藤沢周平の「周平独言」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

★★★★★★☆☆☆☆

最初は歴史読物といった感じの内容である。エッセーというよりは、簡単な読物である。このことは、あとがきでも書かれている。エッセー集に入れるのはどうかと思うが、どこにも入れる場所がないので、本書に入れたということらしい。

ここでは、藤沢周平が実際に小説として取り上げた人物についても書かれているので、小説を読む際、もしくは読んだあとでの参考になる内容である。

周平独言は、これもあとがきに書かれているのだが、藤沢周平の郷里鶴岡の出版社・東北出版企画から発刊されている月刊グラフ山形に連載していたものである。

郷里の出版社で書かれていたものであるため、ローカルな話題が満載になっている。ただ、ローカルに過ぎる部分がある。

ここで多く語られるのは、郷土鶴岡のことや、もう少し場所を広げて、荘内のことなど、藤沢周平の原風景とでもいうべき土地のことである。藤沢周平の作品には欠かせない荘内のことを、少しでも読みとれれば、小説を読む際の一助にはなるだろう。
 
【ピックアップ】

「三人の予見者」

文中に幕末の荘内藩士中村治郎兵衛の事が書かれている。中村はすぐれた戦術家であったが、同時に奇人でもあったそうだ。

喧嘩と博奕が大好きで、犬の喧嘩があると、駆けつけて「ホキ、ホキ」とけしかける声をかけていたようである。また、火事があると二里くらいのところなら必ず駆けつけたそうだ。

これとそっくりな設定の小説がある。「静かな木」(新潮社)に収録されている「岡安家の犬」である。この中の登場人物で隠居の岡安十左衛門の設定が、まさにこの中村治郎兵衛とそっくりなのである。
 
「歴史のわからなさ」

ここで藤沢周平は良質の史料とされるものでも、全面的には信じがたいのではないかと述べている。

一流といわれる学者が書いたものであっても、その内容に間違いがあることがしばしばある。それは、単純な勘違いであったり、調べ忘れであったりと学者としての能力を疑いたくなるようなお粗末なものであったりする。

藤沢周平がこういうことを述べているのは、裏を返せば藤沢周平がどのようにして史料と向き合っていたのかが分かるというものである。
 
「周五郎さんのこと」

藤沢周平の好きな作家が列挙されている。好きな作家はシュトルム、カロッサ、チエホフ、水上滝太郎、神西清だそうだ。
 
「初冬の鶴岡」

藤沢周平にとって、郷里は普段より心が傷つきやすくなる場所であるという。それは、若さにまかせて、人を傷つけた記憶が、身をよじるような悔恨をともなって甦るからだという。身につまされる内容である。
 
「流行嫌い」

このエッセーに限らず、このエッセー集では端々で述べられていることだが、藤沢周平は自身が流行ものを追いかけるのが嫌いな人間であるといっている。そして同時に偏屈さも持ち合わせていると述べている。このあたりが小説から微塵も感じられないから面白い。
 
「書斎のことなど」

もとでのかからない小説は、さほどよくない。そう藤沢周平は述べている。つまり、小説を書くにあたって、必要ならば資料となる本を購入し、また、取材旅行もしなければならないということなのだ。

そういえば、時代小説・歴史小説の大家には取材旅行を精力的に行った人が多い気がする。このことは時代小説・歴史小説に限った話ではなく、現代小説についてもいえることだと思う。
 
「木瓜との出会い」

藤沢周平作品によく登場する海坂藩は架空の藩だが、その名の由来を紹介している。
 
「コンニチハ赤チャン」

小説を書く大変さを述べている。藤沢周平は小説をすらすらと書けるのではなく、漫然と机の前に坐っていることが多かったらしい。その間にすることといえば、鼻毛を抜いたり、万年筆のインクを入れ直したり、原稿用紙をいじったりである。

そういえば、明治の文豪にも似たことをしていた人がいたような…。その文豪は鼻毛を抜いては一本一本並べていたそうで…
 
「汗だくの格闘」

直木三十五賞受賞作品の題名誕生秘話。
 
「静かな世界」「風景と人物」「展覧会の絵」

藤沢周平の一側面を覗き見る思いがした内容。絵を見るのが好きで、西洋画なら風景画、日本画なら人物画が好みだったようである。

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本書について

藤沢周平
周平独言
書かれた時期:-
刊行:1981年8月
中公文庫 約四五五頁
 

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目次

時代のぬくもり
 鳥居元忠の奮戦
 荘内藩主酒井忠発の明暗
 大石内蔵助の真意
 一茶という人
 遅れて来た志士 雲井龍雄
 三人の予見者
 悪七兵衛景清-頼朝を狙う刺客の実像
 寺坂吉右衛門の憂いと翳
 歴史のわからなさ
 時代小説と私
 周五郎さんのこと
 史実と想像力
 時代のぬくもり
 時代小説の可能性
 謎の写楽
 
三つの城下町
 羽黒の呪術者たち
 出羽三山
 帰郷して
 初冬の鶴岡
 三つの城下町
 ある講演
 日本海の魚
 荘内の酒と肴
 ふるさとの民具
周平独言
 一杯のコーヒー
 流行嫌い
 小さな親切
 えらい人
 宮崎先生
 村に来た人たち
 陸羽東線
 今年の夏
 まるめろ
 書斎のことなど
 侮るべからず
 
汗だくの格闘
 ハタ迷惑なジンクス
 木瓜との出会い
 天皇の映像
 散歩するにあたり
 コンニチハ赤チャン
 幻の歌人
 未塾児
 さらば夏のめまいよ
 林にくる鳥たち
 ことばの味
 賭けごと
 汗だくの格闘
 土地の言葉
 母系の血
 六月の赤い鳥
 行倒れ寸前
 人なみの人間に
 日程表
 集票能力
 母の顔
 頭髪無情
 銀座の背中
 テレビ小景
 偏った記憶
 押し売り
 初夏の庭
 静かな世界
 風景と人物
 展覧会の絵

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