坂岡真の「うぽっぽ同心十手綴り 第4巻 凍て雲」を読んだ感想とあらすじ

この記事は約5分で読めます。

覚書/感想/コメント


★★★★★★★☆☆☆

シリーズ第四弾。

蜃気楼のように長尾勘兵衛の前に現れる失踪した妻・静の面影…。今後どうなるのかはさておき、本作は趣向を凝らした短編集となっている。

特にうまいのは、単なる通りすがりの何気ない登場人物が、後でとても重要な役割を担うことになる。本当に読み飛ばしてしまうような登場人物なのだが…。

さて、御典医をめざす長尾勘兵衛の愛娘・綾乃。

官医登用試験は毎年、春と秋に実施される。数百人に一人しか合格できない難関である。しかも、幕府内には女性や弱者への根強い偏見がある。女の身で試験に受かることはまず考えられなかった。

内容/あらすじ/ネタバレ

小伝馬町牢屋敷の鬼門にあたる北東。土壇場のある場所。罪人の名を小栗玄朴といった。貧乏医者である。罪状は盗みである。酒卸と銭両替を営む升屋から五十両を盗み、主人の清左衛門を傷つけた。

長尾勘兵衛は検視与力の供人として派遣されてきていた。

不運にも斬首される間際の玄朴と目があった。そして、罪人の丹唇を読んでしまった。「天は照々として誠を照らす。」濡れ衣を着せられたとでもいいたかったのか…。

外に出た勘兵衛に玄朴の弟子・果穂が声をかけた。果穂は玄朴の忘れ形見の陽太郎を連れていた。

玄朴は常陸下館藩の御用医師として殿さまの脈を取っていた。だが、この殿さまが三年前に二十一歳の若さで逝ってしまった。御用医師をやめさせられ、国も追われた。

阿弥陀堂が燃えた。お堂からは黒焦げになった親子三人の仏が見つかった。亭主は治助という。女房が寝たきりで、治助は玄朴の世話になっていたようだ。

玄朴に縄を打ったのは岩七である。とすると、同心は定廻りの桐野恭平だ。

果穂と陽太郎は医師の金杉良意に引き取られたという。だが、良意が引き取ったのは陽太郎だけで、果穂はごろつきどもに連れていかれたそうだ。

勘兵衛は陽太郎をすぐに引き取った。

調べなおすと不可思議なことが多い。清左衛門は玄朴の顔を見ていなかったし、証言も二転三転しており、縄を打たれるまで十日かかっている。最後は桐野の思惑どおりに収まっている。

仁徳のところに十六、七の少年が斬られた体で運ばれてきた。少年は上の空で「井戸、井戸の、た、祟り…。」とつぶやいた。

少年は満点星の垣根を見て、大崎の下屋敷にも草庵があるといった。雲州松江藩十八万六千石、松平出羽守治郷。松平不昧という号の方が知られている。

少年の名は垣添兵庫という。用事を済ませて帰路についたところ暴漢に襲われたという。だが、それを話す兵庫の様子がぎこちない。

藩邸に戻る兵庫は勘兵衛に高麗茶碗を渡した。高価なものではないという。だが、これを骨董屋の有田屋伝右衛門に鑑定させると、高麗茶碗の中でもことに珍重されている、大井戸であるという。

松平不昧は有名な蒐集家である。不昧は二つの大井戸を買っている。一つは喜左衛門という逸話に事欠かぬ大井戸で、もうひとつが凍て雲という。

勘兵衛は末吉鯉四郎と二子街道にある加藤清正をまつった覚林寺に向かった。この二人を八人が囲んだ。
男は石州の津和野生まれだといった。紙すき職人だそうだ。今朝がた、自身晩に捨て子を届けた男がいた。この紙すき職人だ。

勘兵衛は事情を聴いた。職人は一人の夜鷹を見たという。

おふうの店に忘れたころにふらりと立ち寄る浪人がいるという。泣き上戸で、酒が入ると決まって津和野の話をする。

奇妙なことにその浪人の生まれは津軽の弘前だという。何の関係もないはずなのだが…。

ただ、自分の叫んだ一言が、見も知らぬ男の人生を変えてしまったというのだとか。浪人の名を三田村惣次郎という。

紙すき職人は坂崎平内という。もと津和野藩の江戸詰の侍だった。七年前、よんどころない事情によって人を斬ってしまい、江戸から姿を消した。だが、一体なぜ人を斬らねばならなかったのか。

勘兵衛は真実を知った。そして、坂崎平内には妻子がいる。一人の同心としてできることはないか。勘兵衛は考えた。

師走。勘兵衛は黒磨きの鉄十手を拾った。火付盗賊改の与力が使用する指揮十手だ。堀兵太夫のものであることはすぐに知れた。厄介なものを拾ってしまった。

その直後、勘兵衛を疝気が襲った。それを救ってくれたのが、通りがかった豆腐屋のおやじだった。

難波屋に押し込みが入ったという。大黒柱に護符が貼ってあった。野ぎつねの仕業だ。

あろうことか、おふうは柿色装束の盗人が千両箱を盗んでいくのを目撃していた。

おかしいことに、もうひとつ野ぎつねの護符が見つかった。どちらの盗みも丑刻である。同時に二つの倉を襲ったことになるが、距離がありすぎる。

となると、どっちかが偽物ということだ。

本書について

坂岡真
凍て雲
うぽっぽ同心十手綴り4
徳間文庫 約三一〇頁

目次

笹りんどう
凍て雲
つわぶきの里
野ぎつね

登場人物

長尾勘兵衛
綾乃…娘
静…失踪した妻
井上仁徳…医師
銀次…岡っ引き、福之湯の主
三平…銀次の手下
おしま…銀次の女房
末吉鯉四郎
おふう…浮瀬の女将
根岸肥前守鎮衛…南町奉行
門倉角左衛門…吟味方与力
宍戸馨之介…南町本所廻り同心
文七…岡っ引き、びんぞりの異名
おこま
雁次郎
小栗玄朴
果穂
陽太郎
治助
岩七
桐野恭平…定廻り同心
金杉良意
安吉
菊恵
宗像弥右衛門…吟味方与力
垣添兵庫
香苗
有田屋伝右衛門
三田村惣次郎
平助(坂崎平内)
おたき
るい
荒俣源九郎
瓢屋徳十

タイトルとURLをコピーしました