藤沢周平の「闇の穴」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

★★★★★★★★☆☆

「闇の穴」は劇的とも言える終り方が印象的である。それは峰吉が最期に吐く科白「しろうとは、恐え」に集約されている。この科白の登場する部分には思わず唸ってしまった。ベストのタイミングで登場するのである。流石は藤沢周平である。

「荒れ野」「夜が軋む」は一種の民話・説話的な話である。

「荒れ野」に関しては、時代設定は恐らく江戸時代ではないと思われる。なぜなら、江戸時代において、武装した武士が街道を行き来し、またその武士が烏帽子の紐を結んでいるとは考えづらいからである。

さて、両作品ともに、「今昔物語」等の古典的説話集に収録されているような、いわゆる怪奇・伝奇ものの系統である。つまり、日本の民話・説話が持つ独特の不気味さ怖さというものを引継いでいる作品といえる。

日本のホラーが注目されている昨今であるが、日本のホラーの持つ不気味さ怖さというものの原点はこうした民話・説話にあり、それが現代に引継がれているのだと思う。

「小川の辺」が2011年に映画化された。

映画「小川の辺」(2011年)の観賞備忘録(感想とあらすじと情報を添えて)
原作に忠実な映画である。だが、原作のイメージを表現しきれているかというと、さにあらず。さりとて、具体的に悪い個所がここ!というのがない。いわば、平凡過ぎて、どうにもならない映画になってしまっている。
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内容/あらすじ/ネタバレ

木綿触れ

結城友助が家に戻るとはなえは縫物で夢中だった。それをみて友助は満足していた。友助夫婦は赤子を亡くしていた。それ以来はなえがふさぎ込んでいたので、気が晴れるのならばと、はなえに絹を買い与えたのだが、これがよかったようである。

だが、藩は折から倹約の令を出していた。それは、着るものにも及び、絹は駄目になり、木綿だけにせよとのお達しが出た。
 

小川の辺

戌井朔之助が月番家老の助川権之丞から呼ばれて執務室で聞かされたのは予想通りのことだった。

いま藩では脱藩した佐久間森衛に討手を出している。佐久間は脱藩するときに妻を同行した。子はいない。佐久間の嫁は朔之助の妹・田鶴である。

そして朔之助が言い渡されたのは、佐久間森衛を討てというものだった。朔之助は絶句して、一度は断った。

だが、佐久間を討てるものは朔之助を置いてほかにはいなかった。藩としては背に腹は代えられぬということだった。田鶴は気が強く、そのため佐久間を討とうとする時に兄の朔之助に刃向かう可能性がある。

朔之助は母・以瀬に田鶴を連れ帰るつもりだと告げたが、父・忠左衛門はもし手向かってきたら斬れと、きっぱり言った。田鶴は母の溺愛を受けて育ってきた。

以瀬は忠左衛門に、朔之助と田鶴に剣術を仕込んだことを詰り始めた。忠左衛門は朔之助、田鶴の他に若党の新蔵にも剣術を仕込んでいた。

その新蔵が今度の道中の同行を志願した。新蔵は戌井家の奉公人だが、戌井家の屋敷で生まれ、子供のころは朔之助、田鶴と兄弟同様に育った。年は田鶴より一つ上である。いまも朔之助は新蔵を並の奉公人扱いはしていないつもりである。

朔之助は新蔵を連れて行くことにした。昔から田鶴と新蔵は仲がよかった。そういう点も朔之助は考えたのだ。

朔之助は佐久間に脱藩を勧めたのは田鶴だと思っている。謹慎していた佐久間にさらに重い処分が出ると感じ、勧めたのだと思っている。それだけ夫婦の結びつきは強いと朔之助は感じていた。だから、田鶴は手向かってくるはず…。

朔之助と新蔵が海坂城下を発った。

佐久間が受けた咎めだが、謹慎するほどのものかという疑問がある。

今年の一月に佐久間は藩主あてに一通の上書を提出した。佐久間は郡代次席で、その立場から農政の改革を提案したのだ。上書は藩主・主殿頭を批判したものになったが、目的は政治顧問ともいうべき侍医鹿沢堯伯を退けることにあるのは明白だった。

