宮城谷昌光の紹介と作品・著書

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略歴

(1945- )
宮城谷昌光。作家。愛知県蒲郡市生まれ。愛知県立時習館高等学校、早稲田大学第一文学部英文科卒。
白川静に深い影響を受け、古代中国に素材を求めた作品が多い。

1991年「天空の舟」で新田次郎文学賞。「夏姫春秋」で第105回直木三十五賞
1993年「重耳」で第44回芸術選奨文部大臣賞。
2000年第3回司馬遼太郎賞。
2001年「子産」で第35回吉川英治文学賞
2004年第52回菊池寛賞受賞。
2006年紫綬褒章受賞。

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宮城谷昌光氏に思う

古代中国を題材にした歴史小説の多い宮城谷昌光氏。特に春秋・戦国時代は他者の追随を許さない質と量がある。宮城谷氏には、いくつか特徴がある。

一つ目は、君主を描いたものよりも臣下を描いた作品の方が圧倒的に多いということだ。

二つ目は、ピンポイントでその人物を描くというよりは、祖父や父の事跡がある程度わかる場合は、そこから書き起こすことが多いということである。

三つ目は、信義というものに欠けた人間は、どうやら好みではないらしいということである。この場合、信義というのは徳と言い換えても良いかと思う。もしくはこうも言い換えられると思う。それは、武のみで他者を圧する者は好みではない、と。こうした点は一貫しているように思われる。

臣下を描いたものが多いというのは、国というものは、どれだけ君主が優れていても臣下に素晴らしい者がいないと繁栄しないという、ごく当然のことから来ているのだろう。

どれだけ多くの優秀な臣下を見いだせるかというのが君主の力量であり、そうした君主像というのは多くの作品で見られる。

さしずめ、現在ならば優秀な社員を抱えた社長という感じだろうか。優秀な社員を見いだして仕事をさせることによって会社を繁栄させるというのは当たり前のことである。社長一人がどれだけ優秀でも、一人では限界があることを感じ取らなければならない。

むしろ社長は優秀であればあるほど一歩退いて部下に任せなければならないということでもあろうかと思う。

祖父や父の事跡から丹念に掘り起こしているのは、その人物の人格形成等は、その人物一代だけではなし得ないという考えがあるのだろう。

祖父や父から薫陶を受け、もしくはその姿を見て学び取り、それがその人物を偉大にしていった。鳶が鷹を生むわけではなく、鷹が鷹を生んだだけということである。

祖父や父というのは、環境と言い換えても良いだろうと思う。偉大な人物になるには、環境が整えられてきていたということである。

環境には様々なものがあるが、現在なら教育環境などもそうした環境の一つであろうし、友人関係や上司部下の関係というのもそれにあたる。

なにもこうしたことは古代中国だけではなく、各国の歴史の中でも見られることであり、例えば塩野七生氏の「ローマ人の物語」を読めば、歴代の皇帝の環境がどうであり、それが本人にどう還元されたかというのがわかるはずである。

信義にもとる、もしくは徳が無く、武のみで他者を制圧したものというのは短命である。これは面白いほどといってよいが短命である。

様々な理由があるだろうが、結局は制圧地の住民の叛乱にあったり、部下の叛乱、もしくは息子や家族の叛乱にあったりして命を永らえない。

現在でいえば、金にものをいわせてというやり方が反感を買いやすいというのを考えれば納得がいくかと思う。

このように宮城谷氏の作品は、君主を社長、臣下を社員、武を金と置き換えることによって簡単に極めて現代的な読み方ができる。

歴史小説は小説であるから楽しむものだという風に思っている私は、こうした読み方はほとんどしないが、こうした読み方もある。

もしかしたら、こうした読み方で読まれている方も多いのかもしれない。

司馬遼太郎氏や塩野七生氏の作品はこうした読み方のしやすい作品が多く、それぞれの氏の作品が広く受け入れられている理由というのもこうした点にあるのかもしれないと思うことがある。だが、一つの読み方でしかない。

最後に、こうした読み方をするのなら、宮城谷氏が選んだ主人公達を考えてみなければならない。

何故この人物を選んだのか?ということである。

伊尹は宮廷料理人から宰相となった。太公望は伝説でよく知られるように針のない糸を垂らして魚釣りをしている時に君主に見いだされた。百里奚は七十才を過ぎてから秦の宰相となった。

名もなく地位もなく、一介の在野の人間でしかなかったものが歴史に名を残している。名を残し得たのは、見識のある君主に見いだされたからだ。

人を識ることのできる人物の少なさを感じ取り、己を磨くことの必要性というのも感じ取れるのではないだろうか。それはトップにいる人であればあるほど必要ということであろう。

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古代中国が舞台

古代中国の歴史に関しては、私などは王朝名だけしか知らない。

その時代に生きた人々についても、個別の名を聞いたことはあっても、その人物がどの時代に生きていたのかは知らない。

そこで、下記において、宮城谷昌光氏が小説化した、古代の人物の生きた時代などを、大ざっぱではあるが時系列に並べてみた。

時系列で読んでみたい人にとって、一つの参考になれば幸いである。

中国が舞台(作品の時系列)

夏以前

  1. 「布衣の人」(『侠骨記』収録)・・・三皇五帝時代の一人「舜」を描く。

  1. 「地中の火」(『沈黙の王』収録)・・・后羿(こうげい)が主人公。夏王朝初期
  2. 天空の舟 小説伊尹伝』・・・商王朝成立に大きな役割を果たした伊尹(いいん)が主人公。前17世紀前後

殷(商)

