佐伯泰英の『「居眠り磐音 江戸双紙」 読本』を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

★★★★★★★★☆☆

『磐音』シリーズのファンは必携!これから『磐音』シリーズを読む人も必携!

とにかく『磐音』シリーズを楽しむための企画がいっぱいの一冊である。本書を脇に、第一巻から二十四巻までを読むと、とても楽しいのは間違いない。

『磐音』の世界を知る上での手助けとなる付録が多い。

特にありがたいのは、折り畳みの地図と年表。地図は、これで位置関係が一発で分かるし、年表はシリーズが始まってからのあらすじが年表形式となっているので見やすい。

この年表という企画は正解だと思う。なにせ見やすい。佐伯泰英の他のシリーズでも読本はでているが、年表形式というのはなかった。よく考えられた企画である。

『磐音』シリーズが今後どこまで続くのか分からないが、もう一度読本が出るような気がする。

今回の読本は磐音が「坂崎磐音」から「佐々木磐音」になるまでの期間を対象としていると考えればよく、佐々木家に婿入りしてから、佐々木家と将軍家との秘密の繋がりが描かれる二十五巻以降は次回の読本に譲るかたちになる。

次回の読本では徳川家基、田沼意次といった人物が新たにクローズアップされるようになるだろうし、家基が急死した後に世嗣となった徳川家斉も登場するに違いない。徳川家斉については磐音にとって最初から味方になるのか…それとも途中から味方になるが気になるところである。

私は徳川家基の急死によって、シリーズはいったんの終わりを向かえてもおかしくないのではないかと思っている。田沼意次との直接的な対決というのが終わってしまうからである。

家基のあとに将軍世嗣となる徳川家斉は一橋家の人間であり、この頃には田沼意次の弟・田沼意誠が一橋家におり、兄弟での強い後押しを受け将軍世嗣となっている。

また、この家斉にはライバルとなるような人物がいなかっただけに意外とすんなりと将軍世嗣となり、将軍継嗣問題を起こしていない。それだけに、磐音が絡むというのはなさそうな気がするのだ。磐音が絡むとしたら、この後しばらくしてからである。

もしかしたら、「古着屋総兵衛影始末」シリーズのように第一部完結という風になるのかもしれないと想像している。

他にも抱えているシリーズが多いので、順に片づけていかないと、どれもが「未完」のままで終わるという悲劇を生みかねない。

ここはいったん第一部終了というかたちにして、他のシリーズの完結を進めるのがいいのではないかと思うのだが、こうなっては『磐音』シリーズ・ファンにとっては寂しいことだし、かといって、他のシリーズも大勢のファンがいることを考えると、どうするのがいいのかは難しいところである。

なお、本書でも他のシリーズの読本同様に番外編が収録されている。本作に収録されているのは、おこんと由蔵の出会いである。

シリーズの二十四巻の中でもそれとなく書かれている二人の出会いであるが、それを描いている。

今回の番外編で、てっきり磐音と河出慎之助、小林琴平の出会いが描かれるものだと思っていたので、おこんと由蔵の出会いが描かれるとは少々意外だった。

だが、この番外編で思ったのは、『磐音』シリーズは個性的な登場人物が多く、それぞれを短編や中編で描いても面白いのではないかということである。

例えば、品川柳次郎と竹村武左衛門の出会い、笹塚孫一が筆頭与力となるまでの活躍、佐々木玲圓の昔話…などなど。

いっそのこと、「居眠り磐音 江戸双紙 外伝」という風にして、『磐音』シリーズの登場人物たちを描いても面白いのではないかと思う。

特別書き下ろし中編時代小説「跡継ぎ」

目次

 序章 逃げ水の娘
 第一章 マンボウ騒動
 第二章 木母寺の指きり

登場人物

由蔵…今津屋筆頭支配人
伴蔵…老分番頭
吉右衛門…大旦那
総太郎…倅
お艶…総太郎の女房
おこん
金兵衛…長屋の大家
おのぶ…亡き母
木下三郎助…同心
木下一郎太…三郎助の倅
佐吉親分…岡っ引き
卯吉(卯之助)
薄雲(おいと)

