藤沢周平の「神隠し」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

ごくごく短い短編を集めた一冊。特に、「告白」は十三頁、「三年目」は六頁というほとんどショートショートといって良い程の短さである。

本短編集に収録されている短編の主人公達はそれぞれに何か鬱屈としたものを抱え込んで生きているのが多い。そうした登場人物の中での極めつけが「鬼」のサチであろう。

その容姿から鬼と呼ばれている娘の心境の変化がもたらす結末というのが、残酷であり悲惨ですらある。

また、「疫病神」もその題名の通り、疫病神が徐々に本性を現わしていく様が不気味である。誰かが言っていた言葉だが、悪魔は優しい顔をしてやってくるという。

悪魔も最初から本性を現わさないように、疫病神も最初からは本性を現わさないのだ。だが、本性を現わした時には既に逃げられない状態になっている。その怖さが効果的に書かれている作品である。

内容/あらすじ/ネタバレ

拐し

娘のお高が攫われたのは富岡八幡の祭礼の日だった。そして、現れたのが又次郎という男だった。又次郎は辰平に娘は無事にしているからと告げるが、いつものように金をせびる。

辰平はいつまでこんなことが続くのだろうかと思っていると、お高の婿になるはずの勝蔵が又次郎の後をつけてみると言い出す。そして…

昔の仲間

医者の見立てによると、宇兵衛の命はあと半年という。宇兵衛は何かやり残したことがないかと考えていると、ある男の顔が浮かんできた。

昔組んだ男で松蔵といった。二人で押し込みをしたのだ。今は紙屋の主におさまっている宇兵衛にしてみれば、松蔵が唯一の気がかりだった。松蔵から昔のことがばれるのではないか…

疫病神

妹のおくにがなかなか腰を上げようとしない。信蔵は苛立ってきた。やがて口を開いたおくにが言うのは驚くような話だった。

それは、父親の鹿十を見つけたというのだ。今は湯屋の釜番をしているらしい。

しかし、この鹿十は昔極道もので、家族をさんざんな目に遭わせた男である。どうするのか姉兄妹三人で相談することにした。

告白

善右衛門は娘の婚礼が終り家に戻ってきた時にふと思い出したことがあって、妻のおたみに聞いてみたいと思ったことがあった。

それは、昔おたみが行方不明になったことがあったのだが、それが一体どうしてだったのかというものだ。おたみが話すには…

三年目

おはるは三年前の約束を信じてずっと待っている。今日がその日なのだ。だが、約束したはずの男はまだ現れない。

サチはその容姿から鬼と呼ばれていた。そのことにひどく傷ついていたサチだった。ある日船に乗っている侍にかくまってもらうよう頼まれる。

人に頼られることのなかったサチは侍をかくまうことにした。そしてすぐにこの侍を捜している別の侍達が現れた。サチがかくまっている侍は榎並新三郎というらしい。

桃の木の下で

志穂は本家筋の鶴谷家から帰ろうとした時に亥八郎が城を下がってきて話し込んでしまったため、帰りが遅くなっていた。その帰り道のこと、志穂の前で斬り合いがあった。

そして、その斬りつけている相手の顔を見てしまった。それは志穂の知っている人間だった。このことを帰って夫の麻之助に話すと、周りには話すなと言う。しかし、その後志穂が襲われるようなことがあり、やがて真相がはっきりしてくるが…

小鶴

神名吉左衛門の夫婦喧嘩は城中にも聞こえるほど有名なものだった。この夫婦には子供がいなかった。本来なら養子が必要なのだが、この喧嘩のため養子のなり手すらなかった。

そんなある日、吉右衛門が娘を連れて帰ってきた。聞いてみると娘が放心の体だったので心配して連れて帰ってきたという。娘は名を小鶴と言ったが、記憶がなかった。

暗い渦

信蔵が仕事帰りに見かけたのは八年ぶりのおゆうの姿だった。最近はすっかり思い出すことがなかったおゆうだった。だが、昔はおゆうが信蔵の妻になるはずだったのである。おゆうの今の暮らしをそれとなく聞いてみる信蔵だったが…

夜の雷雨

おつねは孫の清太がいつかは目が覚めて戻ってくることを信じていた。清太はいっぱしの極道ものになってしまっていたのだ。そんなおつねが清太の他に会うのを楽しみにしている娘がいた。

おきくという娘とはある事があって話をするようになったのである。そのおきくが病で倒れていることを知ったおつねはおきくの看病をすることにするが…

神隠し

岡っ引の巳之助はある鬱屈としたものを抱え込んで生きていた。その巳之助のところに伊沢屋のおかみが行方不明になったので探して欲しいとの依頼がきた。

巳之助は伊沢屋に行って話を聞いて、探し始めるが、程なくおかみのお品が戻ってきたとの連絡を受ける。唖然とする巳之助だが、伊沢屋に行ってみてお品に会うと、巳之助は引っかかりを覚えた。そして、この数日の間のお品の足取りを辿ってみることにした。すると…

本書について

藤沢周平
神隠し
新潮文庫 約三〇〇頁
短編集
江戸時代

目次

拐し
昔の仲間
疫病神
告白
三年目

桃の木の下で
小鶴
暗い渦
夜の雷雨
神隠し

登場人物

拐し
 辰平
 お高…辰平の娘
 又次郎
 勝蔵

昔の仲間
 宇兵衛
 松蔵
 幸太…岡っ引

疫病神
 信蔵
 おくに…妹
 おしな…姉
 鹿十…父親

告白
 善右衛門
 おたみ

三年目
 おはる
 清助


 サチ
 榎並新三郎

桃の木の下で
 志穂
 鹿閒麻之助
 鶴谷亥八郎

小鶴
 神名吉左衛門
 登米
 小鶴

暗い渦
 信蔵
 おゆう
 おぎん

夜の雷雨
 おつね
 清太…孫
 おきく

神隠し
 巳之助…岡っ引
 弥十…下っ引
 伊沢屋新兵衛
 お品

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