井川香四郎の「梟与力吟味帳 第3巻 忍冬」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

シリーズ第三弾。武田信三郎の家の事情というのが書かれている。

御家人・武田信三郎の父親・武田徳之介は勘定奉行勝手方の支配勘定だった。冥加金や運上金、将軍家や寺社関係の雑務や経理処理をする伺方として勤めていた。

これがある日捕縛され、勘定奉行に取り調べられた翌日切腹を命じられた。公金横領の罪であった。

真相はわからないが、これがもとで信三郎は辛い少年時代を送った。そこを常に庇ってきたのが藤堂逸馬だったのである。だからこそ二人は強い絆で結ばれている。

藤堂逸馬の勤めるのは北町奉行所。

奉行所というと月替わりで当番をすることはよく知られているが、町人の暮らしと関わりの深い問屋からの訴えは南北で分担する業種が決まっていた。

南町は薬種問屋、呉服問屋、木綿問屋など。

北町は材木問屋、廻船問屋、酒問屋など。

さて、今回の物語の一つの舞台に「お茶の水」がある。聖橋を渡ってすぐの所に湯島聖堂昌平坂学問所)があり、五分と経たない所に神田明神がある。

この「お茶の水」の地名の由来であるが、近くの寺院の井戸から湧いた清水を将軍の茶の湯に使ったことから来ている。この井戸は享保年間に神田川の改修の際に川底に沈んでしまった。

ちなみに伊達公が建造した聖橋の下は「小赤壁」と呼ばれているそうだ。言われてみると、確かに相当急な崖である。

内容/あらすじ/ネタバレ

第一話 散りて花

勘定吟味役の美濃部小五郎から呼び出された毛利源之丞八助はヘマをやったかと心配した。勘定吟味方改役になって二月が過ぎた。

美濃部は勘定奉行勘定組頭から提出された帳簿と作事奉行大工頭からだされたものから二万両が消えていることがわかったという。不正が行われているのだ。これを調べることになった。

談合がある。啄木鳥の会といい、寄合肝煎の鶴田屋が頭領だ。これに続くのが寄合世話役の橋本屋。橋本屋はこの二年ほどで頭角を現した商人だ。

普請請負問屋「橋本屋」の主人・尚右衛門がよく行く料亭に藤堂逸馬が足を運んでいた。

逸馬は公事宿「叶屋」から普請請負問屋「小松屋」清八殺しの再吟味願いを受けていた。清八は寄合肝煎「鶴田屋」主人・幸兵衛と談合に関して対立して仕事を干された人物だ。事件のあった夜、清八は橋本屋尚右衛門と会っていたことがわかっている。

隣座敷に作事奉行の長野太郎左衛門がやってきた。ろくな噂のない人物だ。

逸馬が店の外に目をやると八助がいる。どうやら同じ人物を調べているようだ。

隣座敷では橋本屋尚右衛門と鶴田屋幸兵衛、長野太郎左衛門が秘密めいた話しをしている。

武田信三郎も長野太郎左衛門を調べていた。寺社奉行直々の命だ。

信三郎は橋本屋を知っていた。だが、今の橋本屋とは違うという。かつての橋本屋は殺された小松屋のことを父か兄のように慕っていた。そして小松屋と同じく談合に反対の立場だった。

この橋本屋が今度寄合肝煎になることになった。

橋本屋を訪ねた逸馬はこぢんまりした店に意外な思いを抱いた。橋本屋の番頭・益兵衛は主の人が変わったことを嘆いていた。

橋本屋にあった逸馬は殺しの容疑がかかっていると告げた。頼まれて小松屋を殺したという男がいるのだ。だが、橋本屋は自らが殺したという。

橋本屋には何か魂胆があるようだった。

第二話 忍冬

おきわという娘が藤吉という薬種問屋の手代に手籠めされた上に殺された。

だが、藤吉が殺しの刻限に別の所にいたという証を真琴が持ってきた。そこでもう一度調べ直すことになった。

藤堂逸馬は最初の自白の中に下手人しか知らないことが含まれているのが引っかかっている。それは銀の簪だ。藤吉はおきわが頭に挿していた銀の簪を抜き取って池に放り投げたと証言し、実際に見つかっている。

