クリスチャン・ジャックの「太陽の王ラムセス」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

伝説の、いや神話の時代の大河物語といってよいだろう。

なにせ、トロイ戦争の時代と同じであり、モーゼの出エジプトの時代と同じなのである。いずれも神話の時代の話である。

この物語は、そうした神話の時代らしい側面も描いていれば、人間同士の愛、信頼、葛藤、憎しみも描いている。大河物語として十分な面白さを味わえる。

物語の主人公は、紀元前1279年から前1212年にかけて67年間エジプトを治めた<光の息子>ラムセス。この大河物語は、ラムセスが即位してから死ぬまでの期間を書いている力作長篇である。

以前にもラムセスというファラオがいたことから、通常ラムセス2世として知られる。九十歳を超える長寿をほこり、エジプトの最盛期を導き、現在でもネフェルタリが君臨するアブ・シンベルの二神殿、カルナク神殿の大列柱室、ルクソール神殿の巨大な石像などにその面影を見ることが出来る。

ラムセスは生涯を通して常に「マアト」の道に従って決断し、行動した。「マアト」は正しさ、秩序、正義、真理を意味する概念であり、世界に調和と美を創り出す存在である。

ラムセスを補佐する人間、敵対する人間も多種で、読んでいて飽きさせない。

大食漢でいつも何かを食べているにもかかわらず痩せている書記のアメニ。貴族らしく着飾った天才的な外交官アーシャ。蛇にみせられた魔術師のセタオー。元海賊で近衛隊長のセラマンナ。そして、普遍の愛をラムセスに与えるネフェルタリ。ラムセスを守る人間たちは、一様に癖もあり特徴的である。

同様に癖があるのが、ラムセスに敵対する人物たちである。ラムセスの兄・シェナル。リビアの魔術師オフィール。ヒッタイトの皇帝の息子・ウルヒテシュプ。

こうした人物たちが織りなす物語が面白くないはずがない。

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内容/あらすじ/ネタバレ

太陽の王ラムセス

十四歳のラムセスは蒼白になりながら、荒々しい牡牛と対峙していた。

この日、ラムセスは初めて父親であるエジプトのファラオ・セティ王に会った。突然現れ、町から遠く離れた場所に連れてこられたのだ。

そして、荒々しい牡牛の試練を与えられたのだ。ラムセスの幼年期は終わりを告げていた。セティ王の後のファラオにはラムセスの兄・シェナルがつくと見られていた。

ラムセスはこの夜、自分と同じく宮殿の養育係たちに育てられた仲間と会う手はずになっていた。やってきたのは、セタオー、アメニ、アーシャ、モーゼの四人であった。

彼らはこれから任命され新たな役につくことになる。セタオーは魔術師の道、アメニは宮殿の書記、アーシャは外交官の道、モーゼはファイユーム地方の監督官補である。

ラムセスにはこれといった役はなかった。大きな夢を持っていたラムセスには屈辱的なことであった。こうした中で、ラムセスはイシスという美しい娘と知り合いになった。

友に悲劇が起きていた。アメニである。上司の誤りを正そうとして、逆にひどい仕打ちを受けたのだ。アメニを救うためには王家の書記になるしかない。

そうすれば、専属の書記を任命することが出来るのだ。ラムセスはこの困難な試練に挑み、そして勝った。アメニはラムセスの専属書記となった。

…砂漠への狩猟が行われた。そこで、ラムセスに罠が仕掛けられていた。ラムセスは置いてけぼりをくらい、かつラムセスを狙う刺客に襲われる。だが、ラムセスは罠から抜け出すことに成功した。だが、一体誰が?

この罠のあと、ラムセスは再びファラオに連れ出された。今度は王家の書記としてファラオの行幸の詳細を記録しなければならない。こうしたことが幾度か行われた。

ファラオの行幸はいつも突然であり、ラムセスはその理由を知ることはなかった。だが、何かを伝えようとする意思を感じるのであった。こうした中、ヒッタイトとの戦争が始まった。南でも不穏な動きがある。

ラムセスの兄・シェナルは自分がファラオになるのに何の疑問も抱いていなかった。ただ、自分が確実にファラオになるにはラムセスがじゃまなのである。そのために、ラムセスの内側から崩していこうと考えたのだ。そのためにシェナルはラムセスの友・アーシャを味方に引き入れていた。

だが、信じられないことが起きた。ラムセスが次のファラオになることが決まったのである。シェナルはラムセスの臣下として過ごすことなど耐えられることではなかった。

闇での戦いを決意した。ちょうどギリシャのスパルタ王メネラオスが船の修理のためにエジプトの協力を仰ぎに来ていた時である。シェナルはメネラオスと手を組んだ。一方、ラムセスはネフェルタリを妻とした。

大神殿

セティ王が亡くなった。しばらくの間喪に服され、その後にラムセスが即位することになっていた。

シェナルは執拗にファラオの座を狙っていた。ラムセスの友・モーゼにも手を伸ばしていた。メンフィスの人々は新しいファラオの手腕に不安を抱いている。果たして偉大なセティ王と同じように治められるのか。

