牧秀彦の「剣豪-その流派と名刀」を読んだ感想

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時代小説を読むと様々な剣術の流派や刀が登場する。

本書では第一部の「流派編」で、室町時代から昭和までの剣術五〇流派、第二部の「名刀編」で平安時代から幕末・明治維新までの名刀五〇工を紹介しており、時代小説を読む際の参考になると思われる。

基本的に一流派・一名工毎に、見開きで完結する内容となっているので、事典代わりに読まれると良いと思う。

剣術の流派は古墳時代前期に最古の剣術が生まれたようだ。常陸国鹿島神宮の祝部、つまり神官の国摩真人が編み出した「鹿島の太刀」を基とする関東七流である。

次いで創始されたと見なされるのが、京八流である。十二世紀の京、一条堀川にいた陰陽師で鬼一法眼が鞍馬山の僧八人に授けたことから始まるという。

これらの後に、剣術を体系化して流派を初めてなしたのが、念阿弥慈音の念流である。そして、飯篠長威斎家直の天真正伝香取神道流、愛洲移香斎久忠の陰流、中条兵庫頭長秀の中条流という三大流派が生まれる。

【式内社】香取神宮の参拝録(千葉県香取市)最強の武神フツヌシを祀り、伝説の剣豪飯篠長威斉家直ゆかりの神社

鹿島神宮を訪れ、いつかは期待と思っていた神社。古来、神宮と言えば、伊勢神宮と鹿島神宮、香取神宮の3社を指していた。残るは伊勢神宮。いつかは行ってみたい。

以下その流派の祖などを簡潔に記す。

名刀編に関しては個人的に興味のあるものだけをピックアップする。

なお、本書には姉妹本とでもいうべき本がある。

剣豪全史
「名刀 その由来と伝説」

である。あわせて読むとよいと思う。

剣術

●念流(室町時代):念阿弥慈音。父の仇討ちのために諸国を巡り極めた最初の剣豪。

●天真正伝香取神道流(室町時代):飯篠長威斎家直。後継者に松本備前守政信らがいる。

●陰流(室町時代):愛洲移香斎久忠。上泉伊勢守信綱の新陰流、柳生新陰流を派生させた流派である。

●中条流(室町時代):中条兵庫頭長秀。現代剣道の基となった流派。小太刀の技で有名な冨田流を派生。

●鹿島神流(戦国時代):塚原卜伝の師として知られる松本備前守政信。「一の太刀」もこのなかにあったようだ。

●新当流(戦国時代):塚原卜伝。「一の太刀」で有名。弟子には北畠具教、足利義輝、細川幽斎、斎藤伝鬼坊勝秀、師岡一羽らがいる。

●冨田流(室町時代):冨田九郎左衛門長家。中条流から派生。

●新陰流(戦国時代):上泉伊勢守信綱。弟子に柳生但馬守宗厳、丸目蔵人佐、神後伊豆守宗治、疋田豊五郎ら。

●馬庭念流(室町時代):樋口太郎兼重。一端途絶えるが、十七代目の樋口又七郎定次が復活させる。

●示現流(江戸時代):東郷肥前守重位。薩摩藩の御留流。

●野太刀自顕流(江戸時代):東郷肥前守重位の高弟、薬丸刑部左衛門兼陳。

●厳流(江戸時代):岩流(佐々木)小次郎

●一刀流(江戸時代):伊藤一刀斎景久。江戸時代に多くの流派を派生させた流派で、現代剣道のルーツともいわれている。

●柳生新陰流(江戸時代):柳生但馬守宗厳。上泉伊勢守信綱の弟子。

●尾張柳生流(江戸時代):柳生兵庫助利厳。柳生但馬守宗厳の孫。息子に厳包(連也斎)がいる。

●タイ捨流(江戸時代):丸目蔵人佐長恵。カタカナなのは字面から意味が限定されるのを避けるため。

●疋田陰流(江戸時代):疋田豊(文)五郎。上泉伊勢守信綱の甥といわれている。

●二天一流(江戸時代):宮本武蔵。

●吉岡流(室町時代):京八流の末といわれる。

●小野派一刀流(江戸時代):小野次郎右衛門忠常。伊藤一刀斎景久から始める一刀流直系の流派で、父・小野次郎右衛門忠明(神子上典膳吉明)の三男。

●忠也派一刀流(江戸時代):伊藤典膳忠也。小野次郎右衛門忠明(神子上典膳吉明)の次男。

●梶派一刀流(江戸時代):梶新右衛門正直。小野次郎右衛門忠常の弟子。

●東軍流(江戸時代):川崎鍵之助。

●無外流(江戸時代):辻月丹資茂。

●直心影流(江戸時代):山田平左衛門光徳。江戸時代の中期から後期を代表する大流派。有名な剣客として男谷精一郎信友、島田虎之助らがいる。

●中西派一刀流(江戸時代):中西忠太子定。小野派一刀流の流れ。この派から天真伝一刀流、北辰一刀流が分派。

●天真伝一刀流(江戸時代):寺田五(郎)右衛門。

●北辰一刀流(江戸時代):千葉周作。幕末の三大道場の一つで、千葉周作の道場は玄武館。弟・定吉も京橋桶町に道場を構え、坂本龍馬らが学んだ。「技の千葉」といわれた。

●甲源一刀流(江戸時代):逸見太四郎義年。幕末の三剣士の一人、比留間与八を排出。(他の幕末の三剣士は直心影流の男谷精一郎信友、島田虎之助。大石進種次を含めることもある)

