風野真知雄の「耳袋秘帖 妖談 第1巻 妖談うしろ猫」を読んだ感想とあらすじ

覚書/感想/コメント


★★★★★★☆☆☆☆

妖談シリーズ第一弾。

出版社が変わっただけならいいのだが、主要登場人物二人におもいっきり変化があるので、えらいとまどった。だが、新シリーズなので、なっとく。

とまどった具体的な点はいろいろあった。

坂巻弥三郎と栗田次郎左衛門が登場しない。代りに新しく椀田豪蔵、宮尾玄四郎という若者が登場する。

この二人が坂巻と栗田にそれぞれキャラクターが似ているのだ。椀田≒栗田、宮尾≒坂巻といった感じだ。

他の登場人物でいえば、力丸、五郎蔵、たか、鈴といったところはそのまま。

主要な登場人物が二人入れ換わっただけと考えればいいのかどうか…。

新しい登場人物二人はこんな感じだ。二人とも二十六歳。

椀田豪蔵。本所深川見回り同心で、六尺を超す巨体。びびきという姉と一緒に住んでおり、姉に幼いころから脅かされ続けたおかげで幽霊が死ぬほど怖い。

宮尾玄四郎。安房にある根岸の知行地の地侍みたいな男で、最近根岸の家来になった。いい女には全く興味がない。つまりはブス専。上遠野流手裏剣の達人である。

さて、本作では「闇の者」にクローズアップされている。この「闇の者」を巡り、新しいシリーズが展開されていくのだろう。

恐らく、「闇の者」については毎作品でヒントが出されていくのだろう。今回は「かのち」。彼の地、はらいそ。…答えそのものです。

内容/あらすじ/ネタバレ

ひと月前に巣鴨で起きた殺人事件。浮かび上がったのはやくざの頑吉。だが証拠に乏しかった。吟味方与力の森沢新蔵は拷問を試みた。自ら考案した方法だ。

お白州で南町奉行の根岸肥前守鎮衛が頑吉に声をかけた。頑吉とは昔のなじみだ。頑吉はすっかり観念して、かんたんに罪を認めた。

頑吉と話している中で、全州堂という呉服屋の若旦那のことをちらっと思いだした。

頑吉が引っ立てられていくとき、根岸に桃の花を渡した…。

本所深川見回り同心の椀田豪蔵は謹慎の身の上だ。謹慎の理由は納得がいかない。昼間から酔っ払って暴れた若い旗本を懲らしめただけだ。
同心には戻れないかもしれない。姉のひびきががっかりするかもしれない。

その椀田を根岸は私邸に呼び出した。

椀田を出迎えたのは宮尾玄四郎。最近根岸家の家来になった男で、椀田より二つか三つ年下の二十二、三くらいの家臣だ。

根岸は生き物が好きで奉行所にも猫がいるが、ここにも猫がいた。ここの猫は絶対に前の顔を見せないのだという。

根岸を前に二人の紹介がされ、椀田も宮尾も二十六であることが分かった。

動いてほしい件があるという。尾張町三丁目にある瓦問屋もろこし屋で起きた押し込みだ。

五日ほどまえにあるじの伝次郎が殺されたが、金は手つかず。闇の者が動いたのではないか。この時、七尺を超える虚無僧が目撃されている。

ただ、この事件は一筋縄ではいかない

殺しが発覚した朝、死んでいるはずのあるじを見たという男が現れたのだ。見たと言っているのは仙助という男だ。築地にある黒々稲荷で見たというのだ。

もうひとつ。全州堂の若旦那・幸之助がもろこし屋殺しの現場近くで目撃されている。

この二つを踏まえて、周囲を探ってもらいたい。

二人は黒々稲荷に向かい、続いてもろこし屋を訪ねた。

仙助にあってみると、仙助は伝次郎に返さなければならないものがあって、それを返したと言っている。

二人の報告を聞いた根岸は、黒々稲荷は闇の者に通じる門かもしれないなといった。

幸之助は自分の机の上に「かのち」という文字を書き残していなくなっていた。何かの符丁か?

若い旗本の益田弥一郎が酒を飲んでいると周囲の色が変わって見えてきた。どういうことだ?