シェナルはそうした状況をつけいっていたのだ。それは襲撃という形で現れた。だが、ラムセスへの襲撃はことごとく失敗した。

ヒッタイトの諜者も暗躍していた。ライアというシリア人の商人はその諜報網の一端を担っていた。そのライアがシェナルに近づいた。互いに利する部分があると判断したのだ。

シェナルはライアと手を結ぶことにした。だが、このことはアーシャには伝えなかった。シェナルは自分の駒として動く人間が相互に連絡をとることに意味を見いだせなかったのだ。自分だけが知っていればよい。

しかし、状況はシェナルの考えるようには進まず、ラムセスが即位した。

ラムセスは即位してすぐに渦に巻き込まれた。それを慎重にかつ大胆に処理していった。まずは人事をいじることであった。その人事はラムセスの周辺だけに留まらず、カルナクのアメン神の大神官にも及んだ。すべてはマアトに基づいて政治をするためである。

シェナルはラムセスに恭順の態度を示すことにした。そのためには自分から折れることが必要である。ラムセスに願ったのは外務卿の地位だった。これが受け入れられた。シェナルは自分の考えが上手くいったことにほくそ笑んだ。

ラムセスを狙うのはシェナルばかりでなかった。リビア人の魔術師・オフィールはリタという娘を連れ、ラムセスの命を狙っていた。そのオフィールが近づいたのは、ラムセスの元養育係のサリとラムセスの姉であるドレントだった。二人はファラオとなったラムセスが自分たちに冷たいと恨んでいたのだ。

こうした魔法による攻撃からラムセスの身を守っていたのは、第一王妃のネフェルタリだった。

ラムセスは壮大な計画を考えていた。遷都である。その工事の指揮にモーゼを当てることにした。新しい首都の名はペル・ラムセス、つまりラムセスの都市である。

カデシュの戦い

ヒッタイト軍が動き始めた。戦争が始まったのだ。

一方、モーゼの中に心の変化があった。このことを素早く見抜いたのは近衛隊長のセラマンナだった。モーゼは注意する必要がある。だが、それよりも今はヒッタイトだ。

ヒッタイトの動きに会わせてオフィールも動いた。ラムセスを守っている魔法の盾を打ち破るのだ。そのためにはネフェルタリを打ち破らねばならない。彼女の身の回りのものを盗み、呪いをかけるのだ。そして、ネフェルタリは原因不明の病に倒れた。

…ラムセス自ら出陣した。ヒッタイトと衝突する前に、ヒッタイトに寝返った砦を落としていった。そして、カデシュの砦を攻めるかどうかで悩んだが、いったんエジプトに引き返すことにした。

ラムセスの迅速な行動はヒッタイト皇帝のムワタリの想像を超えていた。エジプトへの侵攻。それはヒッタイトにとっての悲願である。ラムセスが力を発揮できない場所、カデシュで決戦を行う。それが考えだった。再び戦争が始まろうとしていた。

その前に、ラムセスは各神殿を強化することにした。とくに時を越える神殿のラムセウムの建設をいそいでいた。これが正義の行使には不可欠だと判断したためである。同時に、ラムセスはアーシャをヒッタイトへ送り込んだ。

ヒッタイトの準備がどれくらい進んでいるかを把握する必要があったためである。アーシャはシェナルに取り入っているだけで、ラムセスのために働いていた。ラムセスを一度として裏切ることはしなかったのだ。

ネフェルタリの病状は芳しくない。ラムセスはネフェルタリを連れて南へ下った。ネフェルタリを呪いから守るために必要なことだった。

そして、カデシュの戦いが始まろうとしていた…。

アブ・シンベルの王妃

アーシャが捕らわれた。ラムセスはアーシャを取り戻すために軍を動かそうとしていた。一方、アーシャも自力での脱出を模索していた。そして、アーシャの救出をえる。

ラムセスの周りは不穏に満ちていた。兄・シェナルは死罪に相当する刑を申し渡したが、移送途中で嵐にあり生死が不明となっていた。また、友・モーゼはヘブライ人をエジプトから連れ出し、神からの約束の地を目指すという。

魔術師オフィールも動いていた。次に狙いを定めたのは、ラムセスの長男・カーであった。邪悪なオフィールの存在に気づいたラムセスはカーにセタオーをつけ、魔力によって守ることにした。

ヒッタイトでは皇帝ムワタリが迷っていた。次の皇帝を息子のウルヒテシュプにするのか、弟のハットゥシリにするのか。それに、ヒッタイトはエジプト攻撃の度重なる失敗によって土台が揺らぎ始めていた。

また、アッシリアがしだいに脅威となってきていた。アーシャはこうしたヒッタイトの状況をふまえ、ラムセスに和平をと勧めていた。

ムワタリはウルヒテシュプに強い権限を与えた。これによって次の皇帝はウルヒテシュプと目されるようになった。一方、アーシャはラムセスの大使としてヒッタイトに向かっていった。そして、ハットゥシリに会う。

