藤沢周平の「三屋清左衛門残日録」を読んだ感想とあらすじ(最高に面白い!)

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覚書/感想/コメント

蝉しぐれ」と甲乙つけがたい名作である。連作という形を取っているが、全体を通じての話の流れがある。

さて、「三屋清左衛門残日録」では老年というわけではないが、仕事を引退した者の悲哀と希望がうまく画かれている。

話の中には、清左衛門と同年代の人々の悲喜こもごもがうまく引き合いに出されている。清左衛門は前藩主の用人まで務めたのであるから、成功者である。

しかし、その影では、清左衛門のようには成功しなかった、かつての旧友たちがいる。

ある者は清左衛門を妬み、ある者は必死に今を生き、ある者は現在の境遇をそのままで受入れている。清左衛門は、そういうかつての旧友たちと交わることで、ある意味失った時間を取り戻しつつあるのかも知れない。

物語の骨格には、藩内における派閥抗争があるのだが、この抗争が終了した時点で、初めて清左衛門は完全な隠居生活に入ったのではないか。

清左衛門は「最後のご奉公」と思ったこのことは、清左衛門の用人としての生活もようやくに終了したのだと思う。

そして、やっと隠居した清左衛門の見たのは、中風で倒れた旧友の大塚平八が歩行の訓練をしている姿だった。

このシーンは、圧巻である!!!。全てを吹っ切った者の感じる爽やかさと、これからの清左衛門の人生に希望を感じさせるラストである。

これも、藤沢周平のみならず時代小説のなかでも筆頭にあげられる名著の一つである。

内容/あらすじ/ネタバレ

前藩主の用人を務めた三屋清左衛門は、藩主が替わるのを機に、隠居して息子の又四郎に家を継がせた。

隠居前には、悠々自適な隠居生活を考えていたが、実際はそうではなかった。寂寥とした感があるものだったのである。

そんな中、幼い頃からの友人で現役の奉行を務める佐伯熊太から、手助けを頼まれる。

かつて、殿のお手がついたおうめが捨て扶持をもらっている身分でありながら、身籠ったらしいというのだ。

外聞が悪いので、熊太は清左衛門に真相を調べてくれと頼まれる。

清左衛門は、隠居を気に再び剣術と勉学を始めようと思った。まずは足腰を鍛える意味で剣術の稽古を再開した。だが、長いこと怠ってきたせいで体中が悲鳴を上げていた。

そうして、隠居生活も軌道に乗ってきたとき、熊太から再び頼み事が舞い込んできた。今度は、高札場で切腹した安富源太夫が腹を切る直前に叫んだという女のことを調べてくれという。

こうしたことが片づいた日。清左衛門は金井奥之助と再会する。かつてはあい並ぶ身分だったが、長い年月の間に天地の差が開いてしまった。

それは、かつての政変で所属すべき派閥を誤らなかった人間と、間違えた人間との差だった。この再会は清左衛門には苦いものとなった。

別の時、今度は旧友・大塚平八からかつて清左衛門が用人だったことを利用しての頼み事をされる。

こうした日々の中、藩ではかつての政変と同じく、朝田派と遠藤派が蠢き始めていた。清左衛門は極力関わらないようにしていたが徐々に係わるようになっていく。

清左衛門は隠居のみだからと思っていたが、かつて用人だったということは、やはりそれだけの重みがあるようだった。

そして、朝田派と遠藤派の抗争は徐々に熾烈さを増していくが、朝田派の動きに不穏なものがある。現藩主の弟である石見守が絡んでいるのである。

一方、この抗争とは別のところで、清左衛門の旧友・大塚平八が中風で倒れた。

本書について

藤沢周平
三屋清左衛門残日録
文春文庫 約四四〇頁
長編 江戸時代

目次

醜女
高札場
零落
白い顔
梅雨ぐもり
川の音
平八の汗
梅咲くころ
ならず者
草いきれ
霧の夜

立会い人
闇の談合
早春の光

登場人物

三屋清左衛門
又四郎
里江
佐伯熊太
大塚平八
中根弥三郎
平松与五郎
おみさ

石見守
朝田弓之助
閒島弥兵衛

おうめ
山根備中
安富源太夫
友世(もよ)
金井奥之助
波津
多美
藤川金吾
杉村要助
奈津
安富忠兵衛
黒田欣之助
おみよ
安西佐太夫
松江
野田平九郎
相庭与七郎
半田守右衛門
清次
金井祐之進
小沼惣兵衛
成瀬喜兵衛
小木慶三郎
納谷甚之丞
船越喜四郎

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