内容/あらすじ/ネタバレ

由蔵がその娘に会ったのは明和四年(一七六七)の夏のことだった。最上丹波守氏兼家から用立金三百両のうち七十五両を粘った挙句受け取った帰りのことだった。

娘と目が合い、娘は最上丹波守の屋敷の場所を聞いてきた。最上丹波守家に奉公に出たいのだという。娘の母が一時奉公していたことがあるらしい。娘は十四だという。

内情を知る由蔵は最上家はよくないという。みすみす娘が最上家の自堕落な家風に染まる必要はないだろうと思っての忠告だった。

そして別れる時に、奉公がしたければ一度今津屋を訪ねなさいと言って別れた。

明和五年(一七六八)の秋。一年後のことだ。由蔵は大旦那の吉右衛門のともをしていた。その時に吉右衛門は隠退をほのめかすようなことを漏らした。

この日、今津屋の前で場違いの父娘が立って店の中を窺っていた。父は深川で長屋の差配をしている金兵衛と名乗った。一年前に娘が声をかけられていわれた奉公についてやってきたという。

娘の名はおこんといった。

父娘はいきなり奥に通され、そこでおこんの奉公の話がなされた。おこんは今津屋に奉公したいという。この一年の間に今津屋をしっかりと調べたらしい。その上での願いだった。

今津屋はおこんの奉公を許すことにした。

由蔵は背中に冷たい殺気を感じていた。

おこんの目の前に一件十七、十八に見える男が姿を見せた。すぐに岡っ引きの佐吉が現われたので、男は姿をくらました。男はおこんと由蔵の関係を聞いてきたのだ。

佐吉は今津屋を訪れ、由蔵に話を聞いた。この時由蔵は古い記憶を引き出そうとしていた。

由蔵は若い頃、大坂に見習い修行に出されていた。若旦那の総太郎も別の店だが大坂に修行に出されていた。その時のことが思い起こされた。

男が由蔵の前に現われた。由蔵の大坂時代の馴染みの女・おいとの倅で卯吉と名乗った。そして、由蔵の倅だという。証拠の品もあるというのだ。この話を偶然おこんは聞いてしまった。