●忠孝真貫流(江戸時代):平山行蔵(子竜)。

●柳剛流(江戸時代):岡田惣右衛門奇良。脛への攻撃を得意とした流派。

●大石神影流(江戸時代):大石進種次。身の丈七尺の巨漢。

●神道無念流(江戸時代):福井兵右衛門。二代宗家、戸賀崎熊太郎の代で花開く。弟子に斎藤弥九郎がいる。弥九郎は練兵館を開き、江戸の三大道場に数えられる。練兵館では桂小五郎、高杉晋作、品川弥次郎らが学んだ。「力の斎藤」といわれた。

●心形刀流(江戸時代):伊庭是水軒秀明。八代宗家の息子・伊庭八郎が流派御を世に知らしめた。三大道場に次ぐ人気を集めた。

●鏡新明智流(江戸時代):桃井八郎左衛門直由。志学館。「位の桃井」といわれた。

●天然理心流(江戸時代):近藤内蔵助長裕。新選組の局長・近藤勇は四代宗家。

●一刀正伝無刀流(江戸時代):山岡鉄舟。

居合

●林崎無想流(戦国時代):林崎甚助重信。

●伯耆流(江戸時代):片山伯耆守久安。林崎甚助重信の直弟子。

●田宮流(江戸時代):田宮平兵衛重政。林崎甚助重信の直弟子。

●無楽流(江戸時代):長野無楽斎槿露。林崎無想流と田宮流に連なる流派。

●関口流(江戸時代):関口弥六左衛門氏心。

●新田宮流(江戸時代):和田平助正勝。

●長谷川英信流(江戸時代):長谷川英信。現、無双直伝英信流。

●立身流(戦国時代):立身三京。

●水鴎流(江戸時代):三間与一左衛門景延。

●警視庁流(明治時代):

●無想神伝流(昭和時代):中山博道。

様剣術

●中川流(江戸時代):中川左平太重興。

●山田流(江戸時代):山田浅右衛門貞武。

日本刀の時代区分。

平安時代の中期から桃山時代の末期、慶長元年(一五九六)以前が古刀期。

慶長元年から、江戸時代後期の安永末年(一七八一)までが新刀期。

天明元年(一七八一)から幕末・明治維新までが新々刀期。

古刀期は五か伝と呼ばれ、作刀技術の根本をなす五系統が完成された時期である。五か伝とは、大和国の大和伝、山城国の山城伝、相模国の相州伝、備前国の備前伝、美濃国の備前伝である。これと異なる作風を脇物といい、代表的な物には大原安綱から同田貫一門までと幅広い。

