宮城谷昌光の「楽毅」(第一巻、第二巻)を読んだ感想とあらすじ(最高に面白い!)

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覚書/感想/コメント

★★★★★★★★★★
あの諸葛亮孔明が敬慕した名将・楽毅(がっき)。

日本人好みの将である。

寡兵で大軍に挑むところなどは、日本でいえば楠木正成や源義経、山中鹿之助といったところと同じだろう。

ただし、楽毅は単なる軍人ではなく、外交の才や内政の才もあり、作中では名将として名高い呉起や孫武よりも、将としても優秀で外交・内政にも秀でた管仲に近い素質を持っていたと描かれている。

第一巻、第二巻では楽毅が中山国(ちゅうざんこく)にいた頃を舞台にしている。

隣国の大国・趙が中山国を攻めてくるのだが、この防衛戦で、楽毅が活躍する井陘の塞を巡る攻防は圧巻であろう。

楽毅の生きた、戦国時代とは群雄割拠である。英雄がおらず、攻めたり攻められたりと限りない争いが続く。

そして君主は人を求めず、利を求め、地を求める。それがゆえに、武力で奪い、武力で守ろうとする。人心を得た方がはるかに早いにもかかわらずである。

こうした世の中で、異彩を放っていたのは孟嘗君である。

孟嘗君は本書で早い段階で登場する。孟嘗君について宮城谷昌光氏は「孟嘗君」という本を書いている。

「孟嘗君」を読んでから本作を読まれると面白さが倍増することを請け合う。

楽毅が仕えた中山王というのは、プライドだけが高く、現実を客観視できない人物である。会社の上司や首脳がこのタイプだと非常にマズイ。

本書で宮城谷氏は、すぐれた君主に仕えればすぐれた臣になる。運の良い人と付き合えば、自分の運もよくなる。といった意味のことを書いている。

こうした観点からは、楽毅は恵まれていたとは思われないが、他に楽毅の才をきちんと見ている者がいた。

孟嘗君もそうした一人であるが、燕の昭王もそうした一人であった。そして、この昭王との出会いが楽毅を歴史上に名を残させることになる。

後半の「楽毅」(第三巻、第四巻)

内容/あらすじ/ネタバレ

中山国の宰相の嫡子・楽毅(がっき)。楽毅が少年の頃に、中山の君主が王を称えた。それが破綻のもととなった。

中山国は河北にある。東の国境は燕に接し、南北と西の国境は趙に接している。

成人となった楽毅は、中山が斉と国交を断絶したことに困惑を覚えた。斉で学問をしたかったからだ。諸子百家の時代である。

留学が許され、斉の首都・臨淄の孫子の門をくぐった。伝説の人孫臏(そんぴん)は世を去っていたが、弟子の一人に入門した。

そこで知り合ったのに田氏である。名は知らない。その子、田単は未来に立ちふさがる敵将となる。

この時の斉の宰相は田文(でんぶん)、すなわち孟嘗君(もうしょうくん)である。

臣の丹冬が迎えに来た。留学が終わろうとしている。

その丹冬が容易ならぬことを言った。趙王が中山を望見したというのだ。望というのは、呪いを込めてみることをいう。すなわち攻め取るということだ。

楽毅は明年までに中山を攻めてくるだろうと予想した。斉との断交状態を改善できれば、趙王の野望はやむはずだ。

楽毅は薛公、すなわち孟嘗君を訪ねてみることにした。

孟嘗君にあった楽毅は、その威圧に圧倒された。そして、楽毅は孟嘗君に中山国はすがることだと思った。孟嘗君は趙王の向こうを張って、同盟した者は死ぬまで守り抜くという。信義の現われである。

趙の国から戦雲がおころうとしていた。

趙の首都・邯鄲に入った楽来と丹冬は楽池邸を訪ねた。その楽池から、趙王が中山を攻めていると聞かされ、心に戦慄を覚えた。武霊王が中山を望見してから今年が三年目である。

