井川香四郎の「梟与力吟味帳 第4巻 花詞」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

★★★★★★☆☆☆☆

シリーズ第四弾。

前作で、武田信三郎の父親・武田徳之介が公金横領の罪で切腹したことが語られた。今回はその時の遺書に、目付に嵌められたようだと語られていることがわかる。その時の目付というのが鳥居耀蔵だった。

この話は第四話の「やじろべえ」で語られる。

第一話では銭札を巡る一種の詐欺事件がテーマとなっている。利息先払いの元金保証という「おいしい話し」である。

現在でも、毎年のようにこうした「おいしい話し」に騙され、巨額の詐欺事件として報道されるが、そうした所からヒントを得たのだろう。
いつもの三人の中に、見事に引っかかったのがいるのだが…いわずとも分かろうというもの。

さて、前作で姿を消した茜。

一風堂の仙人こと宮宅又兵衛はとても寂しそうである。

いつの日か茜が戻ってくる日が来るのだろうか?

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内容/あらすじ/ネタバレ

第一話 花詞

藤堂逸馬が高級料亭「花菫」の暖簾をくぐった。すでに武田信三郎と毛利八助がいる。今日は八助が儲け話で儲けたのでおごりというわけだ。

儲け話といえばと、信三郎はいった。銭札の一件を話し始めた。銭札は預けた金の証文を金の代わりに仕えるというもので、それ自体には問題はない。だが、利息先払いで元金の保証をうたい文句にして金を集めているのが問題なのだという。できもしないことを言って騙しているからだ。

これを始めたのが両替商「大坂屋」であった。そもそも両替商は金を預かることはするけれど、返す時に利子を付けることはしない。それが当時の常識である。

すでに取り付け騒ぎが起き、被害を受けたものが町奉行所に訴えてきている。

翌朝、北町奉行所の表門に町人を連れた真琴の姿があった。

逸馬は大坂屋に出向き、主の加茂兵衛と会った。加茂兵衛は銭札の一件で逸馬が来たことを知っていた。すべてのことは公事師の棟方半兵衛に任せているので、そちらで話して欲しいという。

棟方半兵衛は元吟味方与力で鬼の棟方と呼ばれていた人物だ。逸馬は棟方から様々なことを学んでいた。そして何よりも学んだのは、棟方の決して不正を許さないという姿勢である。

八助が実は銭札を買っていたと白状した。

信三郎が加茂兵衛の昔のことについて面白い話しを持ってきた。

源助長屋の大家源助は銭札の一件を真琴に依頼していた。こうしたことはどの町でも起きていた。

源助は加茂兵衛が昔この長屋に住んでいたことがあるという。源助は加茂兵衛が「大坂屋」の手代になる時に後見人になっている。

加茂兵衛は評判の悪くない男である。だが「大坂屋」の養子になった経緯が少々面倒だ。

加茂兵衛が「大坂屋」を継ぐ一件は奉行所でもかつて調べられていた。それは加茂兵衛が店に入ってから、わずかの間に跡継ぎと主人が亡くなった上に、当人が店を仕切るようになったからだ。

そして藤堂逸馬は銭札の一件から始まった今回の一件に、意外な結末が待っていることを知る。

第二話 別れ霜

湯島天神下の町医者・榊原道庵の所に武田信三郎が怪我をした大工の雁六を担ぎ込んだ。だが、道庵はもう駄目だという表情をして、他の医者にあたるようにいった。

雁六は死んだ。

信三郎は道庵がすぐさま怪我の手当をしてくれたならばもしかしたら助かったのではないかと悔やんでも悔やみきれないでいた。

その道庵の処置について叶屋から訴えがあった。雁六の女房のお喜代が納得できないのだ。これは信三郎の入れ知恵であった。

雁六の一件は結局金でけりがついた。

道庵の診療所に来た逸馬は誰かにつけられているような気がしていた。

それが姿をあらわした。浪人姿のものだったが、津軽追手番・草野与兵衛と名乗った。草野は下手人を追っているという。

逸馬に接触してきたのは、雁六の相棒の茂吉と接触するのではないかと思ったからだという。雁六と茂吉は津軽で暴れた盗賊・疾風の常蔵の子分だった。

お喜代は雁六と茂吉が「いい金蔓がみつかった」と話していたことがあったことを話した。それがどうやら榊原道庵のようなのだ。

それにしても一体何をネタに道庵を強請っていたのだ?