真琴は藤吉と会っていた。そこで偽薬を売っているという噂のある丹波屋の主・卯右衛門の話が出た。

この二人を原田健吾が岡っ引きの房蔵と見ていた。

健吾は「越中屋」の主人鈴兵衛と一緒になって藤吉が商売相手の丹波屋を町奉行所に訴える準備をしていると藤堂逸馬に報告した。

お玉という娘が殺された。真琴と藤吉が立ち寄った甘味処で勤めていた娘だ。逸馬は藤吉を引っ張ってこいと命じた。

八助が意外なことを調べてきた。丹波屋の主人・卯右衛門は老中首座の水野越前守忠邦が浜松藩主になる前の唐津藩主だったころに藩で商いをしていた薬種問屋だった。

北町奉行の遠山左衛門尉と南町奉行の鳥居耀蔵が辰之口評定所で事前協議のために会うことになった。

真琴と藤吉が一緒にいなくなった…。

第三話 天辺の月

お茶の水の辺鄙な所に団子屋がある。誰が来るのだと思うような場所だ。これを藤堂逸馬が見つけて入った。

この辺りに、この二月ばかりの間に五件も武家屋敷を狙った盗人が現われている。

こうした話しをして団子屋を去った逸馬だったが、妙な感じがする…。

毛利源之丞八助の同僚の屋敷にも盗人が入っていた。その屋敷に見舞いに行く八助と出会った逸馬は渡りに舟と同行することにした。

団子屋の主は米蔵という。長屋の大家でもあることがわかった。

信三郎が駆けている。どうやら町方が追いかけている盗人のようだ。これを見た逸馬も一緒に追いかけた。

この時、団子屋で働いている若い衆を見つけた。寅吉という。

寅吉は米蔵があそこに店を出しているのは、小赤壁辺りが江戸では自殺の名所と聞いたからだそうだ。

米蔵は矢沢米蔵という。もともと大坂で町奉行所の同心をしていた。その頃から自殺を思いとどまらせることをしていたらしい。

盗みに入られた屋敷の人物にはある共通点があった。それは渋谷村にある山を崩して再開発をしようという評定で名前の挙がった人物ばかりである。この評定の反対派ばかりが狙われていた。

第四話 紅葉散る

逸馬は誰かにつけられているような気がしていた。

その足で佐和膳に行った。そこで栄吉という少年の話がでた。

老中首座の水野忠邦を中心とした渋谷村の再開発に関する計画の審議が行われていた。

渋谷村に里山を持つ滝田孫六という惣庄屋を任されていた老人がいる。栄吉はここに来て松茸を採っている。孫六もこれを許していた。孫六にとって見れば孫のような栄吉である。

この二人の前に宮益坂の半五郎の手下が現われ、この里山は深川の材木問屋「美濃屋」の持ち物だといいだした。

この後、孫六は北町奉行所に訴え出た。

藤堂逸馬は双方の言い分を聞くことにした。孫六は知らぬ間に里山が他人のものになっているという。美濃屋は沽券があるという。沽券は売買の証だ。

その翌朝、孫六が首つりの死体で見つかった。

逸馬は美濃屋に行き、美濃屋を呼び出したが居留守を使う。代わりに番頭の吾兵衛を連れ出した。

やがて、美濃屋と鳥居耀蔵との間に強い結びつきがあることがわかった。とすると、鳥居耀蔵は孫六が所有していた里山に執心していたことになる。だが、一体なぜ?里山には何があるというのだ?

内容/あらすじ/ネタバレ

井川香四郎
梟与力吟味帳3 忍冬
講談社文庫 約三〇五頁

目次

第一話 散りて花
第二話 忍冬
第三話 天辺の月
第四話 紅葉散る

登場人物

藤堂逸馬…北町奉行所吟味方与力、梟与力
武田信三郎…寺社奉行吟味物調役支配取次役
毛利源之丞八助…勘定吟味方改役
真琴…公事宿「叶屋」の主人
梅吉…「叶屋」番頭
仙人(宮宅又兵衛)…一風堂の師匠
茜…女先生
左吉…一風堂の生徒
佐和…佐和膳の女将
遠山左衛門尉金四郎…北町奉行
原田健吾…北町同心
房蔵…岡っ引き
鳥居耀蔵…南町奉行
熊井俊之輔…内与力
水野越前守忠邦…老中首座
美濃部小五郎…勘定吟味役
鶴田屋幸兵衛…寄合肝煎
橋本屋尚右衛門…寄合世話役
益兵衛…橋本屋番頭
小松屋清八
おかよ…小松屋の娘
長野太郎左衛門…作事奉行
雉平…遊び人
おきわ
藤吉
お玉
丹波屋卯右衛門
越中屋鈴兵衛
西田兵庫介…勘定吟味方改役
矢沢米蔵…団子屋
寅吉…団子屋の若い衆
佐渡吉
茂八
栄吉
ポン太…犬
滝田孫六
宮益坂の半五郎
美濃屋…材木問屋
吾兵衛…美濃屋の番頭

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