おこんは卯吉を芝居小屋で見たことがあったのを思い出した。ほんものの役者ではなく、裏方が主だと思われる。
由蔵は佐吉親分のところを訪ね、ことのあらましを告げた。

そして、卯吉が言うおいとは総太郎のなじみだったことも告げた。

さいわい卯吉は自分が由蔵の倅と勘違いしている。そのままにしておき、総太郎に害が及ばないようにしたかった。

卯吉には仲間がいた。その仲間の一人が今津屋を訪ね、老分番頭の伴蔵に脅していた。そして、建前上由蔵は謹慎することとなった。

その由蔵が謹慎先から消えた…。

本書について

佐伯泰英
「居眠り磐音 江戸双紙」 読本
双葉文庫 約四〇〇頁
江戸時代

目次

◆巻頭カラー口絵
 著者近影(サイン付き)
 両国橋再現模型
 国宝 古備前包平(名物 大包平)
◆地図で楽しむ「居眠り磐音 江戸双紙」の世界
 巻頭カラー折り畳み地図
 (表)深川・本所
 (裏)江戸地図
 磐音が歩いた江戸
 吉原と磐音
 日光社参
 豊後関前
◆「居眠り磐音 江戸双紙」シリーズの書名と巻数(書名の由来)
◆絵と図で見る「居眠り磐音 江戸双紙」の世界
 磐音の長屋の部屋
 金兵衛長屋
 今津屋
 尚武館道場
◆特別書き下ろし中編時代小説
 「居眠り磐音 江戸双紙」番外編
 跡継ぎ
◆「居眠り磐音 江戸双紙」登場人物一覧
◆愛読者カードより
 読者が一番好きな登場人物
 読者に一番人気のある場面
◆江戸コラム「ようこそ『居眠り磐音 江戸双紙』の世界へ」
 1.明和九年はメイワク!?  磐音が生きていた時代
 2.直参旗本には虫唾が走る? 直参、旗本、御家人、浪人とは
 3.坂崎家はお金持ち? 武士は給与をどのようにもらっていたのか
 4.品川家はなぜ内職ばかりしているのか? 貧乏御家人の生活
 5.磐音の家計簿 浪人の収入・支出
 6.磐音たちが使っていたお金 江戸時代の通貨と交換比率
 7.豊後関前藩は貧乏だったのか? 豊後関前藩の経済状態
 8.磐音と備前包平 刀の知識
 9.笹塚孫一は異例の大出世だった! 南町奉行所の組織
 10.磐音が懐かしく聞いた鐘の音は? 江戸時代の時刻
 11.おこんの着物はテレビの中越典子さん風? 当時の庶民の服装
 12.どてらの金兵衛さんのお仕事 裏長屋の生活と大家の役割
 13.磐音が江戸に来たきっかけ、「参勤交代」とは 大名行列と江戸勤番
 14.江戸はベニスのような水の都だった 磐音たちが乗っていた舟・船
 15.ターヘル・アナトミアとは? 中川淳庵が翻訳に力を尽くした「解体新書」
 16.磐音の無上の楽しみ、朝湯 湯屋とはどんなところだったか
著者インタビュー 佐伯泰英
◆「居眠り磐音 江戸双紙」捜索の秘密
◆「居眠り磐音 江戸双紙」名せりふ集
特別エッセイ
◆「わが時代小説論」
◆「居眠り磐音 江戸双紙」年表
◆「居眠り磐音 江戸双紙」ミニ事典と索引

シリーズ一覧

  1. 陽炎ノ辻
  2. 寒雷ノ坂
  3. 花芒ノ海
  4. 雪華ノ里
  5. 龍天ノ門
  6. 雨降ノ山
  7. 狐火ノ杜
  8. 朔風ノ岸
  9. 遠霞ノ峠
  10. 朝虹ノ島
  11. 無月ノ橋
  12. 探梅ノ家
  13. 残花ノ庭
  14. 夏燕ノ道
  15. 驟雨ノ町
  16. 螢火ノ宿
  17. 紅椿ノ谷
  18. 捨雛ノ川
  19. 梅雨ノ蝶
  20. 野分ノ灘
  21. 鯖雲ノ城
  22. 荒海ノ津
  23. 万両ノ雪
  24. 朧夜ノ桜
  25. 白桐ノ夢
  26. 紅花ノ邨
  27. 石榴ノ蠅
  28. 照葉ノ露
  29. 冬桜ノ雀
  30. 侘助ノ白
  31. 更衣ノ鷹上
  32. 更衣ノ鷹下
  33. 孤愁ノ春
  34. 尾張ノ夏
  35. 姥捨ノ郷
  36. 紀伊ノ変
  37. 一矢ノ秋
  38. 東雲ノ空
  39. 秋思ノ人
  40. 春霞ノ乱
  41. 散華ノ刻
  42. 木槿ノ賦
  43. 徒然ノ冬
  44. 湯島ノ罠
  45. 空蟬ノ念
  46. 弓張ノ月
  47. 失意ノ方
  48. 白鶴ノ紅
  49. 意次ノ妄
  50. 竹屋ノ渡
  51. 旅立ノ朝(完)
  52. 「居眠り磐音江戸双紙」読本
  53. 読み切り中編「跡継ぎ」
  54. 居眠り磐音江戸双紙帰着準備号
  55. 読みきり中編「橋の上」(『居眠り磐音江戸双紙』青春編)
  56. 吉田版「居眠り磐音」江戸地図磐音が歩いた江戸の町
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