藤沢周平の「よろずや平四郎活人剣」を読んだ感想とあらすじ(最高に面白い!)

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覚書/感想/コメント

連作短編集。

神名平四郎が生活のために始めた仲裁屋。商売繁盛というわけにはいかないが、それなりに人が仲裁を頼みに来る。大名家の江戸留守居役、大店の商人や裏店の人間まで様々である。

連作短編であるのは、それぞれの短編とは別に全体を通しての一本の幹があるからである。いや、三本の幹があるといっても良い。

一つは老中・堀田正篤からの頼まれごと。高野長英が書いたという書物を手に入れること。これに伴う権力闘争が描かれている。

一つは元許嫁の早苗との関係。失った時間を徐々に埋めていく過程が描かれている。

最後に友人の北見十蔵、明石半太夫との道場開きである。この過程で、北見十蔵の謎に満ちた人柄や過去が徐々に明かされていく点も面白い。

それぞれの短編の中にこれらの太い幹がドッシリと腰を据えているので、読み応えが十分であり、かつスピーディな展開にも繋がっている。

時代小説を初めて読む人や、藤沢周平を初めて読む人にとって、オススメの作品である。

内容/あらすじ/ネタバレ

神名平四郎は知行千石の旗本の子息。だが、妾腹の子でもあり神名家の厄介者である。そのことは本人も自覚しており、平四郎が通っている道場の北見十蔵と明石半太夫とともに道場を開くつもりでいた。

これで神名家の厄介者身分ともおさらばできるはずであったが、道場を開くための手付け金を明石半太夫に預けていたら、当の明石が夜逃げをした。

北見十蔵とともに明石半太夫を捜すつもりでいるが、まずは日々に生活をどうするかである。この逆境を逆手に平四郎が思いついたのは仲裁屋である。

よろずもめごと仲裁つかまつり候、喧嘩五十文、口論二十文、取りもどし物百文、さがし物二百文…。この様な看板を掲げた。だが、世の中甘くはなく閑古鳥が鳴いている。

その神名平四郎のところに兄の監物がやってきた。何やら頼み事があるらしい。その頼み事は辻斬りをしている旗本を力ずくで止めさせることである。兄の監物は剣の方が筋が良くない。そこで平四郎に白羽の矢を立てたのだ。

兄の頼み事を終えた平四郎の元にまた兄から使いが来た。内容は分からなく、後日またということだった。このとこがあったすぐ後。明石半太夫の行方が分かった。すぐさま明石半太夫に会った平四郎だが、明石はのらりくらりと言い訳をする。そして煙に巻かれてしまった平四郎だった。

兄・監物からの使いの要件は老中・堀田正篤と対面させることだった。堀田は蘭学者・高野長英が書き留めた書物を手に入れよというものだった。そのためには高野長英が書いた書物の所在を確かめなければならない。その書物は田島耕作という高野長英の弟子が持っているらしい。

田島耕作を探すために兄・監物は御小人目付・樫村喜左衛門を引き合わせた。だが、田島耕作を探しているのは老中・堀田だけではなかった。同じく老中の水野忠邦の腹心・鳥居耀蔵も探していたのだ。平四郎達は鳥居耀蔵の部下達とも暗闘をすることになった。

…さて、平四郎は兄・監物の妻・里江から早苗の消息を聞いた。早苗は平四郎のかつての許嫁である。だが、早苗の家が潰れたために縁組みはなくなってしまったのだった。早苗の家が潰れた後、早苗の消息が分からなくなってしまっていたのだが、再び知れた消息に平四郎は戸惑うばかりである。

また、老中・堀田正篤からの頼み事では食べていけないので、平四郎は仲裁屋の仕事に勤しまなければならない。客は少ないものの、そして金額もバラバラであるが少しずつ客がつくようになってきた。そして、明石半太夫の猫ばばは忘れることはないものの、北見十蔵と明石半太夫と再び道場を持つ夢も捨てたわけではなかった。

平四郎の剣はどう活きていくのか…

本書について

藤沢周平
よろずや平四郎活人剣
文春文庫 計約八六五頁
連作短編集
江戸時代

目次

辻斬り
浮気妻
盗む子供
逃げる浪人
亡霊
女難
子攫い
娘ごころ
離縁のぞみ
伝授の剣
道楽息子
一匹狼
消えた娘
嫉妬
過去の男
密通
家出女房
走る男
逆転
襲う蛇
暁の決闘
浮草の女
宿敵
燃える落日

登場人物

神名平四郎

明石半太夫…友人
北見十蔵…友人

神名監物…神名平四郎の長兄、目付
里江…嫂
嘉助…神名家下男

菱沼惣兵衛…御書物同心
早苗…神名平四郎の元許嫁

伊部金之助…神名平四郎の友人

樫村喜左衛門…御小人目付
仙吉

桝六…脅しの請負人

堀田正篤…老中
水野忠邦…老中
鳥居耀蔵…目付
奥田伝之丞

高野長英…蘭学者
田島耕作

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