アーシャはハットゥシリに和平を勧めた。だが、実権のなくなっているハットゥシリにはどうすることも出来ない。一計を案じたのはアーシャであった。

…ラムセスはネフェルタリと南に向かっていた。それを迎え撃とうとしていたのは行方不明となっていたシェナルである。だが、すべてことごとく期待を裏切る結果となり、シェナルの野望は完全に費えることになる。

そして、ヒッタイトの脅威も、皇帝がハットゥシリとなることによって一端の沈静をみせる。皇帝争いに敗れたウルヒテシュプはエジプトへ逃げてきていた。

アカシアの樹の下で

ウルヒテシュプは軟禁状態から解放され、自由の身となった。だが、心の中ではラムセスへの復讐心が芽生えていた。そこにライアが現れ、オフィールの弟であるマルフィも味方となってラムセスを狙い始めた。

エジプトに再び嵐が訪れようとしているのをラムセスは感じていた。ウルヒテシュプの存在もあるが、ヒッタイトから無理難題が伝えられてきたのだ。

ネフェルタリの後に第一王妃となっていたイシスを追い出して、ヒッタイト皇帝のハットゥシリの娘を第一王妃に置けというのだ。受け入れがたい内容である。再び戦争を予感させていた。

アーシャたちは必死に和平の道を探っていたが、絶望的な交渉であった。しかし、この困難な状況を救ったのは、イシスだった。だが、それは悲劇的な決断だったのである。

しかし、これを打ち破るように、和平の交渉にヒッタイトに向かっていったアーシャが何物かに殺された。だが、アーシャの最期の知恵によって戦争は回避される。

ヒッタイトから迎えられる皇女はマー=ホルとなり、エジプト人になった。治世三十四年目にして、ヒッタイトとの恒久的な平和が樹立された。

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本書について

クリスチャン・ジャック
太陽の王ラムセス
角川文庫 約2350頁
エジプト
紀元前13世紀 ラムセス大王

目次

「太陽の王ラムセス」
序文
第一章 曙
第二章 嵐
第三章 道
第四章 闇
第五章 戦
第六章 覚醒
第七章 陰謀
第八章 迷い
第九章 旅路
第十章 嘘
第十一章 騒乱
第十二章 真実
第十三章 運命
「大神殿」
第一章 友情
第二章 異変
第三章 暗雲
第四章 玉座
第五章 魔性
第六章 大志
第七章 吉兆
第八章 天命
第九章 呪詛
第十章 飛躍
第十一章 決意
「カデシュの戦い」
第一章 影
第二章 裏切り
第三章 怨恨
第四章 獅子
第五章 罠
第六章 秘術
第七章 密使
第八章 死闘
第九章 明暗
「アブ・シンベルの王妃」
第一章 咆哮
第二章 炎
第三章 悪鬼
第四章 異郷
第五章 嵐神
第六章 賭
第七章 妬心
第八章 骨肉
第九章 決裂
第十章 愛
「アカシアの樹の下で」
第一章 鼓動
第二章 使命
第三章 悪疫
第四章 犠牲
第五章 祭礼
第六章 皇女
第七章 乳香
第八章 裁き
第九章 蠢動
第十章 灼熱
第十一章 太陽

登場人物

ラムセス…セティ王第二王子、ラムセス大王
ネフェルタリ…ラムセスの第一王妃
<門番>…犬
<殺し屋>…ライオン
イシス…貴族出身の娘、ラムセスの第二王妃
カー…ラムセスの長男
メリトアメン…ラムセスの娘
メルエンプタハ…ラムセスの次男
セティ…古代エジプト第十九王朝二代目ファラオ
トーヤ…セティ王第一王妃、ラムセスの母
アメニ…ラムセスの友、ラムセスの専属書記
セタオー…ラムセスの友、蛇遣い、魔術師
ロータス…セタオーの妻
アーシャ…ラムセスの友、外交官
セラマンナ…近衛隊長
モーゼ…ラムセスの友、ヘブライ人
アブネル…ヘブライ人
アロン…ヘブライ人
ネジェム…農務卿
ロメ…執事
パリアマク…侍医
ネフェレト…侍医
ネブー…カルナク神殿の大神官
バクヘン…カルナク神殿の神官
ホメロス…ギリシャ人、「イリアス」「オデュッセイア」などを書いた詩人
シェナル…セティ王第一王子、ラムセスの兄
メバ…外交官
オフィール…リビアの魔術師
リタ
ライア…シリア人商人、ヒッタイトの諜者
アモス…ベドウィン
バドゥク…ベドウィン
マルフィ…オフィールの弟
サリ…ラムセスの養育係
ドレント…サリの妻、ラムセスの姉
ムワタリ…ヒッタイト皇帝
ウルヒテシュプ…ムワタリの息子
タニト
ハットゥシリ…ムワタリの弟
プトゥヘパ…ハットゥシリの妻
マー=ホル…ヒッタイトの皇女、ラムセスに嫁ぐ
メネラオス…スパルタ王
ヘレネ…妃

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