  1. 「沈黙の王」(『沈黙の王』収録)・・・初めて文字を生み出した商の高宗武丁が主人公。前12世紀頃
  2. 太公望』・・・周の軍師で後に斉の始祖となった太公望が主人公。前11世紀頃/殷滅亡期
  3. 王家の風日』・・・斜陽の商を支える箕子が主人公。「太公望」と一対の作品。前11世紀頃/殷滅亡期

  1. 「甘棠の人」(『侠骨記』収録)・・・周王朝を太公望と共に支えた召公奭が主人公。前11世紀頃/周建国期
  2. 「妖異記」(『沈黙の王』収録)・・・西周の崩壊を描く。前8世紀頃/周滅亡期

春秋時代

  1. 『春秋名臣列伝』・・・春秋時代の名臣20人
  2. 「豊饒の門」(『沈黙の王』収録)・・・西周の崩壊と東周の再建を描く。前8世紀頃/周再建
  3. 『管仲』・・・春秋五覇の一人斉の桓公に仕えた名宰相・管仲が主人公。前7世紀
  4. 「侠骨記」(『侠骨記』収録)・・・管仲が治めていた斉の隣国魯の将軍曹沫が主人公。前7世紀(管仲と同時期)
  5. 重耳』・・・春秋五覇の一人で放浪のすえ君主となった重耳が主人公。前7世紀
  6. 介子推』・・・重耳の陪臣でのちに神となった介推が主人公。前7世紀頃
  7. 「春秋時代 買われた宰相」(『侠骨記』収録)・・・奴隷から秦の君主に買われ宰相となった百里奚が主人公。前7世紀
  8. 「孟夏の太陽」(『孟夏の太陽』収録)・・・晋の趙一族の物語。前7世紀後半
  9. 沙中の回廊』・・・兵から名宰相になった晋の士会が主人公。前7世紀後半
  10. 華栄の丘』・・・小国の宋の文公に仕えた宰相・華元が主人公。前7世紀末から6世紀
  11. 夏姫春秋』・・・小国の鄭に生まれた絶世の美女夏姫が主人公。前7世紀末から6世紀
  12. 「月下の彦士」(『孟夏の太陽』収録)・・・晋の趙一族の物語。前6世紀
  13. 「雨」(『玉人』収録)・・・前6世紀
  14. 晏子』・・・斉の名将である父・晏弱、司馬遷が尊敬した息子で名宰相の晏嬰を描く。子産、叔向と同時代。前6世紀
  15. 「鳳凰の冠」(『沈黙の王』収録)・・・晋の公室の流れを汲む羊舌氏の叔向が主人公。晏子、子産と同時代。前6世紀
  16. 『子産』・・・春秋時代最高の宰相で知識人だった鄭に仕えた政治家・子産が主人公。晏子、叔向と同時代。前6世紀中頃
  17. 「指」(『玉人』収録)・・・前6世紀後半から5世紀前半
  18. 「老桃残記」(『孟夏の太陽』収録)・・・晋の趙一族の物語。前5世紀
  19. 「隼の城」(『孟夏の太陽』収録)・・・晋の趙一族の物語。前5世紀
  20. 「風と白猿」(『玉人』収録)・・・前4世紀
  21. 『呉越春秋 湖底の城』・・・伍子胥、呉王夫差、越王勾践、范蠡の生涯を描く

戦国時代

  1. 『戦国名臣列伝』・・・名将16人の列伝
  2. 孟嘗君』・・・斉・魏・秦の宰相を歴任した孟嘗君・田文が主人公。「楽毅」と同時代。前4世紀後半から3世紀
  3. 楽毅』・・・燕の昭王を助けて、斉を滅亡寸前まで追い込んだ燕国の武将・楽毅が主人公。「孟嘗君」と同時代。前4世紀後半から3世紀
  4. 『青雲はるかに』・・・秦に仕えた政治家・范雎が主人公。前4世紀後半から3世紀

  1. 奇貨居くべし』・・・商人から秦の宰相になった始皇帝の父とも言われる呂不韋が主人公。前3世紀
  2. 『長城のかげ』・・・項羽と劉邦を両者の近しい人の目線で描いた短編集。前3世紀後半から2世紀
  3. 『香乱記』・・・項羽や劉邦と並び立った斉王・田横が主人公。前3世紀末
  4. 『楚漢名臣列伝』・・・項羽と劉邦に仕え活躍した異才・俊才を描く。

前漢

  1. 『劉邦』
  2. 『花の歳月』・・・司馬遷「史記」の「外戚世家」を描く。前2世紀
  3. 「桃中図」(『玉人』収録)・・・前2世紀後半から1世紀

後漢

  1. 『草原の風』・・・光武帝劉秀の青年時代から王朝再建までを描く
  2. 『呉漢』…天下平定と光武帝に仕えた武将・呉漢の生涯を描く。
  3. 『三国志』・・・黄巾の乱を遡ること百年あまり前、後漢中期の孔子と並び称される楊震から描きだす新しい三国志像。1世紀末から3世紀
  4. 『三国志名臣列伝 後漢篇』

  1. 「玉人」(『玉人』収録)・・・8世紀後半
  2. 「歳月」(『玉人』収録)・・・9世紀前半

日本が舞台

  • 風は山河より
  • 新三河物語

その他

  • 石壁の線より
  • 春の潮
  • 会社人間上昇学
  • 中国古典の言行録
  • 春秋の色
  • 海辺の小さな町
  • 春秋の名君
  • 史記の風景
  • クラシック千夜一曲 音楽という真実
  • 歴史のしずく 宮城谷昌光名言集
  • クラシック 私だけの名曲1001曲
  • ふたりで泊まるほんものの宿
  • 古城の風景
  • 孟嘗君と戦国時代
  • 他者が他者であること
  • 随想 春夏秋冬
  • 窓辺の風 宮城谷昌光 文学と半生
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