章 ウェルズバーグの家
 第六十八章 クモの巣のあがき
 第六十九章 アレックスの本名
 第七十章 ノーヴーへの旅
 第七十一章 家族の贈り物
 第七十二章 着工式
 第七十三章 タマへ
 第七十四章 早起き人

登場人物

ロバート・ジャドソン・コール(ロブ・J・コール)
ロバート・ジェファソン・コール(シャーマン)…ロバード・ジャドソン・コールの息子
アレックス…シャーマンの兄、サラの連れ子
サラ・コール(サラ・ブレッドソー)…妻
オールデン・キンボール…コール家の使用人
マクワ・イクワ…ソーク族のインディアンの呪医
ムーン
カムズシンギング
ジェイソン(ジェイ)・マクスウェル・ガイガー…ユダヤ人の薬剤師
リリアン・ガイガー…妻
レイチェル・ガイガー…娘、シャーマンたちの同級生
ニコラス(ニック)・ホールデン
マザー=ミリアム・フェロシア…フランシスコ修道院の院長
ドロシー・バーナム…教師
バーネット・アラン・マクガワン博士
バーウィン博士
エルウッド・R・パターソン
ハンク・コフ
レニング・オードウェイ

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