古刀

●大原安綱(平安時代):天下五剣の一振り「童子切安綱」。源頼光が酒呑童子の首を打ったとされる刀。

●三条宗近(平安時代):天下五剣の一振り「三日月宗近」。他に島津家伝来の鷹の巣宗近や岐阜南宮神社に奉納された御剣などがある。

●古備前物(平安時代):「大包平」は童子切安綱と並ぶ名刀の両横綱として有名。

●青江恒次(平安時代):天下五剣の一振り「数珠丸恒次」。

●三池光世(平安時代):天下五剣の一振り「大典太光世」。

●粟田口一門(鎌倉時代):豊臣秀吉の愛刀「一期一振」。

●来一門(鎌倉時代):足利家の秘蔵刀「不動国行」、豊臣秀吉の愛刀「釣鐘切国行」。

●左近国綱(鎌倉時代):天下五剣の一振り「鬼丸国綱」。

●五郎入道正宗(鎌倉時代):知名度の最もある名工。正宗十哲が知られる。来国次、長谷部国重、志津兼氏、金重、郷義弘、則重、直綱、兼光(二代)、長義、左。

●郷義弘(鎌倉時代):秀吉が選んだ日本三名工の一人。

●左近将監長光(鎌倉時代):俗称、備前長船長光。

●志津兼氏(鎌倉時代):包氏の異名。

●左(鎌倉時代):銘を「左」と切ることから左文字の通称で呼ばれる。

●信国(南北朝時代):貞宗三哲の一人。

●長谷川国重(南北朝時代):織田信長の愛刀「へし切長谷部」

●千五村正(室町時代):徳川家に仇をなす妖刀の異名を持つ。

新刀

●埋忠明寿(江戸時代):新刀の祖。

●堀川国広(江戸時代):長曾禰虎徹と並ぶ東西の双璧。

●長曾禰虎徹(江戸時代):堀川国広と並ぶ東西の双璧。

新々刀

●水心子正秀(江戸時代):新々刀の祖。

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本書について

牧秀彦
剣豪 その流派と名刀
光文社新書 約二九〇頁
解説書

目次

はじめに
第一部 流派編
 剣術はいつ、どのように始まったのか
 サムライ流派の群雄割拠
 剣術
  念流(室町時代)
  天真正伝香取神道流(室町時代)
  陰流(室町時代)
  中条流(室町時代)
  鹿島神流(戦国時代)
  新当流(戦国時代)
  冨田流(室町時代)
  新陰流(戦国時代)
  馬庭念流(室町時代)
  示現流(江戸時代)
  野太刀自顕流(江戸時代)
  厳流(江戸時代)
  一刀流(江戸時代)
  柳生新陰流(江戸時代)
  尾張柳生流(江戸時代)
  タイ捨流(江戸時代)
  疋田陰流(江戸時代)
  二天一流(江戸時代)
  吉岡流(室町時代)
  小野派一刀流(江戸時代)
  忠也派一刀流(江戸時代)
  梶派一刀流(江戸時代)
  東軍流(江戸時代)
  無外流(江戸時代)
  直心影流(江戸時代)
  中西派一刀流(江戸時代)
  天真伝一刀流(江戸時代)
  北辰一刀流(江戸時代)
  甲源一刀流(江戸時代)
  忠孝真貫流(江戸時代)
  柳剛流(江戸時代)
  大石神影流(江戸時代)
  神道無念流(江戸時代)
  心形刀流(江戸時代)
  鏡新明智流(江戸時代)
  天然理心流(江戸時代)
  一刀正伝無刀流(江戸時代)
 居合
  林崎無想流(戦国時代)
  伯耆流(江戸時代)
  田宮流(江戸時代)
  無楽流(江戸時代)
  関口流(江戸時代)
  新田宮流(江戸時代)
  長谷川英信流(江戸時代)
  立身流(戦国時代)
  水鴎流(江戸時代)
  警視庁流(明治時代)
  無想神伝流(昭和時代)
 様剣術
  中川流(江戸時代)
  山田流(江戸時代)
第二部 名刀編
 日本刀の魅力とは
 各地に花開いた、古のカタナ
 移り変わる名刀の趣
 古刀
  大原安綱(平安時代)
  三条宗近(平安時代)
  古備前物(平安時代)
  一文字各派(平安時代)
  青江恒次(平安時代)
  三池光世(平安時代)
  粟田口一門(鎌倉時代)
  来一門(鎌倉時代)
  毛掻包永(鎌倉時代)
  保昌一門(鎌倉時代)
  左近国綱(鎌倉時代)
  藤源次助眞(鎌倉時代)
  五郎入道正宗(鎌倉時代)
  郷義弘(鎌倉時代)
  左近将監長光(鎌倉時代)
  志津兼氏(鎌倉時代)
  左(鎌倉時代)
  延寿国村(鎌倉時代)
  波平一門(鎌倉時代)
  信国(南北朝時代)
  長谷川国重(南北朝時代)
  千五村正(室町時代)
  島田義助(戦国時代)
  孫六兼元(戦国時代)
  和泉守兼定(戦国時代)
  同田貫正国(戦国時代)
 新刀
  埋忠明寿(江戸時代)
  堀川国広(江戸時代)
  三品一門(江戸時代)
  河内守国助(江戸時代)
  ソボロ助広(江戸時代)
  津田越前守助広(江戸時代)
  井上真改(江戸時代)
  一竿子忠綱(江戸時代)
  相模守政常(江戸時代)
  越前康継(江戸時代)
  大和守安定(江戸時代)
  長曾禰虎徹(江戸時代)
  野田繁慶(江戸時代)
  三善長道(江戸時代)
  会津兼定(江戸時代)
  山城大掾国包(江戸時代)
  山城守国清(江戸時代)
  辻村兼若(江戸時代)
  南紀重国(江戸時代)
  忠吉一門(江戸時代)
 新々刀
  水心子正秀(江戸時代)
  南海太郎朝尊(江戸時代)
  奥元平(江戸時代)
  源清麿(江戸時代)
おわりに
主要参考文献
索引
図解
 日本刀の種類と構造
 剣術流派の系譜
 剣術50流派分布図
 地肌と刃文
コラム
 免許皆伝
 「バカボンド」は「宮本武蔵」ではない
 鎧武者と素肌武者
 剣術と居合の緊密な関係
 本当の「真剣勝負」とはどのようなものか?
 これが正しい馬上戦闘
 正宗十哲
 秀吉が選んだ「天下の三名工」
 貞宗三哲
 不殺の技「峰打ち」の真実
 ワザモノ
 カタナの長さで読む日本史
 日本刀のメンテナンス

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