佐伯泰英の「吉原裏同心 第1巻 流離」を読んだ感想とあらすじ

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覚書/感想/コメント

★★★★★★★☆☆☆

シリーズ第一弾。連作短編的。

のっけから、話がせわしない印象がある。

豊後岡藩の馬廻役の神守幹次郎が納戸頭を務める藤村壮五郎の女房汀女とともに逐電する。この逐電する神守幹次郎と汀女が本シリーズの主人公となる。

神守幹次郎は豊後の刀鍛冶・行平の若い頃の作品と見られる無銘の長剣を携え、自己流の薩摩示現流と加賀で学んだ眼志流居合を遣う。

豊後国行平は後鳥羽上皇の二四人番鍛冶の一人で定秀の弟子ともいわれた。また、薩摩示現流は薩摩の御家流である。通常、御家流(御留流)はその藩にとっては秘密兵器的な意味合いを持つので、藩の外で教えられることがない。一方、汀女は俳諧をよくたしなみ、教養に溢れた女性という感じである。

なぜ逐電せねばならなかったのかは本書に任せるにして、逐電後負われる身となった二人が流浪の生活を送ることになる。これを描いているのが第一章なのだが、時の経過が早い。あっという間に、九年がたつ。最初に登場した時には十八才だった神守幹次郎が、すぐに二十七才になるのだ。

そして、九年が経って、ようやくシリーズ名の吉原と関係を持つことになる。

吉原は元和四年(一六一八)に庄司甚右衛門が幕府に願い出て江戸の日本橋に傾城地を集めたのを始まりとする。四十年後、明暦の大火(一六五七)を機に、幕府は遊里を浅草寺裏の田圃の一角に移した。この移ったあとを新吉原という。

吉原は塀に囲まれ、吉原の廓法によって町政を自ら行っている。その中心となるのが四郎兵衛会所である。由来は楼主・三浦屋四郎左衛門の雇人・四郎兵衛が初代の会所の名主を務めたことに生じている。

本書はシリーズの第一巻という事もあり、人物紹介的な意味合いが強い。

神守幹次郎と汀女を追っている藤村壮五郎、肥後貫平との対決も残されている。

次作以降で、神守幹次郎と汀女が吉原とどのように接し、生きていくのか。そして、藤村壮五郎一行との対決がどうなるのかが注目である。

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内容/あらすじ/ネタバレ

十代将軍徳川家治が日光東照宮に参宮した安永五年(一七七六)。豊後岡藩の城下町で一つの事件が起きた。納戸頭を務める藤村壮五郎の女房汀女が馬廻役の神守幹次郎と逐電したのだ。藤村壮五郎は妻仇討の許しを得て二人を追った。

藤村壮五郎一行に追いつかれた神守幹次郎は反撃に出た。藤村壮五郎と一緒に着いてきた蛇貫こと肥後貫平と剣を交えた。二人は神守幹次郎の剣の腕を侮り、手痛い反撃を食らった。

神守幹次郎と汀女は危難を乗り越え、旅から旅への生活を送った。しばらく落ち着いたかと思うと、やがて藤村壮五郎らの姿が近くに迫り、また旅への生活となる。

その内、この追っ手の中に汀女の実弟・信一郎がいることがわかった。幹次郎は信一郎を藤村壮五郎一行から抜けさせるために、今度はこちらから追いかけるという。

岡藩中間の甚吉に出会ったことで、藤村らが江戸にいることがわかった。二人が江戸に入ったのは天明五年(一七八五)のことだった。

信一郎には馴染んだ女郎が吉原にいるという。吉原羅生門河岸の切見世のおみねという。幹次郎はおみねをたずね、信一郎が今度たずねる時にはすぐに知らせて欲しいと頼んだ。

その知らせが届いたのは天明五年の師走のことだった。嫌な予感にとらわれた幹次郎はすぐに駆けつけたが、吉原大門の前では藤村壮五郎らが吉原会所の者ともめている。そしてその場に信一郎とおみねがいた…。

幹次郎は日々の糧を得るための仕事探しをしていた。すると道場破りをしてもらいたいという仕事があるという。雇い主は常陸屋の仙右衛門と名乗った。だが、この仕事自体が実は吉原の四郎兵衛会所の主・七代目の四郎兵衛の腕試しだったのだ。

四郎兵衛は幹次郎と汀女の夫婦を吉原が欲しているという。吉原は幕府公認の遊里故に町奉行所の支配を受けている。だが、出入りする客や足抜けをしようとする遊女の取締のためにいる隠密廻り与力、同心はその剣術などがおろそかになっている。

そこで、幹次郎には、隠密同心が表同心なら、吉原の裏同心になってもらいたいというのだ。遊女たちは吉原にいるかぎり安穏な生活ができる。その彼女たちのための生活を守ってもらいたいという。そして、汀女には俳諧を望む遊女たちに句を教え、その中で耳目となって幹次郎を助けて欲しいという。

汀女が女郎の一人梅園のことが気になるという。「梅雨あけて 三千世界 炎立つ」。この句が気になるのだという。幹次郎は早速四郎兵衛会所に行き、四郎兵衛にこのことを話した。

この梅園の身元を調べると、身元を偽って吉原に来ていることがわかった。そして、梅園を女衒に売り渡したのが、旗本の次男・辺見弥三郎ということがわかった。一体、弥三郎は何をたくらんでいるのか?

七夕。燈籠見物に南町奉行の山村信濃守が吉原に来るという。この見物の最中に町奉行に生卵がぶつけられるという事件が起きた。投げつけられた生卵をくるんでいた紙には「ふさのあだ」と書かれていた。

一体誰が生卵をぶつけたのか。そして、「ふさのあだ」の意味するところは…。

吉原の中で、厄介なのが女に地色がつくのが一番厄介だという。地色とは地廻り、やくざ者のことである。

三浦屋の新造・磯松は近いうちに金座の後藤庄三郎によって水揚げされることになっている。だが、出雲太夫が磯松は処女ではないという。

新造は客をとらないので男を知っているはずがない。だが、男女の仲を知り尽くした花魁の勘だ。さっそく店ではあたりをつけ始めた。そして、怪しい客が一人いた。礼次郎と名乗っている男である…。

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本書について

佐伯泰英
流離 吉原裏同心1
光文社文庫 約三〇〇頁
江戸時代

目次

序章
第一章 流浪
第二章 吉原四郎兵衛会所
第三章 吉原炎上
第四章 切見世女郎
第五章 騙し合い
終章

登場人物

藤村壮五郎…豊後岡藩納戸頭
肥後貫平…槍奉行の息子
水城淳成…豊後岡藩家老
佐々木助左ヱ門…豊後岡藩番頭
信一郎…汀女の実弟
小早川彦内…眼志流居合道場主
多野村…師範代
駒助
おみね…女郎
梅園…女郎
嘉造…玉屋の番頭
虎三…女衒
辺見弥三郎
山村信濃守…南町奉行
村崎季光…隠密同心
きく…女郎
房吉
伊久次
秋葉の丸源…香具師
木下常八
藤堂新之助
岡崎儀助
磯松…新造
涼風…女郎
鎌蔵…三浦屋番頭
出雲太夫
おかね…遣手
礼次郎(市助)
後藤庄三郎…金座長官

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