宮城谷昌光の「太公望(中)」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント


★★★★★★☆☆☆☆

太公望といえば有名なことわざがある。「覆水、盆に返らず」

太公望が周に仕官する前、女と結婚したが仕事もせずに本ばかり読んでいたので離縁された。

のちに、太公望が斉に封ぜられるようになると、女は復縁を申し出たが、望は盆の上に水の入った器の水を床にこぼして、「この水を盆の上に戻してみよ。」と言った。

女はやってみたが当然出来ない。「一度こぼれた水は二度と盆の上に戻る事は無い。それと同じように私とお前との間も元に戻る事はありえないのだ。」と復縁を断った。

本当は、漢の朱買臣の逸話を換骨奪胎したといわれているように、まったくの作り話らしい。

というのも、望の時代、本がない。そして、盆もなかったというのが真相のようだ。

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内容/あらすじ/ネタバレ

望に男児が生まれた。伋と命名した。

望は商王朝を倒すために新邑にいくと逢尊に打ち明けた。鬼公は必ず商王から離れるはずである。そのとき、羌族に力を貸してくれるはずである。革命が成功すれば、鬼公が王になる。

逢尊は望が王になれという。庶民から王位についたものがかつている。たったひとりだ。名を舜という。東方の出身であり、商の高祖である。

望は東方を調べるために出かけた。逢尊は青年をつけた。咺という。奴隷である。春が終わるころ、望の配下は二人になった。牙という童子が仕えるようになった。

秋になること、妻の逢青が女児を生んだが、逢青が亡くなってしまった。望は呆然とし、そして泣いた。

鄭北で別れた後、ゆくえのわからなくなっていた員が望の前に立っていた。

仍を襲ったが、逆に殺されそうになったのだという。

員の話から商王朝がすべてがうまくいっているわけではないらしいということが判った。人方という異民族が、頑強に抵抗しているのだという。

鬼公が三公の位についたという。

代わりに九公がおとされた、九公の娘に仕えている継が心配である。商王と九公との間に何があったのか…。

望が見た新邑は竣工したばかりである。

政治の中心はここに移された。受王もここにいることになるが、このときは不在だった。

討伐の途中で一人の美女を手に入れていた。名を「妲己」といった。

望は鬼公を訪ねた。猶子の子良が出てきて望を打擲した。

望はこのたびのことで羌族は鬼方と組むべきではないことを教わった。

商と戦って勝った族がいる。周がそうである。もうひとつ、周と同じく西方にあるのだが、召という。

周公を中心にして商王の力政に反対する勢力が結集する気配がある。この話を望にしたのが周公の子、のちの周公旦である。小子旦は望に挙兵を知ったら親友を混乱させる手を打ってくれないかと頼んできた。

さきに立たず、さきに攻めず、さきに勝たず。それが全てである。望は子旦のために周に献策した。

三公が商王朝打倒の兵をあげても、周公には静観してもらう。中華が乱れに乱れてから腰を上げても遅くはない。

継を助け出すために望は動き始めた。

その過程で、有蘇氏の公女に会った。この公女こそやがて王朝の命運を左右することになる。妲己である。

望が蘇侯をしのぐ器量の大きさを持っていることに最初に気付いたのは盲目の史官の磊老であったかもしれない。

磊老は心の目で人物を見るが、その目に収まらないのが望の像であった。

磊老は望に故事を語っていた。帝舜からはじまり、望には生まれて初めて聞く話である。そして、血胤によって王が定められたのではない事実が太古にあった。舜と禹には血のつながりはない。だが禹は王位についた。

人が人を決める。鬼神や上帝が決めるわけではない。商王のもとから諸侯が去れば商王朝は崩壊する。そのことがわかった。

講和は三回で終わった。

その最後で磊老は伊尹の名を出した。夏王朝を滅ぼし、商王朝を興した本当の人物だという。

その名が出たとき、一瞬であるが室内に清澄の気が立ったように望には感じた。

伊尹とは何者か。伊尹は自分にかかわりがあると感じた。

伊尹は厨人である。それが王の補佐の席にいた。奇蹟といってもよいことだった。庶民が政治を行ったのだ。

滅ぶ側に立つ者はそういう逸材を見えないだろう。伊尹は時の裂け目から現出したような人物である。

時を裂こうとしたのは湯王であり、裂かせまいとしてのが桀王である。それゆえに桀王には伊尹が見えるはずはないと望は思った。

受王の最盛期は十祀から十五祀までであろう。

その最盛期に差し掛かったころ、王朝転覆の陰謀があちこちで誕生していた。

望は馴の家を訪ねた。家には参がいた。

望はこの参こそが闇の帝王であることをわかっていた。参が仕えていた貴人の剣術と望の剣術は似ている。

二人は同じ人に仕えていたことがわかった。

望は兵法家にとって神のごとき存在となる。

神意によって軍を動かす時代にあって、用兵とか戦略といったものは発想されにくかった。

幸か不幸か、望だけはこの時代が持つ感情と信仰の外にいた。そうした望の合理に満ちた思想に最初に染められたのは向族であった。

望にとって最もわかりにくいのが周公であった。

周公に初めて会った人はその長身に驚いたはずである。だが、世間はそのことを知らない。なぜなのか。周公は自分のことを外に見せないように心掛けているのだ。周公は得体がしれない。

二載ほどまえには受王の左右には箕子と比干がいたが、いまは比干の代わりに費中がおり、費中によって政治が行われているといってもよかった。

そして、受王は盛大な祭典を催そうとしていた。後世「酒池肉林」と呼ばれるものである。

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本書について

宮城谷昌光
太公望 中
文春文庫 約四九五頁

目次

落花流水
再会
闇の帝王
妲己
陰火
商の栄え
旅愁
疾走の時
長夜の宴

登場人物

望…のちの太公望呂尚
彪…羌族の少年たち
班…羌族の少年たち
呉…羌族の少年たち
詠…羌族の少年たち
継…羌族の童女
員…馬羌族、望の配下になる
咺…逢尊の奴隷から望の配下となる
牙…羌族の童子、望の配下となる
受王…商王朝の王、紂王とも呼ばれる
箕子…箕邑の主、受王の叔父
鬼公…鬼方の首長
子良…鬼公の猶子
小子旦…周公の四男、のちの周公旦
洞人…商の王子、望に剣と文字を教える
鄭凡…交易に携わる大賈
逢尊…望に協力する東方の豪族
参…商を恨む闇の組織の長
馴…参の養子
蘇侯…妲己の父
妲己…受王の寵姫となる

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