宮本昌孝の「ふたり道三(上)」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント


★★★★★★★☆☆☆

斎藤道三による美濃の国盗りは道三一代のものではなく、父・長井新左衛門尉との父子2代にわたるという説が有力だそうだ。

これは岐阜県史編纂の過程で発見された「六角承禎条書写」によるものだそうだ。この古文書は道三の没後四年頃に書かれたものである。

この小説もこの「六角承禎条書写」をベースにしている。ベースにしているのは各登場人物もそうである。

従来は一代で戦国大名にのし上がったと思われており、北条早雲らと並ぶ下克上大名の典型とされた。

僧侶から油商人を経たというのも、従来のイメージである。

実態は、道三の父は京都の妙覚寺の僧侶だったが、還俗して西村姓を名乗り、美濃守護の土岐家家臣・長井家に仕え、頭角を現すと、長井新左衛門尉と改め、美濃三奉行の一人にまでなった。

その子、道三こと長井新九郎規秀は天文三年(一五三四)に主家・長井氏を滅ぼすと、翌年には守護代と同じ斎藤姓を名乗り、美濃を実質的に支配するようになった。

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内容/あらすじ/ネタバレ

六尺をこえようかという巨躯、鼻筋の通った双眸は、異邦の地の混合をうかがわせる。左目は眼帯の下だ。

男は天に向かって叫んだ。刀鍛冶をやめる、と。男はおどろ丸といった。

裏青江の無量斎がおどろ丸を襲ってきた。

助けに現れたのは松波庄五郎基宗だった。庄吾郎はおどろ丸を知っていた。櫂扇隠岐允の子であることも。

庄五郎はおどろ丸に太刀の依頼に来たのだった。依頼主は赤松左京大夫政則である。赤松囃子が欲しいというのだ。

櫂扇の太刀が世に現れるのは、嘉吉元年(一四四一)のことである。

赤松満祐が足利六代将軍義教に襲いかかって首をはねたのが、櫂扇だった。太刀は誰が名付けたかは知らないが、赤松囃子と呼ばれるようになった。

赤松囃子は叩き折られた。次に櫂扇が現れたのは、十六年後。長禄元年(一四五七)のことだ。

おどろ丸は太刀をつくることを承諾した。

赤松政則の目的はただ一つ。将軍義政の暗殺であった。

足利義政暗殺を未遂に終わらせた後、おどろ丸、庄五郎、女忍びの小夜が一端逃げた先は鞍馬だった。

その後、おどろ丸は庄五郎の案内で美濃へ旅立った。美濃は、九年前に美濃守護代の斎藤妙椿が没している。庄五郎はその手下だった。今は、自分の意思で小夜を助けている。

美濃は争いの絶えぬ国であった。おどろ丸は隻眼を輝かせ、おもしろいと思った。

美濃の斎藤氏は平安時代にその履歴がさかのぼる。室町時代になって、美濃守護土岐氏の執権として守護代をつとめるようになった。

もう一方の守護代富島氏と抗争を繰り返したが、妙椿の出現により、その地位がゆるぎないものとなった。

妙椿には梟雄の性根があったと、庄五郎は語った。庄五郎は妙椿の直属の忍び集団・椿衆に幼いころに拾われて育った。

おどろ丸は妙椿の話を聞いて言い知れぬ昂揚感が起きていた。

主家を凌ぎ、幕府をもひっくり返そうかという力を蓄えつつあった男がわずか九年前まで生きていたとは…。

今の美濃というと。

守護土岐家は飾りにすぎなかった。斎藤妙純と石丸丹波守の勢力で二分されていた。

おどろ丸の前に現れたのは関鍛冶の兼定だった。そして娘の錦弥だった。

兼定はおどろ丸を連れて春日神社に向かった。秘宝があるという。ただし、秘宝はすぐには拝めない。童子あらためというものを経なければならなかった。

関鍛冶の始祖は、二代目の櫂扇隠岐允だという。だが、おどろ丸は真実を告げた。

おどろ丸は錦弥と夫婦になった。

美濃では、守護代斎藤妙純とその家老石丸丹波守利光との確執が一触即発の危機を公然たらしめていた。

両者の戦の中で、おどろ丸の活躍が石丸丹波守利光に認められた。だが、続く戦で石丸側は敗北した。

十五年の時が過ぎた…。

おどろ丸は西村勘九郎と名を変えた。もはや五十代半ばにさしかかっていた。錦弥も関の方と呼ばれていた。

夫婦の行方を激変せしめたのは、城田寺合戦の最中の息子・破天丸の死であっただろう。

この合戦で、おどろ丸は破天丸も櫂扇の太刀も、庄五郎も失ってしまった。底知れぬ深くて暗い心の空洞に自らを閉じ込めていた。

法蓮房と南陽房は仲が良かった。

南陽房は家柄がよい。美濃斎藤氏の生まれであった。

一方、法蓮房は八歳まで峰丸と呼ばれていた。小栗栖の竹林の中に住んでいた。母・小夜と老爺・甲壱との三人だけの生活だった。

小栗栖に戻る途中、赤子を女から頼まれた。赤松義村に届けてくれという。この子は、赤松義村の子なのか。いやそうではないと法蓮房は直感した。さらに高貴の血筋に違いない。将軍家の子…、だとするとおもしろい。

法蓮房は還俗した。

名を松波庄九郎とした。松波庄五郎の名から思いついたものだった。

庄五郎の甥という触れ込みで、西岡の油問屋奈良屋又兵衛に奉公した。

その庄九郎が駿河に行くことになった。最大の理由は三浦氏を滅ぼさんとしている伊勢宗瑞の存在だ。

宗瑞は乱世の申し子だ。それを知らずして乱世の夢は見られぬ。

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本書について

宮本昌孝
ふたり道三(上)
新潮文庫 約五六五頁

目次

第一章 赤松囃子
第二章 飛花暗殺剣
第三章 美濃へ吹く風
第四章 関鍛冶
第五章 舟田合戦
第六章 幼子たち
第七章 城田寺の露
第八章 梟雄還俗
第九章 愛憎往来
第十章 奈良屋判官

登場人物

おどろ丸
錦弥
破天丸…息子
兼定…関鍛冶
松波庄五郎基宗
小夜…忍び
石丸丹波守利光
長井越中守秀弘
無量斎…裏青江
赤松左京大夫政則…守護
法蓮房→松波庄九郎
南陽房

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