佐久間の上書は鹿沢を追い詰めることに成功したが、藩主の怒りを買うことになった。

朔之助は佐久間も軽率だと思っていた。今度の一件も直接藩主に提出しなくてもよかったのだ。だが、そうしたところが佐久間らしいと言えた。

宇都宮で朔之助は新蔵に声をかけた。

朔之助は田鶴と新蔵が喧嘩した姿を見たことがなかった。

朔之助が六歳の新蔵、五歳の田鶴を連れて天神川にいった時のことを思い出していた。あの時、田鶴が溺れそうになった。田鶴は新蔵のいうことを聞いて、溺れずに済んだ。あるいは今回も同じかもしれないと朔之助は期待していた。

新蔵は朔之助と佐久間が斬り合う時、田鶴を離れた所に連れていくつもりだった。それが新蔵が同行を求めた理由だった。

田鶴のことは新蔵に任せておけばよいのかもしれない。そう思うと朔之助の気持ちが少し軽くなった。

新河岸で新蔵は佐久間夫婦を見つけた。

田鶴の姿を見て新蔵は田鶴が嫁に入る三日前のことを思い出していた。決して思いだしてはいけない思い出である。

斬り合いは長かったが、朔之助は佐久間を刺した。田鶴がいない間に斬り合いをしたのだ。だが、終えると田鶴が姿を見せた。そして、朔之助に挑んできた…。
 

闇の穴

おなみの前に現れたのは別れた亭主・峰吉である。峰吉はおなみに別に用があるわけではないという。しかし、この後も度々やってくる。おなみからの話を聞いた今の亭主・喜七は一度峰吉に訳を問いただすと意気込むが何の収穫も得られない。

やがて、峰吉がおなみに突きつけたのは、あるものをあるところに届けて欲しいというものだった。
 

閉ざされた口

長屋の裏の雑木林で金貸しの島右衛門が殺された。これを側で遊んでいたおようが目撃した。それ以来、おようは口をきかなくなってしまった。

岡っ引の伊平次はおようが犯人を目撃しているものと思っている。そのために、おようは口がきけなくなったのだと推測しているのだ。
 

狂気

男は始め幼い女の子を哀れに思って足を止めていた。女の子が母親に反抗してだだをこねていると、母親は怒って歩いていってしまう。

しかし、子供はそんなことを気にしていない。危なかっしく思った男は女の子に声をかけた。だが、このことが男に久しく忘れていたある感覚を呼び覚ましてしまった。
 

荒れ野

明舜が京の寺から旅をして辿り着いたのは一軒の家だった。家には女が一人で住んでいた。女の亭主は山に狩りに出かけて雪の降る頃まで戻らないという。

その家で明舜は度々肉を食った。僧である明舜は一度は断ったものの、疲れがとれるということで口にした。女は猿の肉だという。

明舜はずるずると女のところにいた。女の色に負けてしまったのだ。しかし、ある日明舜は女の素性に疑いを抱くような光景を目にする。その光景とは…
 

夜が軋む

飯盛り女が語る身の上話。それは、亭主の仙十郎と山深い土地で過ごしている時のこと。仙十郎はこけしが評判の職人だったが、生活が豊かになったわけではなかった。

あるとき食のことを欠き、近くの鷹蔵のところに穀物を借りに行った。鷹蔵は女に気があるらしいそぶりを見せる。

そして、ある冬の雪が積もっている日、仙十郎が留守でいない晩のこと。家が軋み、人がいるような気配がある。女は鷹蔵が来たのだと思った。

しかし、ついに家には入ってこなかった。翌朝、女は鷹蔵の死体を発見する。

そして、翌年…

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本書について

藤沢周平
闇の穴
新潮文庫 約二五〇頁
短編集
江戸時代
 

目次

木綿触れ
小川の辺
闇の穴
閉ざされた口
狂気
荒れ野
夜が軋む

登場人物

木綿触れ
 結城友助
 はなえ
 中台八十郎
 
小川の辺
 戌井朔之助
 佐久間森衛
 田鶴…妹
 以瀬…母
 忠左衛門…父
 幾久…妻
 新蔵…若党
 
闇の穴
 おなみ
 ちえ
 喜七
 峰吉
 いさ
 
閉ざされた口
 おすま
 およう
 伊平次…岡っ引
 吉蔵
 英助
 清兵衛
 
狂気
 大倉屋新兵衛
 塚原主計…同心
 伊勢次…岡っ引
 
荒れ野
 明舜
 
夜が軋む
 飯盛り女
 仙十郎
 鷹蔵

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