そこには意外な道庵の過去があった。

第三話 東風吹かば

勘定吟味役・美濃部小五郎から呼び出され、毛利八助は何か不始末をしたかと不安げだ。

美濃部は八助に頼みがあるという。

老中首座・水野忠邦からある疑いをもたれているという。それは囲い者がいるのではないかというものだ。実際に一人妾がいるという。名をおみつという。

そこで八助におみつの旦那になってもらいたいという。ふりをすればいいのだ。八助は唖然とした。

河童大明神で親しまれる曹源寺の裏手におみつの家があった。八助はそこでおみつの旦那を演じていた。

藤堂逸馬がおみつに話を聞きに来た。兼吉という紀州の出の菓子職人を知っているかという。おみつにとって兼吉は兄ような存在だった。

今は八丈島に流されている。

鳥居耀蔵に藤堂逸馬が兼吉を探っていると報告がいった。報告したのは松波鉄之介という鳥居の家臣で、おみつの家を張り込んでいる。

鳥居はおみつが美濃部の妾なら老中・水野にとって好都合だった。美濃部は幕府財政に細かく立ち入ってくる。少々面倒なので、美濃部を追い落としたいのだ。

原田健吾が沼津の三次と名乗る渡世人を追いかけた。三次は兼吉を匿っていた。兼吉ははめられて八丈島に流されていた。

その兼吉がおみつの前に姿をあらわした…。

兼吉を始末しようと現われた鳥居の家臣達は逆に逸馬らにやられてしまう。これを知り、鳥居耀蔵はまずいではないかと思った。なぜなら…。

第四話 やじろべえ

武田信三郎が走り回っている。それを藤堂逸馬が見た。信三郎はおふくろのせいで走り回ることになっていると怒鳴った。

信三郎が走った先は回向院の裏手である。そこに大河原道場という看板が掲げられている。ついてきた逸馬は聞かぬ名前だと思った。

その道場主が信三郎を呼び捨てにしていた。それは一風堂の仲間で浜田弥次郎であった。今は大河原長州と名乗っている。

この後、信三郎は水戸家の下屋敷に向かった。藩主御側御用の向坂儀右衛門に目通りを願った。

おふくろと弥次郎とも関係があるようだ。

信三郎の母・香澄が三日前に亡き父の遺書を取り出して信三郎に見せた。

遺書には目付が仕掛けた罠に陥れられたと書かれていた。その頃の目付とは鳥居耀蔵であった。

香澄は積年の恨みを晴らすべく、信頼できる人物に力を借りることにしたという。それが大河原長州だった。高島秋帆の高弟で、水戸家にも軍学教授をしているという触れ込みで信じたようだ。

大河原長州の名は評定所にも時々のぼっていたから信三郎は耳にしていた。それが浜田弥次郎であることを知ったのは調べた結果である。

向坂は信三郎が訪ねてきたわけをすぐに察した。大河原長州の件だ。

信三郎は大河原長州が由井正雪にでもなったつもりで、水戸家を担ぎ出して謀反を起こそうとしているのかもしれないという。未然に防ぐのだというのが主張だ。

大河原長州は藤堂逸馬に、捕らえられている高島秋帆を解き放ってもらいたいという。何が狙いだかわからないが、逸馬はこれを北町奉行の遠山左衛門尉に相談した。

逸馬は大河原長州の狙いは江戸を混乱に陥れることではないかと思っている。そのために解き放たれるはずのない高島秋帆の解放を願ったのだ。むしろ、解き放たれない事実を確認したいというのがあるのだろう。

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内容/あらすじ/ネタバレ

井川香四郎
梟与力吟味帳4 花詞
講談社文庫 約三一五頁

目次

第一話 花詞
第二話 別れ霜
第三話 東風吹かば
第四話 やじろべえ

登場人物

藤堂逸馬…北町奉行所吟味方与力、梟与力
武田信三郎…寺社奉行吟味物調役支配取次役
毛利源之丞八助…勘定吟味方改役
武田香澄…信三郎の母
真琴…公事宿「叶屋」の主人
梅吉…「叶屋」番頭
仙人(宮宅又兵衛)…一風堂の師匠
茜…女先生
左吉…一風堂の生徒
佐和…佐和膳の女将
遠山左衛門尉金四郎…北町奉行
原田健吾…北町同心
房蔵…岡っ引き
鳥居耀蔵…南町奉行
中島勘解由…南町奉行所筆頭与力
水野越前守忠邦…老中首座
加茂兵衛…大坂屋主
棟方半兵衛…公事師、元与力
源助…長屋の大家
榊原道庵…町医者
雁六…大工
草野与兵衛…津軽追手番
茂吉
美濃部小五郎…勘定吟味役
おみつ
兼吉
浜田弥次郎(大河原長州)
向坂儀右衛門…水戸家の藩主御側御用
伝八郎

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