楽毅は中山の首都・霊寿にむかった。

趙軍は中山国を真っ二つに割るように縦断したことが分かった。中山軍は進撃を妨げた形跡がない。

楽毅は父に孟嘗君に縋るべきだといったが、それはできない。今は魏に頼った方が無難である。そう信じた父は、中山王に魏への使者を立てることを進言した。だが、中山王には自国の防衛に対する危機感が全くなく、難色を示した。

こうした状況を打破したのは太子であった。その太子が魏への使者として赴くことになった。楽毅が同行することになった。

魏の君主は襄王である。

この襄王にとって、中山と趙の紛争は手に余ることである。おさめることができるのは、秦と斉しかない。だが、秦は君主が亡くなり、乱れに乱れている。

戻った太子に、中山王は労をねぎらうことをせず、非情な言葉で迎えた。

趙の武霊王が果断をおこなった。胡服騎射である。騎馬軍団の増強である。だが、これは中国の文化から離れるということを意味し、群臣の反対にあっていた。それを押し切ったのだ。

中山でも騎馬軍を創設し、楽毅に預けられた。楽毅はさっそく商人の周袖から大量の弩を買うために狐午にあった。狐午には狐祥という娘がいる。

太子を狙う者がいると楽毅の父はいう。

太子が狙われた時、助け出したのは龍元である。以後、龍元は太子の股肱の臣となる。

孟嘗君は太子を亡命させてはどうかといってきた。孟嘗君は中山が滅亡すると見ている。

これを太子に進言したが、太子は子を斉に亡命させてくれないかといった。

趙が攻めてきた。武霊王はこの一回の遠征で、中山と三胡を降伏させようとしている。だが、中山の思わぬ抵抗にやむなく撤退することにした。

武霊王は中山の抵抗には驚かされた。今までとは違う。一体何者が現われたというのか。

秦の内乱がおさまった。のちに昭襄王と呼ばれる王が就くことになる。

武霊王の攻略は中山一国に絞られた。南北から攻める。

太子は北辺に配され、楽毅の父は東垣を、そして楽毅は井陘の塞を守ることになった。太子が北辺に回されたのは問題である。もし霊寿が陥落し、王が死ねば、太子が間髪入れず即位しなければならない。それが困難になるからだ。

父子は別れた。そしてこれが永遠の別れとなった。

井陘の塞を攻めてきたのは趙与の軍である。激戦が展開される。

やがて、中山が趙と講和したと知らされる。四邑を献ずることで、趙軍は撤退した。楽毅は井陘の塞を守りきった。

国難の中山を司馬熹が率いることになった。楽毅は父が戦死したことで喪に服している。

その間に朝廷では重大な議決がなされた。講和のための使者の選定だ。司馬熹は楽毅を推した。

その司馬熹が楽毅を訪ねてきた。楽毅は司馬熹に激しく心を打たれた。中山にも見事な人がいる。使者として立つことを決意した。

楽毅は随行者に郊昔を入れた。井陘の塞で見つけた男だ。楽毅は郊昔にこの使いは失敗すると告げた。

この頃、武霊王は太子の廃替を考えていた。

武霊王は楽毅を殺す決心をしていた。

その楽毅を迎えたのは井陘の塞で戦った趙与である。趙与は楽毅に好意を持った。

武霊王は予想通りの難癖をつけてきた。楽毅は趙与を盾にして逃げることにした。楽毅は趙与に助けられたというべきであった。

だが、難関はこれだけではなかった。新たな塞が築かれており、この突破に智恵を働かせたのは郊昔だった。

もともと失敗することが分かっていた使者であるが、復命した楽毅に中山王は自殺を命じようとした。

武霊王の内命を受け、李兌は魏の大梁に住む戦国期最高の人相見である唐挙に会いに行った。

武霊王は太子の廃替を考え、唐挙に未来を占ってもらいたかったのだ。廃替は決まったようなものだが、唐挙は李兌に、九年後に訪ねてこいと言う。次の太子になる公子何は、父を殺すと言うのだ。

