宮本昌孝の「ふたり道三(下)」を読んだ感想とあらすじ

覚書/感想/コメント


★★★★★★★☆☆☆

本書で重要なのは、大永の動乱である。

大永五年(一五二五)、長井一党が叛乱を起こし、長良川北岸の守護の本拠地を占領した。

この反乱の中で、土岐氏斎藤氏の大半は山間部へ一時避難した。避難した場所は武芸川町の汾陽寺の周辺だったと考えられているそうだ。

この美濃で起きた一大事について、周辺の諸大名の介入があった。越前の朝倉氏は守護土岐頼武を支援するために軍事介入し美濃に出陣して、美濃守護所の福光館を占拠した、ということだが、さらには浅井氏の動きなどもあって、もっと複雑だったようである。

内容/あらすじ/ネタバレ

長井新九郎は放魚と椿衆を放ち、熊神衆へのひそやかな攻撃を開始させた。奈良屋と山崎屋を潰された新九郎の恨みと無量斎は考えるだろうが、これは陽動作戦だった。

そして浅井亮政の助力を得た。

美濃大永の動乱は亮政の仕掛けによりはじまり、鷺山屋敷における新九郎と又四郎の密談の翌々年、大永五年(一五二五)の春だった。
この中で、新九郎は目覚ましい活躍をした。

新左衛門尉が襲われた。

新九郎は誰が襲ったかを知っていた。斎藤又四郎である。

新九郎が又四郎を謀反へと向かわせた目的は、妙全を滅ぼすことにある。又四郎が浅井勢を引き入れて、謀反の結構にいたれば、まことの首魁が妙全であることを、土岐頼武らの前で証明するつもりであった。

だが、こたびの襲撃がまことなら、これで妙全を追いこめる。だが、相手もさるもので、全ての証拠を消し去っていた。

美濃は不安定になっていた。美濃では新左衛門尉が死んでいると信じられていた。

一方で、近江でも異変が起こっていた。

その近江の浅井亮政は朝倉孝景とともに美濃一国を奪取しようと考えていた。

そして、新左衛門尉が生きていることが分かった。

美濃でこれほど権謀術数が渦巻いた夜はなかっただろう。浅井家と朝倉家の会見、神戸砦の惨劇、尾張織田家の参戦…。

大永の動乱から一年。

謀反軍撃破の立役者の一人になり、武人としての能力も見せつけた新九郎の名は美濃の中で高まった。

勢力は長井新左衛門尉一党と、長井越中守一党とで、ほぼ二分されていた。

関の方の新九郎に対する複雑な思いは深まるばかりであった。

小夜には一つの考えがあった。そして、関の方も小夜の正体を探っていた。

新左衛門尉が関の方と新九郎を放逐した。

新九郎はそれを聞き、呆然とした。

だが、関の方は新左衛門尉の愛情を死に物狂いで取り返そうとするだろう。関の方が考えていることに思いを寄せると、新九郎の総身の毛が逆立った。

関の方のなすことをみて、新九郎は狂気の沙汰だと思った。新九郎は底なしの淵へ突き落されたような思いであった。

何のためにいままで関の方とは心情的に対立しながらも、現実的には手を携えあってきたのか…。

関の方の暴走で、守護代斎藤利茂を射殺してしまった。

もはや、新九郎の野望達成どころか、それ以前の新左衛門尉を押し立てた美濃盗りへの布石も崩れ去ったというべきだろう。

新九郎は阿耶の実家山崎屋本家に身を寄せていた。

新左衛門尉は関の方の謀反の後、長井道三と名乗っていた。その道三は新九郎の再起が近いことを感じていた。

本書について

宮本昌孝
ふたり道三(下)
新潮文庫 約五五〇頁

目次

第二十三章 大永の動乱
第二十四章 関白の子
第二十五章 十郎の恋
第二十六章 椿衆惑乱
第二十七章 父子、決裂
第二十八章 折れた太刀
終章 草かんばし

登場人物

長井新左衛門尉(おどろ丸)→長井道三
関の方(錦弥)
長井新九郎規秀
放魚(松波庄五郎)
小夜
無量斎…裏青江
日運(南陽房)
浅井亮政
織田信定