宮本昌孝の「夏雲あがれ(下)」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

★★★★★★★★☆☆

花魁・関屋の禿・梅に執着する旗本の嫡男・天野重蔵。そして、江戸への道中で新吾たちから金を盗んだ掏摸・稲妻の粂を捕えたところから、蟠竜公へとつながっていく。

蟠竜公は今回将軍へ書を見せるためという目的で出府してきた。いよいよ黒幕本人が江戸に乗り込んできたのだ。その蟠竜公だが、病を得ており、余命いくばくもない。焦りからか、自ら乗り出してきたと思われる節がある。

だが、蟠竜公の真の狙いとは一体何なのか?それは白十組も把握できていなかった。

蟠竜公の陰謀を阻止しようとする筧新吾らは、その陰謀の矛先と手段を何とか探り出そうとするが、それが判明するのは最後の最後である。

さて、まだ続きをかけそうな設定を残している。

最大の興味は、筧新吾である。曽根仙之助と花山太郎左は嫡男として家督を継ぐのが分かっているが、三男である新吾の身がどうなるのか?そして、恩田志保との関係は?

また数年後の筧新吾、曽根仙之助、花山太郎左の姿に会ってみたい。

内容/あらすじ/ネタバレ

昨夜襲われた新吾は関屋の療養している家にかくまわれた。窮地を助けてくれたのは銀次であった。

帰ってきた新吾を仙之助は涙目で迎えた。それだけ心配していたのだ。新吾は梅の件だけでなく、すべてを仙之助と太郎左に打ち明けようと思った。

下屋敷に向かった新吾と仙之助。新吾は昨夜西泉寺で襲ってきたのが安富左右兵衛であることを知った。

太郎左の部屋で話そうとしていたところ、聞き耳を立てているものがいる。隣の古木寅八郎だ。新吾は紙に書いて二人に告げた。蟠竜公に陰謀あり、と。

江戸への道中で新吾たちから金を盗んだ按摩を装った掏摸を見つけた新吾は追いかけ捕まえた。この掏摸・稲妻の粂は法印と関係があることが分かった。

この粂に法印らが隠れているところを案内させた。梅を取り戻すのだ。

銀次らと梅を取り戻しに武家屋敷に忍びこむと、別の一行が法印たちの口封じに現れていた。出世欲の塊となっている天野能登守が遣わした刺客に間違いない。この刺客の一人があろうことか、安富左右兵衛だった…。

同じころ、太郎左は篤之助の病間に近づこうとしていた。

七日後。

天野能登守と蟠竜公のつながりは一体何なのだろうか?その蟠竜公が江戸出府するという。将軍家に書を披露するためだ。推挙したのは恐らく天野能登守であろう。

蟠竜公の真の目的は一体何なのか?

膝付源八が新吾に江州屋という材木商のことを話した。これが天野能登守と西泉寺と関係している。もとは武士だったという。山野辺縫殿助。昔、蟠竜公の小姓をつとめていた人物である。

蟠竜公が藩主の座を奪おうとしていることは明白である。だが、どのようにして?

仙之助は妙馗を還俗させて継がせるつもりなのではないかという。となると、狙いは藩主の命となる。

藩主の両国行きが取りやめになった。舅の三浦備後守と河内守吉長は折にふれて親交を温め合う。今回もそのはずだったが、反対したのは村垣嘉門である。これで嘉門は蟠竜公一味とみていいようだ。

新吾は志保が願った土産の「関屋の帯」が花魁・関屋の帯であることを知って絶望した。関屋の帯には哀しい話がある。

その話を聞いた後、新吾は梅が牢人に抱えられているのを見た。あろうことか、天野重蔵自ら梅を攫おうとしていたのだった。

天野重蔵を取り押さえた新吾は、これで蟠竜公たちへの切り札になると考えた。

藩主吉長は三日後に下屋敷に篤之助の見舞に出かけることになっている。

新吾は天野家に向かった。重蔵を預かっていることを知らせるためだ。

この天野家訪問で新吾は思わぬ拾いものをした。それは能登守の本性であった。それまで考えていたほど悪い人物ではなかったのだ。

開口一番、倅はどこにいる、怪我をさせずに連れ戻してくれたのであろうな、とわが子の身を案じた言葉が出たのだ。

反対に野心一杯の発言をしたのは用人の目賀多刑部であった。

鉢谷十太夫が江戸に出てきた。

江戸の白十組が新吾に接触してきた。提灯番の宮部太仲だ。とっくに蟠竜公の陰謀の全貌を把握していると思っていた白十組が、全容を把握できていないと知り、新吾は声を失った。

そして、蟠竜公の病が篤いことを知った。十太夫は必ず仕掛けてくるといった。

市ヶ谷の藩上屋敷では蟠竜公の出府を祝う酒宴が催された。重臣がことごとく並び、鉢谷十太夫も列席した。

新吾は隙を狙って土屋白楽を捕えた。篤之助を乱心させた人物である。

口を割らない白楽に新吾は賭け碁の誘いをした。だが、対局が始まる前に伯楽が殺された。白楽は何も白状しないまま、江州屋に襲われて命を落としたのだった。

仙之助はすべてを家老の梅原監物に打ち明けようと考えていた。そして監物を探しに向かった途中でとんでもないものを見てしまう…。

その頃、藩主一行は下屋敷に向かっていた。往路は何事も起きずに無事に終わった。となると、危険なのは帰りなのか。

だが、蟠竜公の考えが分かった鉢谷十太夫と仙之助は急いでそのことを知らせる必要があると考え、仙之助を何とかして上屋敷から脱出させて下屋敷に向かわせた。

一体、蟠竜公はどのような手段で藩主吉長を葬り去ろうとしているのか?

本書について

宮本昌孝
夏雲あがれ(下)
集英社文庫 約三八五頁

目次

第十章 陰謀の輪郭
第十一章 竜の跫音
第十二章 決闘、山谷掘
第十三章 天野父子
第十四章 嵐の前
第十五章 千両対決
第十六章 暗殺の秋
終章 戻り夏

登場人物

筧新吾
曽根仙之助
花山太郎左衛門
花山淵二郎(千代丸)…太郎左の弟
鉢谷十太夫
お花
恩田志保…新吾の隣家の末娘
曽根綾
木嶋廉平…若党
曽根佐喜…仙之助の姉
千早蔵人業亮…千早家当主
阿野謙三郎…千早家御用取次
赤沢安右衛門…武徳館教導方介添
宮部太仲…提灯番
高田清兵衛…直心影流道場主
河内守吉長…藩主
篤之助…藩主庶子
石原織部…国家老
石原栄之進…織部の倅
井出庄助
三次郎
渋田弥吾作…小姓
村垣嘉門
梅原監物…江戸屋敷の執政
安富左右兵衛
古木寅八郎
山野辺縫殿助
能瀬喜八郎
蟠竜公
建部神妙斎
土屋白楽
妙馗…蟠竜公の倅
長沼四郎左衛門…直心影流
膝付源八
関屋…花魁
梅…禿
銀次
天野重蔵
法印
権助
鉄五郎
稲妻の粂
天野能登守
目賀多刑部

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