趙の第四次中山攻伐が始まった。中山は防衛に終始し、反撃に出られない。東部は捨てるしかない。

東部はあらかた趙の支配下になった。武霊王は勝つべくして勝っている。

楽毅は臣の丹冬に命じて、孟嘗君に智恵を授かってもらうことにした。
一方で、喪の明けた楽毅に中山王は昔陽を攻め取れと命じた。果たすまでは帰還するなともいう。中山王は趙兵に楽毅を殺させるつもりのようだ。

だが、昔陽を攻めさせようとしていたのは、中山王の考えではなく、司馬熹の考えだった。

司馬熹にとって、昔陽は重要で、中山の余命にかかわっているらしい。司馬熹は霊寿が陥落しても、中山が滅びないような策を練っているらしい。

昔陽攻めに、太子の子・尚が従軍することになった。太子が楽毅に託したのだ。

昔陽を攻め取った楽毅は、すぐれた守城の才だけでなく、行政にも凡庸でないことを示した。

昔陽は斉に近い。孟嘗君との連絡もしやすくなっている。楽毅は太子の子・尚を斉へ亡命させることにした。

趙軍が起った。霊寿を陥落させるまで引かない覚悟だ。二十万の兵が中山を目指した。そして五年にも及ぶ長期戦が始まる。中山は滅亡の淵にいる。

急使がやってきた。中山王と司馬熹が死に、太子がすでに王となっているというのだ。

斉の昌城と昔陽を交換することが決まった。

楽毅は王を扶柳に移し、自らは山河を城と堀にして趙軍と戦う決意をしていた。楽毅は城は幻に過ぎないと考えていた。楽毅に従うのは千五百騎である。

霊寿の陥落を見た武霊王は中山を取ったと思ったが、中山王の死が確認されない。

中山の抵抗は、西と東で行われた。東の中心に扶柳の城があり、いまや王となった尚がいた。

楽毅は自ら燕に行き、中山の窮状を訴えることにした。訪ねる先は、郭隗である。

燕の昭王は即位した時に、父と国の仇である斉を討つことを誓っていた。斉に勝つにはどうするか。それを郭隗にはかった。

この時の郭隗の答えが不朽の名言となった。「王必ず士を致さんと欲せば、先ず隗より始めよ。」

そうすれば、隗よりも賢い者が千里を遠しとせずにやってくるだろうというのだ。

本書について

宮城谷昌光
楽毅(一、二)
新潮文庫 四冊計約一七四〇頁
戦国時代 前4世紀後半から3世紀

目次

中山の若人
孟嘗君との会見
父子の選択
魏への使者
火と煙
胡服騎射
蛇の道
黎明の奇襲
勝利の謀計
四方の敵
井陘の塞
火兵
雨中の攻防
喪中の使命
武霊王の迷い
幽明の門
暗闘
予言
喪中の風雲
昔陽攻略
中山の余命
さいごの酒宴
開城
霊寿陥落
危急存亡
隗より始めよ

登場人物

楽毅
丹冬…臣
超写…臣
郊昔…武将
楽乗…楽氏の一門
恵泛
里袁…魏の民
司馬熹…宰相
中山王…中山の君主
太子
龍元
尚…太子の子
周袖…商人
狐午
狐祥…狐午の娘
孟嘗君(田文、薛公)
僕羊
李滑
武霊王…趙の君主
公子何…武霊王の子
公子勝(平原君)…武霊王の子
公子成…武霊王の叔父
趙与…武将
趙ショウ(ショウはころもへんに召)…武将
李兌
楽池
昭王…燕の君主
郭隗
襄王…魏の君主
唐挙…人相見
田単

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