数ヶ月前に死ぬほど好きだった女に振られた。それで頭が変になったのかもしれない…。

宮尾玄四郎はおそめという女の家で飲んでいた。そこに椀田が現れた。

二人は根岸に指定された「ちくりん」に向かった。根岸がひいきにしている力丸がいる船宿だ。

根岸は蘭方医の洪庵が知らせてきた話をした。益田弥一郎という旗本が周囲の色が変わってしまうという奇病にかかったという。

根岸は二人に歌舞伎俳優の市川海老之助を訪ねて歌舞伎の仕掛けについて聞いて来いと言った。

益田弥一郎の許嫁は根岸の友人で目付をしている杉山文吾の娘だった。だが、これを迎える前に、益田には妾がいるのだという。さらに呆れるような頼みごとをしたらしい。

深川の翠林寺で秘仏を盗まれた。押し込みのような手口で、まだ居座っているらしい。

これを捕まえた。賊は仏像庄右衛門という。

これを森沢が拷問しようとしていたが、根岸が椀田と宮尾の二人をつけているので、できないでいる。

仏像庄右衛門は辞世の句を読んだ。これを外で聞いているものがいる。なぞかけなのだ。

番屋には西宝堂の旦那・団右衛門が捕まっていた。箸一膳を万引きしたという。椀田はしばらく言葉を失った。

興味を持った根岸が団右衛門を呼ぶと、おやじの遺言だという。命日には箸一膳と煙草の金鯉を一袋、それだけを万引きするように。それが供養だと。だが、なぜそんなものなのかは見当がつかないという。

根岸は宮尾に団右衛門と一緒に先代の人生を調べるように命じた。

根岸は元岡っ引きの矢根吉を訪ねろという。

初代団右衛門は「もすけ」と言った。砂絵を書く大道芸人だったが、あるとき仏壇の裏に絵を描くことをはじめた。

これが売れっ子噺家が宣伝してくれたので売れたのだ。だが、一体なぜこの噺家がわざわざ宣伝したのか?

根岸は力丸から巷で不思議な音曲が噂になっていると聞いた。少女が吹く尺八の音色が素晴らしいという。

聞いてみたい根岸は力丸、椀田、宮尾と聞きに出かけた。少女はお里といった。

小石川の安藤坂下に住む若い座頭の山二が信心の甲斐があって目が見えるようになったという。だが、山二は見えているものが怖く、ちっとも嬉しくないのだという。

その山二が猿神さまと呼ばれる祠で手を合わせているときのこと。殺し、という言葉が聞こえてきた…・

浅草蔵前の札差が殺された。その現場には落し物があり、これを森沢がひろった。知り合いの持ち物だからだ。

まさか…、神木寿三郎。甥っ子である。

森沢新蔵の遺体が川に浮いているのが見つかった。むごたらしい遺体だった。

友人で目付の杉山文吾が根岸を訪ねてきた。杉山が根岸に話したのは三年寝太郎と同じような男がいるというものだった。田淵伊久馬という。根岸家のすぐそばの家だ。

宮尾が田淵家を調べはじめた…。

本書について

風野真知雄
耳袋秘帖11  妖談うしろ猫
文春文庫 約二九五頁
江戸時代

目次

序章 お白州の春
第一章 黒々稲荷
第二章 狂った目
第三章 歌の本心
第四章 二代目の覚悟
第五章 座頭が見た夢
第六章 三年寝た男

登場人物

根岸肥前守鎮衛…南町奉行
椀田豪蔵…本所深川見回り同心
宮尾玄四郎…家臣
たか…根岸の亡き妻、幽霊
鈴…黒猫
うしろう…うしろ猫
力丸(新郷みか)…根岸の恋人
五郎蔵…海運業者の顔役
九郎左衛門…根岸の長男
篤五郎…根岸の孫
ひびき…椀田豪蔵の姉
万蔵…岡っ引き
森沢新蔵…吟味方与力
頑吉…やくざ
(伝次郎)
仙助
幸之助…全州堂の若旦那
益田弥一郎
市川海老之助
杉山文吾…目付
洪庵…蘭方医
仏像庄右衛門…泥棒
団右衛門…西宝堂のあるじ
矢根吉…元岡っ引き
諸葛孔金…大道芸人
お里
京斎…虚無僧
山二…座頭
神木寿三郎…森沢の甥
田淵伊久馬
冬吉

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